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27.想い抱いて⑦
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「────待たない。私が欲しいと、言ったではないか」
夜想曲を思わせる低く心地いい音がソルフィオーラの中を満たす。
ぬめついた感触が離れたと思った直後に押し込められた熱いかたまり。その正体に思い至ったと同時に、ソルフィオーラの奥で膨れ上がっていたざわめきが一気に弾けた。
「──……ッぁ、ああああ!」
意識が真っ白に染まる。閉じた瞼の裏で閃光が瞬いているようだ。
ふわりと身体を持ち上げられたような浮遊感と、全身へと駆け巡るざわめき。まるで快楽の嵐に包まれたようであった。
それが──達する、ということなのだと気付くには、ソルフィオーラの経験はまだ浅い。しかし悪くはない感覚に、もっと、と思ってしまう。
まだ、足りない。彼が欲しいと、ソルフィオーラのナカが彼を抱き締める。硬く逞しい熱を感じるだけで、身体の奥にまた新しいざわめきが生まれる。
快楽の得方は、感情と気分に左右される。心から彼を欲していたソルフィオーラの身体は、彼を受け入れるための準備をとっくにしていたのだった。
最も、それはブルームの方も同じであった。
「ああ……ッ、我慢が、きかん……ッ」
苦しそうな声を吐き出しながらブルームがぶるりと震えた。それからナカでじわじわと染み込むように熱が広がり始めた。
蕩けた視界に眉を寄せたブルームの姿を見つける。いつの間にか近くにあった顔にソルフィオーラはそっと手を伸ばした。
しっとりと汗ばんだ頬。彼の吐息。熱を孕んだサファイアの眼差し。
「はぁぁ……っく、すまない……もう、果ててしまった……」
繋がったまま悔し気に声を零す彼が愛おしくてたまらない。そこでソルフィオーラは初めて自ら彼に口づけをしてみせた。
「────っ」
「んぅ。ぶ、るむ、さま……すき……」
ブルームの首元に腕を回して引き寄せて触れた唇に自分のを押し付ける。
驚きを飲み込んだブルームの吐息が口内に入り込む。ソルフィオーラはちゅっちゅっと音を立てながらそれを食べた。
「すき……すきです。すき……ぶる、むさまが……だいすき」
キスをした分だけ、愛が込み上げてくる。一体どこに隠れていたのか、今まで言えなかった分だけ言い尽くすかのように、ソルフィオーラはキスと言葉を夢中で紡ぐ。
すると、熱を吐き出して柔らかくなりかけていたかたまりが、ソルフィオーラの内側を押し上げるようにむくむくと硬さを取り戻し始めた。
「ッ、あぅ!」
最奥を突かれて、唇と唇の隙間から声が零れた。
キスを受け入れるだけだったブルームの唇が開いて、ソルフィオーラを貪り返す。
「っふ、んぅう……っ」
舌を絡められながら、鼻から抜けていく自分の吐息を聞く。
ブルームの腰がゆるゆると動き始めて、ソルフィオーラのナカを擦り付ける。それがまた気持ち良くて、新たに生まれていたざわめきがまた身体の芯を伝ってきた。
「こんな……私で、いいのか……ッく、ソフィー……っ」
「んむぅ、ッふあ、ううン……ッ! いい、──いい! ぶるーむ、さまが、いいっ!」
「っく、あぁ……! 貴女の前では、我慢も、きかず……ッ、満足、させてやれないかもしれない……!」
「んっ、あっ、ああ……っ、それでもっ、いい、のです……っ」
押し寄せるざわめきに意識を攫われそうになる。だけど今は攫われたくなくて、ソルフィオーラは必死にしがみ付いた。ブルームの逞しい肩に。
ぎゅうとしがみ付いて、彼の筋肉質な腰に足を回して。意識を攫われないように、──逃がさないように。
「いっしょ、けんめい……っン、わ、たくしを、愛そうとしてくださった、ぶるーむさまを……嫌いになんて、なりません……!」
だからもっと愛して。何度でも愛して。
その日は暗い寝室で激しく愛の交わる音と甘やかな嬌声が長らく奏でられ続けた。
ソルフィオーラの言葉通り、ブルームの宣言通り、何度も何度も、隅から隅まで愛し合って、窓の外がすっかり夜の帳を下ろし静かな空気が流れても────。
愛の交わりは止まらなかった。
何もしなかった二年間。すれ違った思いの隙間を埋めるかのように。
こうして、ままならなかった太陽と月の婚姻はようやく軌道に乗り始めた。
そんな二人が早々に実感したのは、交わり過ぎて気怠い身体と妙にすっきりした心。
人は本当の意味で結ばれるとこんなにも愛し合えるのかと、汗でべとついた身体を抱き締め合って、笑い合った。
「愛しています、ブルーム様」
「私も、愛している。ソフィー」
空の上では月と太陽はすれ違う運命でしかないかもしれない。だが、一瞬の邂逅でもどれだけ互いを愛せるか。
例えまたすれ違っても、きっとまた乗り越えられる。
そうして未来を繋いでいきたい。
二人の間に不安の色は見えない。
見えるのは明るい未来だけだった。
夜想曲を思わせる低く心地いい音がソルフィオーラの中を満たす。
ぬめついた感触が離れたと思った直後に押し込められた熱いかたまり。その正体に思い至ったと同時に、ソルフィオーラの奥で膨れ上がっていたざわめきが一気に弾けた。
「──……ッぁ、ああああ!」
意識が真っ白に染まる。閉じた瞼の裏で閃光が瞬いているようだ。
ふわりと身体を持ち上げられたような浮遊感と、全身へと駆け巡るざわめき。まるで快楽の嵐に包まれたようであった。
それが──達する、ということなのだと気付くには、ソルフィオーラの経験はまだ浅い。しかし悪くはない感覚に、もっと、と思ってしまう。
まだ、足りない。彼が欲しいと、ソルフィオーラのナカが彼を抱き締める。硬く逞しい熱を感じるだけで、身体の奥にまた新しいざわめきが生まれる。
快楽の得方は、感情と気分に左右される。心から彼を欲していたソルフィオーラの身体は、彼を受け入れるための準備をとっくにしていたのだった。
最も、それはブルームの方も同じであった。
「ああ……ッ、我慢が、きかん……ッ」
苦しそうな声を吐き出しながらブルームがぶるりと震えた。それからナカでじわじわと染み込むように熱が広がり始めた。
蕩けた視界に眉を寄せたブルームの姿を見つける。いつの間にか近くにあった顔にソルフィオーラはそっと手を伸ばした。
しっとりと汗ばんだ頬。彼の吐息。熱を孕んだサファイアの眼差し。
「はぁぁ……っく、すまない……もう、果ててしまった……」
繋がったまま悔し気に声を零す彼が愛おしくてたまらない。そこでソルフィオーラは初めて自ら彼に口づけをしてみせた。
「────っ」
「んぅ。ぶ、るむ、さま……すき……」
ブルームの首元に腕を回して引き寄せて触れた唇に自分のを押し付ける。
驚きを飲み込んだブルームの吐息が口内に入り込む。ソルフィオーラはちゅっちゅっと音を立てながらそれを食べた。
「すき……すきです。すき……ぶる、むさまが……だいすき」
キスをした分だけ、愛が込み上げてくる。一体どこに隠れていたのか、今まで言えなかった分だけ言い尽くすかのように、ソルフィオーラはキスと言葉を夢中で紡ぐ。
すると、熱を吐き出して柔らかくなりかけていたかたまりが、ソルフィオーラの内側を押し上げるようにむくむくと硬さを取り戻し始めた。
「ッ、あぅ!」
最奥を突かれて、唇と唇の隙間から声が零れた。
キスを受け入れるだけだったブルームの唇が開いて、ソルフィオーラを貪り返す。
「っふ、んぅう……っ」
舌を絡められながら、鼻から抜けていく自分の吐息を聞く。
ブルームの腰がゆるゆると動き始めて、ソルフィオーラのナカを擦り付ける。それがまた気持ち良くて、新たに生まれていたざわめきがまた身体の芯を伝ってきた。
「こんな……私で、いいのか……ッく、ソフィー……っ」
「んむぅ、ッふあ、ううン……ッ! いい、──いい! ぶるーむ、さまが、いいっ!」
「っく、あぁ……! 貴女の前では、我慢も、きかず……ッ、満足、させてやれないかもしれない……!」
「んっ、あっ、ああ……っ、それでもっ、いい、のです……っ」
押し寄せるざわめきに意識を攫われそうになる。だけど今は攫われたくなくて、ソルフィオーラは必死にしがみ付いた。ブルームの逞しい肩に。
ぎゅうとしがみ付いて、彼の筋肉質な腰に足を回して。意識を攫われないように、──逃がさないように。
「いっしょ、けんめい……っン、わ、たくしを、愛そうとしてくださった、ぶるーむさまを……嫌いになんて、なりません……!」
だからもっと愛して。何度でも愛して。
その日は暗い寝室で激しく愛の交わる音と甘やかな嬌声が長らく奏でられ続けた。
ソルフィオーラの言葉通り、ブルームの宣言通り、何度も何度も、隅から隅まで愛し合って、窓の外がすっかり夜の帳を下ろし静かな空気が流れても────。
愛の交わりは止まらなかった。
何もしなかった二年間。すれ違った思いの隙間を埋めるかのように。
こうして、ままならなかった太陽と月の婚姻はようやく軌道に乗り始めた。
そんな二人が早々に実感したのは、交わり過ぎて気怠い身体と妙にすっきりした心。
人は本当の意味で結ばれるとこんなにも愛し合えるのかと、汗でべとついた身体を抱き締め合って、笑い合った。
「愛しています、ブルーム様」
「私も、愛している。ソフィー」
空の上では月と太陽はすれ違う運命でしかないかもしれない。だが、一瞬の邂逅でもどれだけ互いを愛せるか。
例えまたすれ違っても、きっとまた乗り越えられる。
そうして未来を繋いでいきたい。
二人の間に不安の色は見えない。
見えるのは明るい未来だけだった。
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