桜木恵子の殺人美学

三隈 令

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桜木恵子の殺人美学

桜木恵子の殺人衝動

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 立っている玲奈の顔がぐいと近付く。私の目の前には玲奈の喉元が迫る。玲奈が何か喋るたび、その喉元は形を変える。

 私はごくりと唾を飲み込むと、ゆっくりと玲奈の首元に手を伸ばした。

 今しがた触れた自分の血液が夕焼けに輝らされ、ぬらりと不気味に反射する。

「ちょ、え。恵子、な、に」

 ぎりぎりと音を立てて絞まる首。血で滑る掌に目一杯力を込める。

 互いの瞳孔が開き、刮目する。

「お、ご。ぅおえ。がぎぎぃ」

 ひゅー、ひゅーとか細い息を立てながら玲奈が藻掻く。しかし、玲奈が藻掻けば藻掻くほどに、私は首を絞める力を増していく。死に抗うその姿が夕景に映され、一体となった影は私の背後で少しずつ伸びていく。沈みゆく太陽によって引き伸ばされた影は、やがて死神を象ると思い切り玲奈の首へと鎌を振り下ろした。


 ごきん


 音が周囲に反響する。

 赤く染まった空。橙色の光に染められた木に、葉。コンクリートの壁面に、アスファルトの地面。そして、私の耳に響いた死のサインは鼓膜を揺らすとじっくりと馴染みを帯びた。

 だらんと垂れる玲奈の首。血で染められた、首。白目を剥き、唾液を垂れ流している彼女は息絶えた。


 いひ、いひひ ぃいひひひひあはははは! あははははははははははははは!!!!


 笑う様、正に快楽に塗れた瘋癲ふうてん

 私は快感に溺れながら、恍惚とした表情を浮かべていた。

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