42 / 77
本編
仮面
しおりを挟む
昼下がり、私室にて編み物に没頭しているティアリーゼの元にレイヴンがやってきた。
「そろそろユリウス様はお茶の時間となりますので、ご報告に参りました」
「分かりました」
ユリウスの休憩時間は共に過ごすこととなっている。ティアリーゼはすぐに立ち上がった。
「そして申し訳ないのですが、ユリウス様がまたティアリーゼ様の淹れたお茶をご所望でして」
「わたしで良ければ、いくらでもお淹れ致します」
「助かります」
二人は厨房へと向かった。ティアリーゼがお湯を沸かしている間、レイヴンがワゴンやティーセットを準備し、料理長自慢の焼き菓子が皿に乗せていく。
準備を終えると、レイブンと共にユリウスの私室へと向かった。
扉前までティーワゴンを運び終えたレイヴンは「失礼致します、何かあればお呼び下さい」と言い残し、その場を後にした。
廊下に一人となったティアリーゼは、硬い扉を叩く。乾いた音が響くのみで、何度叩扉をしてもユリウスの返事は返ってこなかった。
静寂に疑問を感じ、そっと扉を開けてみる。
「ユリウス様?」
もしかすると、部屋にいない可能性もあるのかもしれないと思案したが、よく見ると長椅子に黒い塊が横たわっている。
(眠っていらっしゃるわ……)
初めて彼の眠る姿を見た。
眠るユリウスを視界に映し、瞠目しながら静かに近づいた。「ユリウス様でもお眠りになられるのね」と自分でもよく分からないことを呟きながら、長椅子に横たわるユリウスの側に、ティアリーゼはゆっくりと腰を下ろす。
形の良い薄い唇からは、かすなか寝息の音が確認でき、胸が僅かに上下している。
目元は硬い仮面に覆われたまま。
やはり寝ていても仮面は付けたままらしい。
(仮面、邪魔じゃないのかしら?)
一日の中で仮面を外すことはあるのか、甚だ疑問である。流石にお風呂にまでは付けていないと思うが、謎に包まれていた。
ティアリーゼは手を伸ばし、そっと仮面に触れてみた。
「そろそろユリウス様はお茶の時間となりますので、ご報告に参りました」
「分かりました」
ユリウスの休憩時間は共に過ごすこととなっている。ティアリーゼはすぐに立ち上がった。
「そして申し訳ないのですが、ユリウス様がまたティアリーゼ様の淹れたお茶をご所望でして」
「わたしで良ければ、いくらでもお淹れ致します」
「助かります」
二人は厨房へと向かった。ティアリーゼがお湯を沸かしている間、レイヴンがワゴンやティーセットを準備し、料理長自慢の焼き菓子が皿に乗せていく。
準備を終えると、レイブンと共にユリウスの私室へと向かった。
扉前までティーワゴンを運び終えたレイヴンは「失礼致します、何かあればお呼び下さい」と言い残し、その場を後にした。
廊下に一人となったティアリーゼは、硬い扉を叩く。乾いた音が響くのみで、何度叩扉をしてもユリウスの返事は返ってこなかった。
静寂に疑問を感じ、そっと扉を開けてみる。
「ユリウス様?」
もしかすると、部屋にいない可能性もあるのかもしれないと思案したが、よく見ると長椅子に黒い塊が横たわっている。
(眠っていらっしゃるわ……)
初めて彼の眠る姿を見た。
眠るユリウスを視界に映し、瞠目しながら静かに近づいた。「ユリウス様でもお眠りになられるのね」と自分でもよく分からないことを呟きながら、長椅子に横たわるユリウスの側に、ティアリーゼはゆっくりと腰を下ろす。
形の良い薄い唇からは、かすなか寝息の音が確認でき、胸が僅かに上下している。
目元は硬い仮面に覆われたまま。
やはり寝ていても仮面は付けたままらしい。
(仮面、邪魔じゃないのかしら?)
一日の中で仮面を外すことはあるのか、甚だ疑問である。流石にお風呂にまでは付けていないと思うが、謎に包まれていた。
ティアリーゼは手を伸ばし、そっと仮面に触れてみた。
20
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された悪役令嬢、放浪先で最強公爵に溺愛される
鍛高譚
恋愛
「スカーレット・ヨーク、お前との婚約は破棄する!」
王太子アルバートの突然の宣言により、伯爵令嬢スカーレットの人生は一変した。
すべては“聖女”を名乗る平民アメリアの企み。でっち上げられた罪で糾弾され、名誉を失い、実家からも追放されてしまう。
頼る宛もなく王都をさまよった彼女は、行き倒れ寸前のところを隣国ルーヴェル王国の公爵、ゼイン・ファーガスに救われる。
「……しばらく俺のもとで休め。安全は保証する」
冷徹な印象とは裏腹に、ゼインはスカーレットを庇護し、“形だけの婚約者”として身を守ってくれることに。
公爵家で静かな日々を過ごすうちに、スカーレットの聡明さや誇り高さは次第に評価され、彼女自身もゼインに心惹かれていく。
だがその裏で、王太子とアメリアの暴走は止まらず、スカーレットの両親までもが処刑の危機に――!
婚約破棄されたのでサブスク聖女始めました ―平民がダメ?なら侯爵令嬢にしますが、だから何?―
ふわふわ
恋愛
「真実の愛を見つけた」
そう告げられて、王太子との婚約をあっさり破棄された聖女シャマル。
泣かない。
責めない。
執着もしない。
だって正直、
好きでもない相手との政略結婚も、
毎日王宮に通って無償奉仕する生活も、
もう十分だったから。
「必要なときだけ呼んで。報酬は時給でいいよ」
そうして始めたのは、
前代未聞の サブスク式・聖女制度。
奇跡を振りまくのではなく、
判断基準を明確にし、
数字と仕組みで回す“無理をしない聖女業”。
ところがそれが、なぜか国にとって一番うまくいく。
しかし、
「平民の娘では納得できない」
「聖女は神聖であるべきだ」
そんな声が、王と貴族たちから上がり始め――
「じゃあ、侯爵令嬢にしましょう」
肩書だけを差し替える、
中身は何ひとつ変えない痛快対応で、
価値観そのものを静かに詰ませていく。
これは、
怒鳴らない、争わない、感情に走らない。
それでも確実に“立場逆転”していく
理屈派・ドライ聖女の静かなザマァ物語。
働きすぎないこと。
全員に好かれようとしないこと。
納得しない自由も、ちゃんと認めること。
そんな聖女が作ったのは、
奇跡ではなく――
無理をしなくても生きられる仕組みだった。
不貞の子を身籠ったと夫に追い出されました。生まれた子供は『精霊のいとし子』のようです。
桧山 紗綺
恋愛
【完結】嫁いで5年。子供を身籠ったら追い出されました。不貞なんてしていないと言っても聞く耳をもちません。生まれた子は間違いなく夫の子です。夫の子……ですが。 私、離婚された方が良いのではないでしょうか。
戻ってきた実家で子供たちと幸せに暮らしていきます。
『精霊のいとし子』と呼ばれる存在を授かった主人公の、可愛い子供たちとの暮らしと新しい恋とか愛とかのお話です。
※※番外編も完結しました。番外編は色々な視点で書いてます。
時系列も結構バラバラに本編の間の話や本編後の色々な出来事を書きました。
一通り主人公の周りの視点で書けたかな、と。
番外編の方が本編よりも長いです。
気がついたら10万文字を超えていました。
随分と長くなりましたが、お付き合いくださってありがとうございました!
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
転生幼女は追放先で総愛され生活を満喫中。前世で私を虐げていた姉が異世界から召喚されたので、聖女見習いは不要のようです。
桜城恋詠
ファンタジー
聖女見習いのロルティ(6)は、五月雨瑠衣としての前世の記憶を思い出す。
異世界から召喚された聖女が、自身を虐げてきた前世の姉だと気づいたからだ。
彼女は神官に聖女は2人もいらないと教会から追放。
迷いの森に捨てられるが――そこで重傷のアンゴラウサギと生き別れた実父に出会う。
「絶対、誰にも渡さない」
「君を深く愛している」
「あなたは私の、最愛の娘よ」
公爵家の娘になった幼子は腹違いの兄と血の繋がった父と母、2匹のもふもふにたくさんの愛を注がれて暮らす。
そんな中、養父や前世の姉から命を奪われそうになって……?
命乞いをしたって、もう遅い。
あなたたちは絶対に、許さないんだから!
☆ ☆ ☆
★ベリーズカフェ(別タイトル)・小説家になろう(同タイトル)掲載した作品を加筆修正したものになります。
こちらはトゥルーエンドとなり、内容が異なります。
※9/28 誤字修正
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています
由香
ファンタジー
婚約破棄のその日、
悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。
王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。
だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、
冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。
再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。
広場で語られる真実。
そして、無自覚に人を惹きつけてしまう
リリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。
これは、
悪役令嬢として断罪された少女が、
「誰かの物語の脇役」ではなく、
自分自身の人生を取り戻す物語。
過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、
彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる