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027話 意味ですか?勇者さま。
しおりを挟む「まだ、は、まだ、ですよ?」
ミオンは『何で当たり前の事を聞くの?』と首を傾げる。
「今は、まだ…って事は予定が有るとか??」
「予定?…予定も無いですよ、、と言うか、予定は決まってません。」
「な~んだ♪じゃあ、ルミオンちゃんは、お兄ちゃんと結婚するとかじゃないのね?」
やっぱり私の早とちりよね?…私ったら、もぅ!
・・・と、『ホッ』っとしたのも束の間、、
「いいえ、、しますよ?…私はもう一生、フェン様の物です。」
えっ!・・・それって、やっぱり、、もう?
「フェン様は私の母にハッキリと言ってくれました。『僕にミオンを下さい!』って。」
それって・・・
聞くまでもない。形式的な結婚式をしていないだけで、婚約…未来を誓い合っているって事よね?
嘘?・・・じゃ、、無いよね、、
、、嘘な訳がないのだ。
相手である、お兄ちゃんが居る前で嘘を言う意味が無いし、言う理由も無い。
もうルミオンちゃんの御両親への挨拶済み??
じゃあ、、何で?…おかしいよね?
ルミオンちゃんを貰う約束までしているのに、結婚の予定が無いって…
それを他ならぬルミオンちゃん自身が認めて、、言っているなんて。
お兄ちゃんと結婚、、独り占めしたくないの?
・・・私なら独り占めしたい。
お兄ちゃんの優しさも笑顔も独り占めしたい。
したい。
けど…、それが無理な事だというのも解っている。
もし仮に、結婚したとしても、お兄ちゃんは私一人の物になってくれたりはしない。
それは相手が誰であってもそうだろう。
お兄ちゃんは勇者として『皆の事』を考えて行動するのだ。
反面、それでもいい、という気持ちもある。
それが、、それでこそ、ルチアのお兄ちゃんなのだから、、
ルチアの大好きな『フェンとはそういう人間だ』と、理解しているから。
だけど、、だ。
二人きりの時に自分にだけ向けてくれる優しさ…
それを独り占め出来たら、どれだけ幸せだろう?
普段は『皆の勇者様』であっていい。
せめて私と二人きりの時だけは…
誰も知らない、私だけの勇者様に…
もし私がルミオンちゃんの立場なら『結婚したい』と思うし『自分だけの勇者になって欲しい』と思う。
ルミオンちゃんは、、『迎えに来てくれるのを待ってる』…って、それでいいの?
それだけ自分に自信が有るの?
、、それとも、お兄ちゃんが約束してくれたから?
、、それを心から信じているからなの?
ルミオンちゃんの表情からは、あからさまに後者だという想いが伝わってくる。
・・・お兄ちゃんを信じる、という事に関しては認めてあげるわ。
その点に関してはルチアも同様に信じているのだから。
お兄ちゃんは約束をやぶったりはしない。
さすが、お兄ちゃん!
だが、、と、いう事は、ルミオンと、そのお母さんに約束した『ルミオンを僕に下さい』と『迎えに来るから』…という約束も又、いずれ守られるという事だ。
いつか結婚するの?…ルミオンちゃんと?
と、なると…ルチアが今は否定していたとしても、いずれ『ルミオンちゃんの妹』になる、という事だ。
嫌な訳ではない。
ルミオンちゃんと姉妹になるという事は、シオンとも姉妹になるという事なのだ。
もしシオン達と一緒に暮らしたら?…考えただけで毎日、楽しく飽きない生活を送れる気がする。
ルチアが失ってしまった実の両親との生活は取り戻せはしないが、家族と暮らす思い出はこれからでも作れるのだから。
でも、、お姉ちゃん?
・・・ルミオンちゃんが?
シオンが『お姉ちゃん』と呼んでいるのだからシオンよりも歳上なのだろう。
だが、シオンよりも小さい身体に、この可愛さ、、、
何も知らずに会っていたら絶対にシオンの『妹』にしか思えなかっただろう。
ルミオンちゃん、、いや、今後はルミオンさんと呼ばないとかな?…が、お姉ちゃん?
ルチアの食指が動かされるイメージは、ルミオンちゃんを抱き締めて頭を撫でてあげて、お姉ちゃんと『呼ばれる』事だ。
こんなに可愛いルミオンちゃんに『お姉ちゃん』なんて呼ばれて甘えられたら…
『えへへ・・・』 考えただけで思わずルチアは頬が緩んでしまう。
だが、現実には逆の立場になるというのだ。
私が、、ルチアがルミオンちゃんに甘える…の?
まだそうなった訳ではないのに、そうなった時の想像をしてしまう。
私が甘えると、ルミオンお姉ちゃんが微笑みながら頭を優しく撫でてくれる…
小さな、お姉ちゃん、、、
・・・うん。悪くない。
まだ会ったばかりで、どんな人かも定かでないのに・・・
少し話しただけだが、ルミオンちゃんからは温かさや、優しさが伝わって来る。
でも、シオンちゃんの反応からして、、実は厳しい人なのかな?…凄くしっかり者だとか?
シオンちゃんからは『お姉ちゃんの言う事をちゃんと聞こう!』という雰囲気が漂っている。
自由奔放そうなシオンが、『そこまで信じている人』という事だ。
姉弟だから、、という部分も有るのだろうが、あのシオンちゃんが真剣にルミオンちゃんの言葉を聞こうとしているのだ。
風姿が綺麗で可愛いのは勿論だが、シオンちゃんが絶対の信頼を置く『お姉ちゃん』ルミオンさんとは一体、、、?
ルチアは、まだ知らない。
最近まで姉弟がどんな場所で、どんな生活を送って来たのかを。
シオンの態度は物語っている…シオンも解っているのだ。
あの店から助けてくれて、二人が今、ここで生きていられるのは、フェンお兄ちゃんのお蔭だ。
、、が、そのお兄ちゃんに出会うまで生きていられたのは、お姉ちゃんのお蔭だという事を。
自分の命も危ういのに、シオンの為に考え、行動し、守ってくれたのだ、、お姉ちゃんが。
お姉ちゃんの言葉、行動…全てが二人の、、シオンが『生きる』為に必要な事だったのだ。
・・・事実、今、シオンは生きている。
この事実だけでお姉ちゃん…ルミオンの言葉は絶対なのだ。
裏を反せば、ルミオンが居なくなったりしたら、、シオンは生きて行けないと思っている。
今は、お母さんも居てくれるが、実際に側に居て守ってくれたルミオンの存在はシオンにとって、大きな存在なのだ。
その『お姉ちゃん』に叱られた、、
しかも『お兄ちゃんに迷惑を掛けるな!』、と。
シオンにとっては『全て』とも言える二人…
その二人に迷惑を掛けたの?…お姉ちゃんに怒られて、お兄ちゃんに嫌われちゃうかも…
シオンがオロオロと取り乱すのも無理はなかった。
シオンの大きく綺麗な瞳から涙が溢れ落ちる。
「ご、、ごめんなさい…ごめんなさい…」
許して貰えないと、もうこの後は無い、、と言わんばかりに怯えているのだ。
…どうして?シオン??
シオンの極端な反応にルチアは戸惑う。
お兄ちゃんに我が儘を言って困らせる位、妹ならば当然の様に有る事だ。
ルチアだってフェンに甘えて我が儘を言った事くらい何度も有る。
それも『お兄ちゃんともっと一緒に居たい』なんて、、妹なら基本中の基本よね!
ルチアの中での基準から言えば、シオンの我が儘なんて、我が儘の内に入らない。
、、妹ならば、『して』当然の事柄だ。
当然、私だってお兄ちゃんと『もっと一緒に居たい』のだから。
同じ妹で、同じ気持ちで『ポロポロ』と涙を流すシオンが可哀想でならない。
「お兄ちゃんも、お姉ちゃんもシオンを苛めないで!!」
「えっ?、、僕?」
フェンはいつの間にかシオンを苛めた様な話しになっている状況に戸惑い、そして、不思議でならない。
でも確かに泣いているシオンが段々と可哀想になってきたのも事実だった。
「シオン、大丈夫だよ。お兄ちゃん迷惑だなんて思ってないからね。」
抱き付いたまま泣いているシオンに伝えながら頭を撫でる。
「フェン様!、シオンを甘やかさないで下さい!!」
フェンに言いつつミオンはシオンを『キッ』っと睨む。
『ビクッッ』シオンがまた跳び跳ねる。
ミオンの言う事は確かに正しよ、、正しいけど、、、
「ミオン、もう許してあげなよ。」
「フェン様、、、」
「シオンはいい子だから本当は解ってるんだよね?」
「、、ね?、シオン。」
「う、、うん。」
返事をすると、また僕の服に顔を埋めてしまう。
シオンも解ってはいるのだ。
だが離れたくないという感情が納得してくれないのだろう。
「うん、いい子だね♪シオン。」
「ほら、シオンも『うん。』って言ってくれたんだから…これでいいよね?ミオン。」
「・・・はい。」
、、、もぅ!、、フェン様は私達に甘過ぎです!
フェン様が優しいのは解っている。
シオンにだけでなく、私にも。
嬉しいよ!、、嬉しいの、、、
だからこそ『甘え過ぎてはいけない!』とも思うのだ。
私達が甘えればフェン様は甘えさせてくれるだろう。
際限なく、、、だ。
もしシオンが『絶対に嫌だ』と泣き叫んだらどうするのか?
当然の様にフェン様は甘えさせてくれるだろう、、、だが、だ。
結果は変わらないのだ。・・・最終的には王都へ出発するのだ。
結果が同じだから問題ない?、、、とは『ならない』のだ。
結果は同じでも、フェン様の気持ちは正反対になるのだ。
泣き叫ぶシオンを置いて来た、、と心に負い目を感じながらフェン様は行く事になる。
その負い目が、目に見えない所でフェン様の足を引っ張るかもしれないのだ。
ミオンとてシオンの気持ちが解らなくはない。
・・・だからこそ、言う。
シオンとて勇者フェンの弟、、妹なのだから、と。
お兄ちゃんに『負んぶに抱っこ』では、二人が居る意味が無く、フェン様が助けてくれた意味すら、無かった事になるだろう。
ミオンは思っている。
私とシオン・・・二人が助かった意味がきっと有るのだ、と。
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