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27.想い抱いて③

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 少し身を屈め彼女の膝に手を入れて持ち上げると、小さな悲鳴がこぼれた。
 縋りつくように華奢な手が首元に回されたのを確認して、ブルームは進み出した。
 向かう先はもちろん寝室。歩くたびに波打つ髪が揺れてふわふわとハチミツ林檎の香りが昇って来る。

 今のブルームには、それが媚薬のように感じられた。
 香る度に彼女の匂いをもっと堪能したい、ずっと傍で感じていたいと心から思わされる。
 彼女の匂いを感じる度にその思いは強くなり、病みつきになる。

 少々荒々しくドアを開け放ち、だが閉める行為はもどかしくて放置して。
 一人で眠るには広く、だが二人で眠るにはちょうどいい大きさのベッドの上にソルフィオーラを下ろした。

 照明を点けることさえ省略したので、寝室は少々暗い。
 だがそんな中でもソルフィオーラの姿ははっきり見えていた。

 波打つ金糸の髪が眩しい。
 ベッドの上には、太陽の花ソルフィオーラがいると分かっているから、多少の暗さなんて気にならない。

「ソフィー……」

 愛称を呼びながら体重をかけると、ベッドが微かに軋んだ音を立てた。
 彼女の眩しい髪を撫でながら小柄な肩を支えて、ゆっくりと押し倒す。
 真っ白なシーツの上に金色が広がる。
 髪を撫でていた手を滑らせて彼女の頬に触れると、まだそこには微かな熱を灯していた。

 もっと、熱くさせたい。
 その頬にブルームは口づけを落とした。





 ────キスの雨が降っている。
 素肌に落とされる熱の感覚に、そんな感想を抱いたのは一体何回目だろう。

「──っは、ぶる、ぅむさま……っ」

 頬から首筋へとキスが落ちる度にソルフィオーラの口から熱を孕んだ吐息が零れ出ていく。
 くすぐったい、でもどこか安心できるような感覚が全身を占める。
 だが、それと同時に理由のわからないもどかしさをも感じていた。

 ブルームの手が背中に入り込んで、ワンピースを脱がしにかかろうとする。
 さらさらと撫でながら少しずつ露わにされるソルフィオーラの素肌。
 胸元にブルームの吐息が落ちて、熱がじんわりと広がった。

(……もどかしい……)

 じっくりとした流れ。それがどうにももどかしくて仕方がないのだ。
 どうしてそう思うのかがソルフィオーラには分からなくて、心に小さな戸惑いを生んでいた。

「ソフィー……」

 彼の低い声音が鼓膜を甘く蕩けさせる。露わにされた胸元にも口づけが落ちて、ソルフィオーラはまた息を零した。

 ブルームのキスは心地よくて、好きだ。
 それなのに、今は何故それがもどかしいと思うのだろう。

 まるで、その先を急いているような────。
 ふと、思い至った考えに、まだ発露すべき感情が残っていたことに気づく。
 それを認識した途端、身体の奥が疼いた気がした。
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