夫の不貞現場を目撃してしまいました

秋月乃衣

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生家

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予定通りミレーユは久々に自身の生家であるラコスト家に戻ると、両親のラコスト伯爵夫妻が暖かく迎えてくれた。
察しの良い両親は何か気付きつつも、深くは追求してこない。それでも他家に嫁いだ自分の事で心配を掛けてしまい、申し訳無かった。
両親の顔を見るとほっとして、少し泣きそうになってしまったが、これ以上心配かけまいと何とか堪える事が出来た。


何故避けられているのか分からず、マデリーンの事を知らないままの時は、自分が原因なのかと色々思い悩む日々だった。

マデリーンの事を知ってからは、理由が分かった代わりに心に刃物を突き立てられた思いだった。夜会の庭園で見てしまった、ユージオとマデリーンの不貞現場。何度もあの光景を思い出しては、その度に傷付き涙した。

エルランジェ家に嫁いだ身として、エルランジェ家の行く末を思う気持ちもある。
実家に身を寄せる状態は長くは続けられないだろう。

ミレーユは部屋で一人、今後の事を考えていた。
特にユージオが毒薬事件に関与していなかった場合、彼はどのような反応を示すのだろうか。

マデリーンが捕まれば、ミレーユと夫婦関係を再構築しようとするのだろうか。

それともミレーユのせいでマデリーンが捕まり、愛する人を傷付けたと、ユージオは自分の事を心底恨むかもしれない。
そうなったら、自分の心は耐えられないどころか、壊れてしまうかもしれない。

ユージオの事は今はもう好きかどうか分からない。それでも夫であるはずの人から、また憎しみの眼差しを向けられる事を思うととても辛い。


ミレーユが実家に帰って三日。毎日ユージオが訪ねてきたが、ラコスト家は門前払いをしてミレーユとは顔を合わさせなかった。
そして四日目になるとユージオの訪れは無くなった。

訪れが無くなったら無くなったで、やはり自分の事はその程度の存在だったのかと、落胆してしまった。分かりきっている事なのに。

どっち付かずな自分の気持ちにも嫌気がさす。

六日目。ギャロワ家の馬車でオズイン、リュシエンヌ夫妻とサイラスがラコスト家へと訪ねて来た。

元々ギャロワ家はラコスト家とは親交が深い。オズイン、リュシエンヌ夫妻がラコスト伯爵夫人にモテなされている間に、サイラスとミレーユも二人きりでお茶にする事にした。

そして二人きりの部屋でサイラスがミレーユに告げた。

「マデリーンを乗せた馬車がエルランジェ邸に入っていった」
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