7 / 42
義母の提案
しおりを挟む
遊園会が終わりを告げる時刻となり、来た時同様義母のシモーヌと共に馬車に乗って、ギャロワ邸を後にする。
馬車では、義母と向かいあうよう腰掛ける。
ユージオと閨を共にしなくなって一年も経つと、シモーヌと二人きりになるのも何となく気不味く感じてしまい、馬車内はあまり居心地が良いものでは無い。
そんな中、まず口を開いたのはシモーヌだった。
「ねぇ、ミレーユ。実はいい助産師を紹介して貰ったのだけれど、良かったらその方に相談してみない?」
「お義理母様……?」
「貴女が不妊と言いたい訳ではないのよ?ただ、一度相談してみるのもいいと思うの。同じ女だし、男性のお医者様よりも話しやすいと思って」
口調は優しいが、何処と無く責められているように感じてしまうのは、何故だろうか。
不妊について、気遣ってくれているのだろう。
だが、閨を共にしていないのにどうやって、子を授かるというのか。
前エルランジェ伯爵夫妻は、同じ敷地内の別邸で暮らしており、ミレーユとユージオがずっと閨を共にしていないなどと思っていない。
そうなると、中々子供が授からないのは、ミレーユの身体に問題があると考えているらしい。
「ね、そうしましょ。とってもいい案だと思うの」
シモーヌは両手を顔の前で合わせ、満面の笑みでミレーユの返事を待たずに、提案を推し進めた。
そうして有無を言わさぬまま、シモーヌは助産師によるミレーユの往診を手配する事にした。
後日、本館に訪ねて来たシモーヌに、予約の日時を教えられた。
義母の善意と気遣いでの行動だと、分かっているので、無下に出来るはずもない。
その日はユージオの外出が決まっている。ミレーユも義母の計らいで、一人馬車に乗せられ、助産師の元へと向かう事となった。
この日が来るまで義母に、正直に夫婦の現状を話した方がいいのか悩んでいたが、いい出せぬまま今日を迎えてしまった。
馬車では、義母と向かいあうよう腰掛ける。
ユージオと閨を共にしなくなって一年も経つと、シモーヌと二人きりになるのも何となく気不味く感じてしまい、馬車内はあまり居心地が良いものでは無い。
そんな中、まず口を開いたのはシモーヌだった。
「ねぇ、ミレーユ。実はいい助産師を紹介して貰ったのだけれど、良かったらその方に相談してみない?」
「お義理母様……?」
「貴女が不妊と言いたい訳ではないのよ?ただ、一度相談してみるのもいいと思うの。同じ女だし、男性のお医者様よりも話しやすいと思って」
口調は優しいが、何処と無く責められているように感じてしまうのは、何故だろうか。
不妊について、気遣ってくれているのだろう。
だが、閨を共にしていないのにどうやって、子を授かるというのか。
前エルランジェ伯爵夫妻は、同じ敷地内の別邸で暮らしており、ミレーユとユージオがずっと閨を共にしていないなどと思っていない。
そうなると、中々子供が授からないのは、ミレーユの身体に問題があると考えているらしい。
「ね、そうしましょ。とってもいい案だと思うの」
シモーヌは両手を顔の前で合わせ、満面の笑みでミレーユの返事を待たずに、提案を推し進めた。
そうして有無を言わさぬまま、シモーヌは助産師によるミレーユの往診を手配する事にした。
後日、本館に訪ねて来たシモーヌに、予約の日時を教えられた。
義母の善意と気遣いでの行動だと、分かっているので、無下に出来るはずもない。
その日はユージオの外出が決まっている。ミレーユも義母の計らいで、一人馬車に乗せられ、助産師の元へと向かう事となった。
この日が来るまで義母に、正直に夫婦の現状を話した方がいいのか悩んでいたが、いい出せぬまま今日を迎えてしまった。
67
お気に入りに追加
1,232
あなたにおすすめの小説
愛すべきマリア
志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。
学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。
家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。
早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。
頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。
その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。
体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。
しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。
他サイトでも掲載しています。
表紙は写真ACより転載しました。

夫に捨てられた私は冷酷公爵と再婚しました
香木陽灯
恋愛
伯爵夫人のマリアーヌは「夜を共に過ごす気にならない」と突然夫に告げられ、わずか五ヶ月で離縁することとなる。
これまで女癖の悪い夫に何度も不倫されても、役立たずと貶されても、文句ひとつ言わず彼を支えてきた。だがその苦労は報われることはなかった。
実家に帰っても父から不当な扱いを受けるマリアーヌ。気分転換に繰り出した街で倒れていた貴族の男性と出会い、彼を助ける。
「離縁したばかり? それは相手の見る目がなかっただけだ。良かったじゃないか。君はもう自由だ」
「自由……」
もう自由なのだとマリアーヌが気づいた矢先、両親と元夫の策略によって再婚を強いられる。相手は婚約者が逃げ出すことで有名な冷酷公爵だった。
ところが冷酷公爵と会ってみると、以前助けた男性だったのだ。
再婚を受け入れたマリアーヌは、公爵と少しずつ仲良くなっていく。
ところが公爵は王命を受け内密に仕事をしているようで……。
一方の元夫は、財政難に陥っていた。
「頼む、助けてくれ! お前は俺に恩があるだろう?」
元夫の悲痛な叫びに、マリアーヌはにっこりと微笑んだ。
「なぜかしら? 貴方を助ける気になりませんの」
※ふんわり設定です

【完結】王太子殿下が幼馴染を溺愛するので、あえて応援することにしました。
かとるり
恋愛
王太子のオースティンが愛するのは婚約者のティファニーではなく、幼馴染のリアンだった。
ティファニーは何度も傷つき、一つの結論に達する。
二人が結ばれるよう、あえて応援する、と。
不遇な王妃は国王の愛を望まない
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。
※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり(苦手な方はご注意下さい)。ハピエン🩷
※稚拙ながらも投稿初日からHOTランキング(2024.11.21)に入れて頂き、ありがとうございます🙂 今回初めて最高ランキング5位(11/23)✨ まさに感無量です🥲
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。
松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。
そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。
しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜
みおな
恋愛
伯爵令嬢のジュエルは、王太子であるシリウスから求婚され、王太子妃になるべく日々努力していた。
そんなある日、ジュエルはシリウスが一人の女性と抱き合っているのを見てしまう。
その日以来、何度も何度も彼女との逢瀬を重ねるシリウス。
そんなに彼女が好きなのなら、彼女を王太子妃にすれば良い。
ジュエルが何度そう言っても、シリウスは「彼女は友人だよ」と繰り返すばかり。
堂々と嘘をつくシリウスにジュエルは・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる