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私があの子に出会ったのは、秋の始まりの頃だった。落ち葉を踏みしめる音を聞きながら、帰っているときだった。どこかで猫の鳴き声がすると思い、ふと足元を見ると黒猫がすり寄ってきていた。か細い鳴き声で、私に何か訴えかけるかのように鳴いている。
「え、どうしたの……?捨て猫かな?」
お腹が空いているのかな?そう思い、近くのコンビニで牛乳を買って与えてみる。すると黒猫は勢い良く牛乳を飲み始めた。そして飲み干した黒猫は私に向かって「にゃあん」と言ったかと思えば草むらの中に消えていった。
それから私は家に帰って、ぼうっとスマホを眺めていた。SNSでの友達の投稿。また私だけ仲間はずれにされている。ため息をつき、ベッドに倒れ込む。眠い目をこすり、ぼうっと窓の外を見ていると、さっきの黒猫が窓の向こうで座ってこちらを見ている。
「あ、あのときの黒猫……」
黒猫は窓をこじ開けて中に入ってきた。
「さっきはどうもありがとう。桃井萌香。」
「ね、猫が、喋った?!しかも、なんで私の名前を知ってるの……?!」
黒猫は手を自分の手をペロペロと舐めたあと答えた。
「僕はルルモン。悪魔の王だ。なんて言っても信じてくれないと思うけど。」
「あ、悪魔……?」
「君は僕を助けてくれたよね?だからお礼にやってきたんだ。早速だけど、僕と契約して魔女にならないかい?」
契約?魔女?一体なんのことやら訳が分からない。私はぽかんと間抜けな顔をして話を聞いていた。
「これでも僕は魔族の王なんだ。そんな僕と契約ができるんだよ?それに君は偉大な魔女になれる。そうすればこの世界は君の思い通りだ。さぁ、どうする?」
「えっと……私は……でも……」
「君は気づいていないかもしれないけれど、偉大な魔女になれる素質を秘めているんだ。他のちっぽけな小悪魔と契約するなんて勿体無い。さぁ僕と契約を!」
「じゃあ、そこまで言うなら……」
ルルモンはどこからか1枚の紙を取り出した。
「さあ、この契約書にサインを」
言われるがまま、机にあったペンで自分の名前を書く。
「契約は成された。今日から僕と君は相棒となったわけだ。早速魔法を教えよう」
ルルモンが手を振るとぽんと杖が出てきた。
「これが君の杖だ。試しに振ってみるといい」
杖を持ち、円を描くように振ってみた。すると、キャンディやらチョコやらお菓子がバラバラと落ちてきた。
「すごい……魔法って本当にあるんだ」
「これだけじゃない。もっとすごいことだってできるんだ」
「魔法があれば……友達とも上手くやっていける?」
「あぁ。簡単さ。思い通りに操ってしまえばいい」
こうして私は、魔女になったのだった。
次の日の朝、私は見事に寝坊してしまった。
「ちょっとルルモン?!うちで寝るなら起こすくらいしてよ!!」
「頼まれてもないのにする義務はないね。文句を言う暇があったら、さっさと学校に行く準備をしたらどうだい?それか……魔法を使うか」
「天才!どうやればいいの?!」
「念じて、杖をひとふりするだけさ」
言われたとおりに杖をひとふりした。すると一瞬で学校の教室に着いていた。私がワープしてきたことに気づいている人は誰もいない。
「どうだい?魔法は便利だろう?」
「……ルルモン?!付いてきたの?!」
「あぁ。契約した悪魔は魔女と共にいるものだからね。安心して、魔女以外に僕は見えないし、声も聞こえない。こうしてテレパシーで会話できるからね」
しばらくして、私の友達が登校してきた。
「あ!由美!綾香!おはよ~」
「……おはよう」
「おはよー」
由美のテンションが低い。なにかあったのだろう。さてはまたイケメンに告白して振られたな。
「どうしたの?元気ないよ?」
「振られた。もう無理……」
予想的中。
「励ましても、由美ずっとこんな感じなんだよ?」
「そ、そうなんだ……」
さて由美のテンションをどうしてあげようか。ルルモンの言うとおり、操れるのか?機嫌を直してくれるのだろうか?私は後ろ手に隠した杖を3回振った。キラキラとした光が由美に降り注いだ。すると、由美の顔がぱっと明るくなった。
「やっぱいいや!また新しい人探せばいいもん!」
「ゆ、由美?」
綾香は困惑気味だが、大成功。これからはもう由美のご機嫌取りなんてしなくていいんだ。肩の荷が降りたような気分だった。
授業中のことだった。退屈な授業中はいつも外を眺めていた。そのせいか、先生はやたらと私を当てたがる。しかし今日は違った。ルルモンという話し相手がいるのだ。
「ねえルルモン」
「なんだい?」
「偉大な魔女ってどうやったらなれるの?ていうかならなきゃいけないの?」
「偉大な魔女というのはね、最も偉大でわがままで自分勝手な存在なんだ」
「なにそれ、私にわがままになれってこと?」
「まぁそうだね。そして、悪魔たちと共にこの世界を操る存在になるんだよ」
「この世界を……操る?」
「そうだ。大魔女になれば世界を思い通りに変えられる。その力で、人間界と魔界を繋ぐ存在になるんだよ」
「魔界と人間界が繋がったらどうなるの?」
「魔法によって統治される素晴らしい世界ができるんだ」
「ふぅん」
素晴らしい世界とか、そんなのには興味がないけど、私の思った通りの世界になるのには少し興味がある。私にも……温かい家族ができて、優しい親友ができて、素敵な恋人ができて、幸せになれるのかな。リストカットしなくていい日が来るのかな。
「そうだ。今日の夜、魔女集会があるんだ。魔女集会に行ってみないかい?」
「魔女集会?」
「この日本、全国から魔女たちが集まって儀式をするんだ。君も魔女の仲間入りをしたんだから、行かないとね」
「え、どうしたの……?捨て猫かな?」
お腹が空いているのかな?そう思い、近くのコンビニで牛乳を買って与えてみる。すると黒猫は勢い良く牛乳を飲み始めた。そして飲み干した黒猫は私に向かって「にゃあん」と言ったかと思えば草むらの中に消えていった。
それから私は家に帰って、ぼうっとスマホを眺めていた。SNSでの友達の投稿。また私だけ仲間はずれにされている。ため息をつき、ベッドに倒れ込む。眠い目をこすり、ぼうっと窓の外を見ていると、さっきの黒猫が窓の向こうで座ってこちらを見ている。
「あ、あのときの黒猫……」
黒猫は窓をこじ開けて中に入ってきた。
「さっきはどうもありがとう。桃井萌香。」
「ね、猫が、喋った?!しかも、なんで私の名前を知ってるの……?!」
黒猫は手を自分の手をペロペロと舐めたあと答えた。
「僕はルルモン。悪魔の王だ。なんて言っても信じてくれないと思うけど。」
「あ、悪魔……?」
「君は僕を助けてくれたよね?だからお礼にやってきたんだ。早速だけど、僕と契約して魔女にならないかい?」
契約?魔女?一体なんのことやら訳が分からない。私はぽかんと間抜けな顔をして話を聞いていた。
「これでも僕は魔族の王なんだ。そんな僕と契約ができるんだよ?それに君は偉大な魔女になれる。そうすればこの世界は君の思い通りだ。さぁ、どうする?」
「えっと……私は……でも……」
「君は気づいていないかもしれないけれど、偉大な魔女になれる素質を秘めているんだ。他のちっぽけな小悪魔と契約するなんて勿体無い。さぁ僕と契約を!」
「じゃあ、そこまで言うなら……」
ルルモンはどこからか1枚の紙を取り出した。
「さあ、この契約書にサインを」
言われるがまま、机にあったペンで自分の名前を書く。
「契約は成された。今日から僕と君は相棒となったわけだ。早速魔法を教えよう」
ルルモンが手を振るとぽんと杖が出てきた。
「これが君の杖だ。試しに振ってみるといい」
杖を持ち、円を描くように振ってみた。すると、キャンディやらチョコやらお菓子がバラバラと落ちてきた。
「すごい……魔法って本当にあるんだ」
「これだけじゃない。もっとすごいことだってできるんだ」
「魔法があれば……友達とも上手くやっていける?」
「あぁ。簡単さ。思い通りに操ってしまえばいい」
こうして私は、魔女になったのだった。
次の日の朝、私は見事に寝坊してしまった。
「ちょっとルルモン?!うちで寝るなら起こすくらいしてよ!!」
「頼まれてもないのにする義務はないね。文句を言う暇があったら、さっさと学校に行く準備をしたらどうだい?それか……魔法を使うか」
「天才!どうやればいいの?!」
「念じて、杖をひとふりするだけさ」
言われたとおりに杖をひとふりした。すると一瞬で学校の教室に着いていた。私がワープしてきたことに気づいている人は誰もいない。
「どうだい?魔法は便利だろう?」
「……ルルモン?!付いてきたの?!」
「あぁ。契約した悪魔は魔女と共にいるものだからね。安心して、魔女以外に僕は見えないし、声も聞こえない。こうしてテレパシーで会話できるからね」
しばらくして、私の友達が登校してきた。
「あ!由美!綾香!おはよ~」
「……おはよう」
「おはよー」
由美のテンションが低い。なにかあったのだろう。さてはまたイケメンに告白して振られたな。
「どうしたの?元気ないよ?」
「振られた。もう無理……」
予想的中。
「励ましても、由美ずっとこんな感じなんだよ?」
「そ、そうなんだ……」
さて由美のテンションをどうしてあげようか。ルルモンの言うとおり、操れるのか?機嫌を直してくれるのだろうか?私は後ろ手に隠した杖を3回振った。キラキラとした光が由美に降り注いだ。すると、由美の顔がぱっと明るくなった。
「やっぱいいや!また新しい人探せばいいもん!」
「ゆ、由美?」
綾香は困惑気味だが、大成功。これからはもう由美のご機嫌取りなんてしなくていいんだ。肩の荷が降りたような気分だった。
授業中のことだった。退屈な授業中はいつも外を眺めていた。そのせいか、先生はやたらと私を当てたがる。しかし今日は違った。ルルモンという話し相手がいるのだ。
「ねえルルモン」
「なんだい?」
「偉大な魔女ってどうやったらなれるの?ていうかならなきゃいけないの?」
「偉大な魔女というのはね、最も偉大でわがままで自分勝手な存在なんだ」
「なにそれ、私にわがままになれってこと?」
「まぁそうだね。そして、悪魔たちと共にこの世界を操る存在になるんだよ」
「この世界を……操る?」
「そうだ。大魔女になれば世界を思い通りに変えられる。その力で、人間界と魔界を繋ぐ存在になるんだよ」
「魔界と人間界が繋がったらどうなるの?」
「魔法によって統治される素晴らしい世界ができるんだ」
「ふぅん」
素晴らしい世界とか、そんなのには興味がないけど、私の思った通りの世界になるのには少し興味がある。私にも……温かい家族ができて、優しい親友ができて、素敵な恋人ができて、幸せになれるのかな。リストカットしなくていい日が来るのかな。
「そうだ。今日の夜、魔女集会があるんだ。魔女集会に行ってみないかい?」
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