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「本当に微笑ましかったですわ~!」
「やっと、やっと主君夫妻の仲睦まじい姿が見れました……ぐすっ」
「やだ、泣かないでよ」
「素敵でしたわ~絵になるお二人」

はしゃぐ者もいれば、泣き出す者、惚気る者と侍女達は実に様々な反応を見せた。そんな彼女達を目の当たりにして、シルヴィアは顔を引きつらせ困惑した。

(ただ散歩しただけでこんなに祝福されるとは、どんな夫婦よ……)



**

この日のシルヴィアは久々に王宮に赴いていた。新婚だからと長めの休暇を貰ってはいたが、夫は帰ってこない。
それでも公爵夫人として覚えるべき事はまだまだあるのだが、理由を付けて出仕する事にした。気分転換がしたいという本音を隠して。

「シルヴィア?」
「室長!」

彼はレオネル=ウォルター子爵。
宮廷で魔術師を束ねる若き室長であるが、本人の魔力そのものは低く、主に事務を担当している。魔力の低い彼を室長に添える事で、国と魔術師が二分しないよう仲裁役も担っている。

魔術はあまり使えない反面、非常に勉強熱心で神聖文字や古代文字の研究に余念がない。そこらの魔術師より、専門知識に長ける部分があり、他の宮廷魔術師達からも信頼を得ている。


「元気そうで良かった、皆んなも会いたがってるよ。公爵家はどう?」
「公爵家の方々とても良い方ばかりですよ」
「ははは、名家にいきなり嫁いで心配していたけど、大丈夫そうだな」

レオネルとシルヴィアの会話が始まって少しすると、前の方からもう一人空色の髪の宮廷魔術師がこちらへ歩いてくる。

「室長~。……あれ、シルヴィアがいる」

彼は伯爵家の次男、テオドール。端正な顔立ちで女性にモテるが、婚約者もいなければ一度も恋人が出来た事もない。


「シルヴィアもレティシア様の部屋に行くのか?」
「レティシア様?レティシア様がどうかなさったの?」

レティシアは王太子ギルバートの婚約者であり、隣国の公爵令嬢。
現在は妃教育のため、この国に滞在している。
シルヴィアとは仲が良く、二人きりでよくお茶会をする程。
レティシアの方からシルヴィアを頻繁に誘う程、大層気に入られている。

そんな彼女と仲のいいシルヴィアに告げるのは酷だと思ったが、レオネルは口を開いた。

「レティシア様がご滞在されている部屋で、発火事件が起こった」
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