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桜木恵子の殺人美学
桜木恵子の日常 その5
しおりを挟む放課後。私は担任に急かされ、筆記具とノートを手に取ると、早足に職員室に向かった。今日の出来事を振り返りながら、道中の廊下で何度も溜息を吐いた。
「はぁ、今日は厄日だ」
今日何度目かの溜息が地面に落ちると、底に溜まり、私の歩みを減速させる。
憂鬱。
サバイバルナイフは学校に持ってきちゃうわ、一限目からジュース奢らされるわ……というか、ほんとに回収しなかったし。あのジジイ。志穂のしたり顔が今も浮かぶわ! お昼ご飯だって私の嫌いなキュウリ入ってたし……まぁ、トマトあったから許す。トマトのあのエレエレした中身が個人的には大好きだ。ただし、味は好かん。
ぼーっと考えながら歩いていると、職員室を通り過ぎそうになった。
「おっと、いかんいかん。ついいつもの癖が」
我に返ると職員室の扉を三回ノックした。ガラガラと扉を開け、自分のクラス、出席番号と氏名を名乗るとチンタオが紙束を持ってこちらにやってきた。
「いやー、来てもらって済まんね。代理の先生はもうミーティングルームに行ってると思うよ」
はい、これ。と紙束を丸々私に預けると、いそいそと自分のデスクに戻って行っこうとしていた。
「あの、先生」
「? 何か質問が?」
「いえ、今日結局課題を回収されなかったじゃないですか」
「……あ、ほんとだ! すっかり忘れてた! 分かってたなら言ってくれよー」
「迷ったんですが、クラスからバッシング受けるのも嫌でしたし。一応やった課題持ってきたんですが……」
「あー、まぁそうだよなぁ。クラス敵に回すと怖いもんなー。僕らの時代とは全然違う社会性帯びちまってるしなー。わかった課題は預かっておくよ。……まぁちゃんと提出してくれたし、加点しとくが他の奴には内緒だからな」
「ありがとうございます。では私はこれで」
失礼しました。とその場を去った私はミーティングルームに真っ直ぐ向かった──抜け駆け上等。
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