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22.傷ついた太陽②
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『幼馴染として、親友として――彼に代わり謝罪します。……本当に、申し訳ございません』
出発前、ノクスから謝られた。
執事ではなく幼馴染の顔を浮かべていた彼もブルームの行動が理解できなかったらしい。その謝罪にはブルームの幼馴染としての心情がたくさん込められていた。
だが、そんな心からの謝罪にもソルフィオーラは何も返すことができなかった。
結婚から一週間程度で妻が実家に帰るなんて公爵家にとって体裁が悪い筈だ。本来なら体面を保つためにノクスはソルフィオーラを引き留めるべきだった。
ソルフィオーラは決して離縁したいわけではない。あまりのショックに動揺し、何も考えられないだけなのだ。そんなソルフィオーラの心境をノクスは理解しているようだった。
だからソルフィオーラが『実家に帰りたい』と告げた時も引き留めたりはしてこなかった。
(……でも実家に帰ったところで、何か変わるのかしら)
むしろ嫁いだばかりの娘が突然帰って来て、父や母は大いに驚くことだろう。周りを巻き込んでまで望んだ結婚だったのに、一体何が起きたのだと騒がせてしまうことだろう。
セレネイド家から使者がやって来たあの日が懐かしく思えてくる。
あれからまだたったの三ヶ月しか経っていないのに。
「ねぇ、エル……」
「はい、奥様」
ぽつりと言葉を落とすように話しかけると、すぐに返事があった。
エルの視線を感じてもソルフィオーラは俯いたまま続きを口にする。
「三か月前のあの日……エルから見てわたくしはどんな様子だった?」
「あの日の──ソルフィオーラ様は、とても喜んでいらっしゃいました。見ている自分も温かい気持ちになるくらい、心の底から嬉しそうに笑って……」
太陽のような笑顔だったと、エルはそう言い結んだ。
「……そういえば、エルも一緒になって喜んでくれたのよね。両手を取り合ってぴょんぴょんと飛び跳ねて────」
「恥ずかしいので忘れてください……と言いたいところですが、恋患うソルフィオーラ様をお傍で見ていましたから。自分のことのように嬉しかったのです」
「ふふ。エルのそういうところ、本当に好きよ。実の姉のようで、貴女が傍にいてくれると安心するの」
言いながら昨日のショックが蘇ってきて、胸が軋む思いがした。
本当にエルが斬られてしまうかもしれないと気が気でなく、ブルームの乱暴な剣捌きに始終ハラハラしっぱなしだった。
ブルームとノクスの手合わせを先日見させてもらったことがあるが、その時は模擬剣での手合わせであったしブルームの剣捌きも丁寧でかつ綺麗なものだった。
だからこそ昨日のブルームは異常だと思ったのだ。いくらエルが強いとはいえあんな乱暴な剣を異性相手に振るうなんてやはり信じられなかった。
出発前、ノクスから謝られた。
執事ではなく幼馴染の顔を浮かべていた彼もブルームの行動が理解できなかったらしい。その謝罪にはブルームの幼馴染としての心情がたくさん込められていた。
だが、そんな心からの謝罪にもソルフィオーラは何も返すことができなかった。
結婚から一週間程度で妻が実家に帰るなんて公爵家にとって体裁が悪い筈だ。本来なら体面を保つためにノクスはソルフィオーラを引き留めるべきだった。
ソルフィオーラは決して離縁したいわけではない。あまりのショックに動揺し、何も考えられないだけなのだ。そんなソルフィオーラの心境をノクスは理解しているようだった。
だからソルフィオーラが『実家に帰りたい』と告げた時も引き留めたりはしてこなかった。
(……でも実家に帰ったところで、何か変わるのかしら)
むしろ嫁いだばかりの娘が突然帰って来て、父や母は大いに驚くことだろう。周りを巻き込んでまで望んだ結婚だったのに、一体何が起きたのだと騒がせてしまうことだろう。
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あれからまだたったの三ヶ月しか経っていないのに。
「ねぇ、エル……」
「はい、奥様」
ぽつりと言葉を落とすように話しかけると、すぐに返事があった。
エルの視線を感じてもソルフィオーラは俯いたまま続きを口にする。
「三か月前のあの日……エルから見てわたくしはどんな様子だった?」
「あの日の──ソルフィオーラ様は、とても喜んでいらっしゃいました。見ている自分も温かい気持ちになるくらい、心の底から嬉しそうに笑って……」
太陽のような笑顔だったと、エルはそう言い結んだ。
「……そういえば、エルも一緒になって喜んでくれたのよね。両手を取り合ってぴょんぴょんと飛び跳ねて────」
「恥ずかしいので忘れてください……と言いたいところですが、恋患うソルフィオーラ様をお傍で見ていましたから。自分のことのように嬉しかったのです」
「ふふ。エルのそういうところ、本当に好きよ。実の姉のようで、貴女が傍にいてくれると安心するの」
言いながら昨日のショックが蘇ってきて、胸が軋む思いがした。
本当にエルが斬られてしまうかもしれないと気が気でなく、ブルームの乱暴な剣捌きに始終ハラハラしっぱなしだった。
ブルームとノクスの手合わせを先日見させてもらったことがあるが、その時は模擬剣での手合わせであったしブルームの剣捌きも丁寧でかつ綺麗なものだった。
だからこそ昨日のブルームは異常だと思ったのだ。いくらエルが強いとはいえあんな乱暴な剣を異性相手に振るうなんてやはり信じられなかった。
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