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シルヴィアは本心のまま発した発言だったのに、社交辞令と決めつけられるなんてと、憤りを募らせた。

「社交辞令ではありませんよっ」
「そうでしたか、すみません……」

そんな二人の様子をクリスは微笑ましく見守る。

「団長、奥様には素直に謝るんですね」

アレクセルはクリスの言葉をスルーし、シルヴィアに真っ直ぐ向き合った。

「いつもなら女役は、騎士団内にいる副団長に頼む事が多いのですが、今は不在なのでクリスに女装を頼んでいたのです」

「えぇっと、女装って……クリス様は女性ですよね。それと……あれ?副団長さんって女性でしたっけ?」

王太子の近衛騎士副団長が女性なら、異例すぎて国中で噂になっているはずだが、そのような話は聞いたことがない。
色々突っ込みどころのある発言に頭を捻りながら、記憶を探るシルヴィアにむかって何の含みもない眼差しをアレクセルは向ける。

「いえ、男ですけど。副団長は女装するとクリスより断然女に見えます」

(えええ!!?男性なのに女性のクリス様より女らしいってどういう事!?)

「流石に副団長には敵いませんよ~、でも私も中々いい線いってると思いますけどねっ」

混乱するシルヴィアの視界にはケラケラと笑いながら言うクリス。

(クリス様も同意見って事は本当に副団長さんは女装の似合う方なんですね……どうなってるのこの騎士団。やっぱり主であるギルバート殿下が変人だから、集まる部下もやたら個性的というか)

シルヴィア自身の事と、同じく王太子の管轄である宮廷魔術師の事は、見事に棚上げした考察だった。


「では、下町でお見かけした時は本当にお仕事中だったのですね」

「そうです!実はレティシア嬢の部屋などで発見された魔導具の製作者が、同じ人物の可能性が高いのです。なので、他にもその魔導具が流れていないかお忍びで調べていました。
本来魔導具を輸入する場合、国からの許可が必要となりますが、例の質屋は違法に国内に持ち込まれた物が裏で取引される闇ルートとなっています」

「そのお店は取り締まるのですか?」

「それが今回のように、違法物の流れを掴んだりするのに貢献してくれているので、敢えて見逃しているのです。必要悪というやつでしょうか」

「なるほど……」

それはギルバートや国も、店の実態を把握しているという事だ。

「男より女性の方が口を滑らすかと思い、やり手の女商人という設定で、店から情報を聞き出す作戦を取っていました」
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