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その37

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カフェを退店したオリヴィア達は、フェリクスのお守りをしていたクリストファーと合流し、再び馬車に乗って湖の館へと帰路に向かう。
行き同様、オリヴィアを送り届けてくれるべく、エフラムも同乗している。
ちなみにフェリクスは、オリヴィアの膝の上で爆睡中。

エフラムに、オリヴィアは未だ余韻冷めやらぬ笑顔を向けた。

「エフラム様、今日は本当にありがとうございました!とっても美味しかったし、楽しかったですわっ」
「満足してもらえたようで、僕も嬉しいよ」

外出なんて実家を出てから始めてで、エフラムが連れ立ってくれていなかったら、未だ叶わなかっただろう。

それにこんなにも幸せな一日を過ごしたというのに、外出時に一度も羽を生やす事もなかった。何と満たされた時間だったのだろうか。


「お土産に購入したパイや焼き菓子はまだ味わっていないので、それも今から楽しみです」

使用人へのお土産だが、自分も食べる気満々なオリヴィアを、エフラムは微笑ましく眺めていた。そして、ふいにポツリと呟いた。

「今度の舞踏会……やっぱり、エスコートさせて貰うのって、駄目かな……?」

緩んだ表情を見せていたオリヴィアが、真っ直ぐエフラムを見据える。オリヴィアのアメジストの瞳とエフラムの視線が絡み合う。

「ご、ごめんっ。無理にとは言わないんだけど……しつこくて本当に……」

ごめんなさい、と謝ろうとしたその時。オリヴィアが先に呟いた。

「いいですよ」

予想外の返事に耳を疑ってしまった。てっきりまた断られると思い込んでいた。

「本当に……?」
「ええ。本当ですわ」

はっきりとした肯定の言葉に、エフラムの表情は見る見る喜色に染まり、感極まってついオリヴィアの両手を掴んで握りしめていた。

「ありがとうっ。楽しみだな!どんなドレスを仕立てようか!?湖の邸の方に仕立て屋を手配しよう」

嬉しそうなエフラムを見ていると、オリヴィアの心までぽかぽかと温かくなった。
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