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26.溢れる想い⑦

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 フッとブルームが笑みを漏らす。きっと自分と同じことを思ったのだろう。次いでソルフィオーラもクスリと笑みを零した。

(……お似合いに見えたなんて言ったら、二人はどんな反応をするかしら)

 心にゆとりが出来たなら、他に目を向けられる余裕も生まれる。もしかするとあり得るかもしれない未来を想像しながら、ソルフィオーラはブルームと共に立ち上がった。
 ソルフィオーラの手は自然と差し出されたブルームの腕へと乗っていた。
 窓から差し込む夕焼けは、ブルームの私室の床も紅く染めている。その上を歩くのは、教会の赤い絨毯の上を歩いた時を再現しているかのようだった。

「汝、ブルーム・セレネイドは────」
「汝、ソルフィオーラ・フランベルグは────」

 健やかなるときも病めるときも。
 喜びのときも悲しみのときも。
 富めるときも貧しいときも。
 いかなる時も共に助け合い、生涯愛することを誓いますか?

 夕焼けを背中に受けて立つ二人から紡ぎ出された誓いの二重奏。
 綺麗に重なった二つの声を受け止めて、ソルフィオーラは告げる。

「誓います」

 今度は掠れることなく告げることが出来た声は、紅色の日差しの中にブルームの声と重なって溶けた。
 今度は四人で笑い合った。互いの友と、家族と、同志と。
 最後に夫と妻とで笑い合ったとき、その瞬間はやって来た。

「誓いの」
「口づけを」

 ────自分を見つめる青色の中に吸い込まれたみたいだと思った。
 戸惑いもなく、躊躇いもなく、ブルームとの距離が縮まって────柔らかくて熱い吐息がソルフィオーラの唇に重ねられた。

 生涯で一番幸せなキス。触れ合ったところからブルームの温度が伝わって、それが全身にまで広がる。

 身体が、熱い。
 ほんの短い時間ではあったが、まるで悠久の流れにいるかのように長く感じられたひとときだった。離れていく熱が寂しいと思う程に。

「ブルーム様……」

 ────さて。ソルフィオーラは本来明るい性格をしている。天真爛漫で表情豊かな、少女とは呼べない、でもそんな可愛らしさを持った人だった。

 気持ちが通じ合って、想いを伝えあって、幸せなキスをした。
 もう彼女を阻むものはない。そうなれば、あとは溢れんばかりの想いを体現するだけである。
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