ガルダ二ズム

三隈 令

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Episode 4

6

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 そこには加山海奈と記してあった。

「なに今更照れてるんですか? 私が下で呼んでいる時は博信さんも下で呼んでくださいよ」

 ずいっと顔を寄せてくる加山海奈に、博信はどきどきと心臓の鼓動が煩いくらいに鳴っていた。

 ふわりとシャンプーの匂いが鼻に香り、博信は耳の先まで顔を赤らめていた。

「み、みな? さん?」

「…………」

「…………」

(やばいな。これは、あれだ。恐らく間違えたやつだ。ほら、この顔。明らかに不審がっているではないか。……というかこの女は何でこんなに馴れ馴れしいんだ! 駄目だ。いろいろと限界だ)

 無音の空間が幾許か時を流れる。

 そんな中、先に沈黙を破ったのは海奈であった。

「あの、博信さん」

「はい」

「『みなさん』はやめてとほしいとあれ程言いましたよね? これはイントネーションの問題じゃないんですよ。私もう怒っちゃいましたからね」

(あ、名前を間違った訳じゃなかったのか)

 博信がほっと胸を撫で下ろしていると、海奈がついとそっぽを向いた。

「あ、あの……えーっと」

 博信があたふたとしていると、海奈は膨れ面のままこちらへ向き直った。

(…………綺麗だ)

「今なんと?」海奈が訊いた。

 博信は心中で呟いたつもりが、言葉が口から漏れ出ていたらしい。

「はぁ……まぁいいです。何だか博信さんの心の声が聞けたような気がしますし」

 膨れ面の海奈は人差し指を突き立てると続けた。

「でもですよ! 次またあんな呼び方したら許しませんからね! 全くもぅ……以後気を付けるように、全く、もぅ」

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