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036話 面接ですか?勇者さま。①

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ベッドで横になって考える。

話した内容に問題は無かったのかどうか…。

シオンの 『 お嫁さん宣言 』 には正直、驚いたけど立ち位置の変更、、、

、、『 お嫁さん 』 から 『 妹 』 への誘導も上手く行った…はずだ。

ミヤもリカも関係に納得はしていないが、まだ大丈夫そうだ。


・・・問題はミオンだよね。

ミオンを見て思いついて、シオンの中の僕の立ち位置を『 お兄ちゃん 』に格下げ?するのには成功した。

自分で『 お嫁さん 』と言い出したシオンは放っておいたら、ずっと僕の『 お嫁さん 』を続けてしまうだろう。

それは事なきを得た。

・・・と、そこまでは良かったのだが、、、

シオンを説得するのに、ミオンが『 好きと言ってくれた 』事や『傍に居て良い』という返事をした事を話した。

とは言え、 『 シオンの代わりにミオンと婚約する 』 なんて一言も言っていない。

・・・筈なのだが、、、

ミオンは僕から結婚の約束、、『 婚約 』してくれたと思っている。

・・・なぜ??

話のどこかに問題が有ったはずなのだが、、分からない。

『 実はあの場に居て、理解していないのって僕だけ? 』と言う悪い予感がするのだ。


ミオンが言った、

『・・・あ、あの・・・よ、宜しくお願いします…。』

僕は『 シオンのお兄ちゃんを宜しくね♪ 』と頼まれたのだと理解した。

だが実は『 結婚宜しくね♪ 』という意味だったのだとしたら…

『任せてよっ!』って言ったのは不味かったどころの話しではない。

求婚されて受諾、、要は『結婚する』と約束してしまった事に、、、。

大切な、重要な答えのはずなのに、僕の思い違いかもだなんて。

結婚の申し込みは、もっと堂々とハッキリ伝えるべきものだとフェンは思う。

そもそも、ミオンが気の毒ではないか?、、あんなに喜んで、、、


だが、、だ。これだけは言える…僕はミオンに『結婚』しよう、とは言っていない。

ミオンが話のどこから『 結婚』という結論に至ったのか…が分からない。

あの時、ミヤとリカは鋭くミオンを睨んでいた、、。

ミヤとリカはどこに問題が有ったのか気付いていたのだろう。


フェンは何度も話した内容を繰り返し思い浮かべるが、、分からない。


良く考えても分からない事は聞くしかない、か…聞こう!

隣のベッドで寝ているミヤに声を掛ける。

「ミヤ、起きてる?、ちょっといい?」

待ってましたとばかりに『 パッ 』っと目を開いたミヤが言う、、

「、、いいにゃ、フェンさま、、いつでも来てにゃ♡」

布団をパタパタ捲って『 ワクワク 』した目で見ている。


…ミヤ…一体、僕が何を『 ちょっといい? 』って聞いたと思ったのさ?

それに『 来て 』って、なぜ話すのにミヤのベッドに入らなきゃなの?


「ミヤ、聞きたい事が有るんだけど?」

…ミヤが『あー、そうですよね、どうせ。』という諦めた表情で聞き返す。

「聞きたい事ってなんにゃ?」

「ミオンの事なんだけど。」

ミヤは『 やっぱり・・・』と理解の色を示す。

「ミオンがどうしたにゃ?」

「何でミオンはシオンの話しから、自分が求婚されてるんだって思ったの?」

「・・・僕はミオンに求婚した覚えも無いんだけど?」

「えっ?…フェンさま、、本当に分からないで言ってたんですか?」

ミヤは開いた口が塞がらない・・・。


ミヤは思っていたのだ。

フェンさまは、照れ隠しに『 わざと 』とぼけた振りをしているのだ、、と。

幾ら恋愛にうとくても、あんな重要な話しにまで、疎さを発揮する事ないじゃない?

・・・ミオン、、気の毒な娘にゃ・・・。


「フェンさま、ミオンじゃなくてシオンに言った事を思い出すにゃ。」

それ位は覚えている。

『 ミオンが好きと言ってくれた事 』

と、

『 ミオンに傍に居ていい 』と話した事。

そして、

『付き合っている事 』、、だ。


シオンのお姉ちゃん思いの所を突いて、お姉ちゃんの為に、お嫁さんになるのは諦めてもらう…。

実際にシオンは『 お兄ちゃん 』で納得してくれた。

・・・何の問題もないのでは?


「今、何の問題も、って思ってるんじゃないかにゃ?」

・・・!?

「…なぜ、、分かったの?」

「そんな事だと思ったにゃ。」

「問題?・・・にゃ!」

「どこに問題が?」

「フェンさま…ミオンはシオンのお姉ちゃんにゃ。」

「そうだよ。それが…?」

「フェンさま、、ミオンもシオンも『真剣に』考えてるにゃにょ。」

「僕だって真剣に二人の事、考えてるよ?」

「・・・そのは、ミオン達と同じものかにゃ?」

「・・・??」

フェンは分からない、、に違いなんて有るの??


「フェンさまはシオンに『仮の兄妹』、、『義妹』のつもりで『妹になって』と話したつもりかもしれないけど、、」

「ミオンもシオンも『本当の関係いもうと』の事だと思っているのにゃ。」

「…えっ?、、良くないのかな?…だって僕は二人の事は本当の家族思っているよ?」


「その『』が問題なのにゃ。」

「フェンさまが幾ら『本当の家族』だと言っても、現実には『義理の家族』なのにゃ。」

「ミオンの立場に立って考えてみるにゃ…。」

「今回、フェンさまはシオンを『妹』にすると言ったにゃ。」

「それは『』ではなく『』妹だと二人は思ったにゃ。」

、、うん。僕は本当の家族だと思ってるし、そのつもりだけど?


「・・・でもシオンは実際には今の状態では『本当の妹』ではないにゃ。」

、、それはそうだよね?僕とシオンは実際に血は繋がっていないのだから。


「で、ここでミオンとシオンはフェンさまの言葉を本当に信じて真剣に考えたにゃ。」

「シオンが本当の妹になるには?・・・と。」

「その方法は、、二つ有るにゃ。」

「一つは、フェンさまが、ミオン達の家の養子になる事にゃ。」

「でも・・・現実的ではないにゃ。」

「養子になったらシオンだけでなく、ミオンのお兄ちゃんにもなってしまうにゃ。」

「ミオンの『好き』という気持ちを踏みにじる事になるにゃ。」

「フェンさまの言った『ミオンと付き合ってる』にも矛盾しちゃうにゃ。」

「・・・と、いう事は、必然的に方法は『』に絞られるにゃ。」

「それを考えれば、フェンさまが幾ら『言ってない』と言った所で、言ったのと同じ事なのにゃ。」


「・・・・!!」

・・・まさか!?


「シオンには、もう居るのにゃ、『本当のお姉ちゃん』が…」


・・・つまり、、、


「本当のお姉ちゃん、ミオンとフェンさまが結婚すれば、、、」

「必然的にシオンには『本当のお兄ちゃん』が出来る、、と。」

「まさか・・・そんな・・・」

「『』と言い出したのもフェンさまですにゃ、、」

「そしてミオンと付き合っているとも言ったにゃ。」

「ミオンの確認の問い掛けにも『』って答えてたのもフェンさまですにゃ。」


・・・僕・・・なんて事を、、、。


「それを聞いてミオンは、、泣いて『嬉しい』って言ってたにゃ。」

僕がシオンのお兄ちゃんになるのが、泣く程に嬉しいのかな?

、、、って不思議に思っていたけど…。

まさか僕が結婚の約束をしてくれたのが嬉しくて感極まって泣いていたなんて…。

やっぱり『あの場』で理解していなかったのって僕だけだったんだ、、、。


「で、当然、ミオンとシオンの二人はフェンさまはで言ったと思っているにゃ。」

・・・そんな・・・。

更にミヤから批難とも取れる皮肉が飛ぶ。

「で、そんな事とはフェンさまは…どうするつもりにゃ?」

・・・知らなかった、なんて理由が通る訳がない。

あんなに…泣く程、喜んでいたミオンに…『知らなかった』なんて言える訳もない…。


内心、困るには困ってはいるが、ミオンが結婚の約束を泣く程に

喜んでくれたのを知って、フェン自身も嬉しかった…。

・・・なのに、僕は・・・


ミヤは続ける、、、

「フェンさま。フェンさまの優しさは相手にとって、時に『残酷』なのにゃ。」

「周りの皆への気遣いは大切にゃけども…」

「気遣いのつもりで相手を傷付ける事も有るにゃ。」

「…あんなに喜んでいたミオンを悲しませるのは、、」

「幾らフェンさまとは言え、、、許せないにゃ。」

僕を『独り占めしたい』はずのミヤでさえ、結婚に反対せず、ミオンが気の毒だと言う。

実際に僕が悪いのだ…シオンの為、、と言いながら、今度はミオンを傷付ける所だったのだから、、、

・・・いや、このままでは確実にミオンが傷付く事になってしまうだろう。

ミヤから聞き、どうしてミオンと『結婚』なんて話しになったのか、は解った。


「解った上で、、どうするかにゃ?」

『、、優しさは時に残酷だ、、』

『、、皆が悲しまないなんていうのは綺麗事だ、、』

と、言われてもフェンは譲れない。

皆を大切にしたい…誰かが悲しむ様な答えはしたくないのだ。

…当然だが誰も悲しい答えなど望んでいない。

…望んでいない、だからこそ悩んでいるのだ。


・・・フェンさま、、、気付いて欲しいにゃ。

「皆を大切にしたいのは解るにゃ…でも、、最後はフェンさまの気持ちにゃ。」

「良く考えてみるにゃ。フェンさまは『どうしたい』のかを、、。」

「うん。分かったよ、ミヤ。」

「多分、明日は朝から皆、また来るにゃ。それまでに、だ、にゃ。」

「うん。ありがとう、ミヤ。…おやすみ。」

「おやすみなさい、フェンさま。」


・・・フェンさま・・・明日はどんな答えを出すにゃ?

もしかしてミヤ以外・・・ミオンやリカを選ぶかもしれない。

・・・そんなの嫌にゃ、、。

今まで通りフェンさまの傍に居たいだけにゃのに…にゃんでこんな、、、。

あの二人、、ミオンとリカは今頃、何を考えているにゃ?

ミヤも静かに目を閉じた。



一方、フェンも目を閉じ考えてみたが良い案は浮かばない。

内心、『良い案』なんて何かが違う、という思いが邪魔をするのだ。

上手く取り繕う『案』なんてただの誤魔化しでしかないのでは、、、

・・・・。

色々考えたが、結局『僕の今の考えを伝える』しか思い浮かばない。

今、三人はどう考えているのだろう?…そして、どんな答えを持って来るのだろう?

冒険や戦いとは違った緊張感、、ドキドキを抑え込みフェンは眠りに就いた。



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