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考察

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 しばらくして果物やスープなど、病み上がりでも食べやすいような食事ばかりが運ばれてきた。何日もまともに食べれていなかったわたしは、大変美味しく召し上がった。

 さて、日本人として生きていたわたしは死んでしまったと仮定して、何故この乙女ゲームの世界へと転生してしまったのか考えてみる事にした。

 わたしはいわゆる典型的なオタクだったが、実は乙女ゲームといったジャンルには詳しくはない。

 アニメや漫画は幅広く嗜んでいたが、ゲームはRPG、SRPGを中心に、恋愛シュミレーションゲームも大好きだった。
 恋愛シュミレーションといっても、女性向けでない、男性向け。いわゆるギャルゲーという奴だ。

 女性向け恋愛ゲームが基本的に乙女に夢を与えるような存在ならば、男性向けの恋愛ゲームは、どれだけプレイヤーの精神を色んな角度から衝撃を与えるか。そこに拘っていた気がする。

 これは嫌がらせが目的なのでは?と気分が悪くなるような展開も珍しくはない。

 例えばパッケージからはほのぼのゲームかと思わせておいて、実態はヒロインが次々と死んでいくような鬱ゲームであり、全く救いがなかったり。

 プレイヤーの層もパッケージ詐欺を怒るどころか、大喜びで受け入れる、古き良きゲーマーが好む特殊なジャンルとでもいうべきか。
 そういえばギャルゲーをプレイしている筈なのに、気付けばBL展開に進んでいたというのにも何度か出会った。

 ギャルゲーはどれほどプレイヤーにトラウマを植え付けたのだろうか?わたし達プレイヤーが恐怖し、トラウマを抱える程、作り手は愉悦を感じてるとしか思えない。

「恋愛趣味レーションって何だっけ?」と何度疑問が浮かんだ分からない。

 そういった記憶を蘇らせると共に、ギャルゲーの世界に放り込まれなくて本当に良かったと心から安堵した。

 軍人となってロボットに乗せられたり、ゾンビに追いかけられるパニックホラー、館や病院が舞台の猟奇殺人事件がテーマの作品だなんて、絶対生き残れる自信がないからだ。

「ギャルゲーとロボットが好きだからといった理由で、パイロットになって戦場送りにならなくて本当に良かった……」

 もしかしたらわたしが知らないだけで、乙女ゲームの中にもロボットに乗せられ、壮絶な戦争への参加を強いられたり、猟奇殺人事件に立ち向かわなければいけない作品もあるのかもしれない。兎に角そのような、恐ろしい作品じゃなくて本当に良かった。

 では何故わたしは数多の作品の中からこの『エリュシオンの翼』へと転生してしまったのか?やはり生前の自分と、深い関わりがあるからだからだろうか?
 生前にセレスティアを演じる事で、この世界に繋がり、深い結びつきが生まれてしまった。そう考えるとしっくりくる。

「そもそも名前があって、ある程度喋る役がこのセレスティアしかなかったから……って、やかましいわ!ほっとけ!!」

 自分で言っててちょっと傷ついてしまい、両手で頭を抱えて絶叫した。
 普段根暗の癖に、声を張り上げると煩い。声優だから。

 ゲームなら役名のあるキャラクターは沢山演じたけれど、アニメ仕事だと役名があってもちょろっと喋るか、モブかの二択なのだ。
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