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8.気まずい蒼月
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神の前で愛を誓い夫婦となったばかりであれば、二人の間に流れる空気はさぞかし甘いだろう。
セレネイド家に仕える人々は恋煩いの溜め息を吐く当主の姿を見ているので、可愛い新妻を迎え二人きりの夜を過ごした彼の顔から不機嫌さは消えるだろうと誰もが思っていた。
結婚式から早三日。
窓から差し込む朝の太陽でぽかぽかと陽気さに包まれた食堂は、まるで葬式のように重苦しく静かな空気に包まれていた。
誰一人口を開く者はおらず、カチャカチャと食器の擦れる音だけが響く。
「…………」
「…………」
当主夫妻――ブルームとソルフィオーラの間に会話は無かった。
ソルフィオーラは見るからに表情を沈ませていて料理を一口運ぶごとに溜め息を吐き、ブルームといえば一見したらいつもの表情――不機嫌そうに眉根を寄せた――のように思えるが、眉間に刻まれた皺が通常より二本多い。そして何故かこの三日間眼鏡を掛けていなかった。
そのせいで手元が見え難くいつもより余計に皺寄せているのかと皆は思ったのだが、ソルフィオーラの表情を見て二人の間に何かあった事を悟る。
タイミングを考えれば、何かあったのは初夜の時だろう。
もしかして、夫人が怖がってしまったのか。
もしかして、当主様のが立派すぎて入らなかったとか。
もしかして、当主様が絶倫すぎて、性癖がヤバ過ぎて引かれてしまったとか。
当主様の当主様が――と使用人たちの間で下世話な勘繰りがされていたが、もちろん自分たちの主に対しそんなことを聞けるはずが無い。
だがたった一人だけ、ずけずけとブルームに言い詰られる人物がいた。
それが幼馴染であり、セレネイド家の執事を務めるノクスである。
「……というわけで、ブルーム絶倫説や変態説が提唱される前にいい加減何があったのか教えてくれませんか?」
顔の両横に手を置かれ、笑顔のノクスが言う。
朝食を終え早々に自室へと戻ったブルームは、今日こそは逃がさないとばかりに壁へ追い詰められていた。しかも背丈がそんなに変わらないので、爽やかな笑顔がとても近い。
……これがソルフィオーラであれば死ぬほど嬉しいのに。
何が悲しくて男に迫られねばならんのだと、ブルームは短く息を吐いた。ていうか絶倫説って何だ、変態説って何のことだと額を抱える。
ノクスに尋ねられたのはこれで三度目だった。
一度目は虚しい夜明けを迎えた朝、二度目は昨日、そして三度目が今日。
そろそろ限界かもとは思っていた。
ブルームはそっとノクスの腕に手を載せると視線でソファへと促す。
視線の意味をちゃんと捉えてくれたのだろう。ノクスは素直に腕を下ろし、ブルームを解放した。
「……で? 奥様との夜はどうだったんだい?」
――――かと思えば、向かい合いソファに座って早々核心に触れて来たので、ブルームは思い切りぶほっと咳込んでしまった。
「……はぁ、お前は……っ、だからなんでそう、明け透けに物を言うのだ……!」
「だって遠回しに聞いてもブルームは答えてくれないでしょう? なら、すぱっと直球で聞いた方が早いと思って」
「それにしても直球過ぎるだろう! ソ、ソソ、ソルフィオーラとの、よ、よよ夜の事などお前に、は、話せるわけがないだろう」
「……ブルームは本当奥様の事に関しては途端に分かり易くなるよね」
動揺がダダ漏れだった。
気付けばいつもの癖で眼鏡も無いのにくいくいと眉間を押し上げており、ブルームは慌てて止めた。
「最初の夜に何かあったことは一目瞭然だし、他の使用人たちもそれを察してる。あんな気まずい空間を毎日のように作られたら、皆働きにくくて仕方ないよ」
「………………」
「それにせっかく幼馴染が恋い焦がれた相手と結ばれたというのに幸せそうじゃないなんて放っておけないでしょう?」
ノクスが穏やかな笑みをブルームに向けて諭すように話をする。
そういえば結婚式の前も、今と同じ笑みを見せるノクスと会話した事を思い出す。
二人の時だけに許されるノクスの幼馴染としての顔は、真面目過ぎて少々頑固な所のあるブルームを解してくれる。
ソルフィオーラに出会った後は、恋愛事に不慣れな自分に助言までくれた。
――受け入れるかどうかは別としてだが。
主の意見を無視し縁談を求める手紙を出すなど本来やってはならないが、それはノクスが幼馴染の事を想っての行動である。
断られるのを恐れ一歩を踏み出せない自分の代わりにノクスがやってくれたのだ。
笑顔の裏に黒い企みを隠していることもあるが、いつもそうではない。
チャラけていて軽薄そうに見えるが、意外に真面目だ。
ノクスは自分の事を本当に思い遣ってくれている――――
「ノクス……お前は本当にい」
「どうせ浮かれ過ぎたブルームが暴走しちゃってドン引きされたんでしょう? だから優しくをモットーにって言ったのに……」
良い親友だな、と言おうとして辞めた。
肩を竦めてやれやれと首を振っている幼馴染を見て、ブルームは閉口する。
しかもこれだから恋愛素人は……なんて言う。
訂正、コイツは思い遣って行動してるんじゃない。面白がっているだけだ、絶対そうだ。そうに決まっている。
ブルームは眉間に皺を寄せてノクスを睨むが、ハハハと笑って流された。
「……とまぁ、冗談はほどほどにして。ブルームもそろそろどうにかしたいって思っているんでしょう? ブルームと僕の仲なんだし、今更変な言葉を口走ろうが気にしないから話してよ」
絶対冗談ではないくせに、と思うがノクスの夜色の瞳に真剣な色が乗ったのを見て改めた。一応真面目に聞くつもりはあるようだ。
しかし、いざ話そうと思ってもどう切り出せばいいものかとブルームは悩む。
何せ繊細な『夜』の話だ、流石のブルームも少々恥ずかしい。
「……………………まあ、なんだ。その……」
「うんうん」
勇気を振り絞って話し出した。
何なのだこれは。初めて実践で剣を振るった時よりも緊張する。
「……ソルフィオーラを前に、……まあ、昂りすぎたのは、確かだ」
「あー……ということは、ずんどこヤり過ぎちゃった訳だね?」
――――ずんどこヤるって何だ。
それにツッコミを入れてしまうと話が進まないのでブルームはとりあえず流しておく。
「………………いや、それが……していない」
「――していない? どういうこと? ソルフィオーラ様が怖がって出来なかった?」
「……それも、ちがう」
「んん?」
要領を得ないブルームの回答に、ノクスがとうとう首を傾げた。
はっきりと教えたいのはやまやまだが、やはり少々(かなり)恥ずかし過ぎた。
いつもの癖で眼鏡を押し上げようとして――無いことを思い出し、腕を組んで指をとんとんとリズミカルに動かす。
落ち着かない。とても落ち着かない。
「その…………まあ、なんだ。その……………………………………出てしまったのだ」
長く間を溜めて、ブルームはようやく直接的な言葉を吐き出した。
恥ずかしさからか体温が少し上昇したようでなんだか暑い。手のひらに変な汗が滲み始めた。
「出た? ……出たって、何が?」
「…………だから、いわゆる……その――――先に果ててしまった、ということだ」
しばらく、沈黙がこの場を支配した。
ノクスはぽかーんと大きく口を開けて呆然としている。
なんとも気まずい雰囲気に飲まれ、ブルームはいたたまれない。
何でもいいから早く何か言ってくれと願う。
「え? 果てたって、え? い、挿入れる前に?」
それは聞き届けられ、ややあってノクスがようやく声を発した。
しかしどうやら予想外の話だったのか、もごもごと口を動かしたノクスの声には動揺が滲んでいた。
あまり見ない幼馴染の表情にブルームは何だか申し訳ない気持ちに包まれたが、直接的な表現にぽっと頬に熱が灯った。
「……ああ、い、挿入れる前に……だ」
念のため言っておくと、経験は無いが自分のアレを相手のアレにアレする事だけは知識として知っていたブルームである。
「アハハ、まっさかー……そんな、まるで童貞みたいな……冗談でしょう?」
「………………」
苦笑するノクスにブルームは黙り込む。
その沈黙は肯定の証だった。
目を逸らし黙るブルームを見て、ノクスの表情が愕然としたものに変わる。
「……本当に?」
「…………ああ」
「――えっ、でも僕ブルームに娼館へ行かせてたよね……? シなかったの?」
「……………していない」
「まったく? なにも?」
「…………酒だけ、飲んでいた」
ノクスはぽかんと口を開け再び言葉を失った。
彼を騙していたことに今更ながら罪悪感を覚える。
しかし一つ言い訳をするならやはり最初は娼婦でなく、自分で選んだ相手と結ばれ――
「ブルームのおおばかやろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおッ!!」
突然叫ばれ、ブルームはひっくり返った。
ソファからずり落ちたブルームが驚いて見上げれば、ノクスが後ろで一つに束ねた黒髪をわしゃわしゃと掻き乱していた。
「ああもうっ、何のために通わせてたと思ってるんだ、このばかばかばかばかあんぽんたん!」
「ばっ……!? あん……っ!? ――だからノクス、お前は一応でも主に向かって何て口をき」
「そんなこと気にしている場合じゃないでしょうっ! 三十を前にした大の男がいざって時に初心者丸出しじゃ公爵として顔が立たないと思って気を回したというのにぃっ!!」
「いや、だが、しかし……さ、最初はやはり自分が選んだ人としたいだろうっ!」
「ああもう主が女々しくて辛いだなんて……! ――誰かを選ぶ気があるなら早いとこヤっときゃ暴発することもなかったでしょうがっ!」
うぐ、と言葉が詰まった。
これには言い返せず、ブルームはぐうと黙る。
(そ、ソルフィオーラが……か、可愛過ぎるのだから、仕方がないだろう……!)
羞恥でふるふると震えながらも、触れる度にぴくぴくと反応し愛らしい声で鳴かれたら興奮するに決まっている。
脳裏に蘇るソルフィオーラの艶姿――――金糸の髪をシーツいっぱいに広げ、青のネグリジェを着る彼女は羽を縫い止められた妖精のようだった。
胸元のリボンを解いたとき、露わになった小さな双丘はとても愛らしかった。その頂にある桜も彼女の純真さを表しているようだった。
初めて見る異性の肌、それが妻であり初恋の相手でもあるソルフィオーラだと言うのだから、喜びもひとしおというものだ。
想像の弊害か、身体の一部が昂ぶろうとしていたのでブルームは足を堅く閉じて何でもない風を装った。
頭痛でもするのか、ノクスが力なくソファに座り込んだ。
「……まあ過ぎたことを今更あれこれ言っても仕方がないでしょう。うん、今は置いておきましょう。で、――それからどうしたの? 食事で顔を合わせると途端に空気を重苦しくさせるくらいだから、どうせ他にもなにかやらかしているんでしょう? この際だから全部言っちゃいなよ」
そして腕を組み偉そうに踏ん反り返ったノクスが不機嫌丸出しの顔で言う。
まるでどこかの誰かを鏡越しに見ているようで少し苛つく。今この場の流れを支配しているのはノクスだが、一応立場は自分の方が上である。
しかし、それ咎めたところで数倍返しされること間違いなしだろう。
「……………………」
なのでブルームは黙ることにした。
ツンと横を向きノクスとは目を合わせない。
あの後の事を言ったら間違いなくガミガミ言われる。……それでは何も解決できない事は分かっているが。
「へぇ……ブルーム、だんまりしちゃうんだ?」
「……………………」
「へーふぅーん、そっかーへぇー」
横目で見たノクスの表情が爽やかな笑みに変わっていく。
――――ただし目は笑っていない。
「黙るってことはその後のフォローを間違えたってことなんですねぇ?」
「……………………」
「そうかぁ……きっと僕なら二人の仲を取り持つ手伝いができると思ったのに、そっかぁいらないなら仕方ないですねぇ」
「……………………」
「このまま行けばきっと離縁を切り出される日も近いでしょうねぇ、そして旦那様は一生童貞のままで暴発チェリー公爵なんて陰で呼ばれてしまうのですね」
「……言うから、……言うからねちっこく責めるのをやめろ」
ブルームは額を抱え降参した。無駄な抵抗だった。
「最初から素直にそうしてればいいんです。――それで、ソルフィオーラ様はどうされたんだい? まさか恥ずかしくなって逃げたとかは流石にしてないよね?」
――――ブルームはあの後部屋に戻り、汚してしまった下衣を自分で処理をした。その虚しさや恥ずかしさといったら……穴が有ったら今すぐ入りたいくらいであった。
自分が出したモノで汚れた部分を見られ心はあっという間に羞恥に染められた。
ソルフィオーラのことを気に掛ける余裕もなくなり……恥ずかしい思いに突き動かされてブルームは逃げることを選択してしまった。
翌朝、ソルフィオーラの目が泣き腫らしたように赤くなっていることに気づき、そこで自分がしでかした事の重さを認識したのだ。
(……流石幼馴染だな)
図星を突かれる形になり、ブルームはまたも口を閉ざした。
そんなブルームの様子に事情を全て理解したノクスが目を見開き立ち上がる。
「うそでしょうっ!? アンタマジでやりやがったか!」
「……し、仕方ないだろう! 他にどうしたらいいか分からなかったのだ!」
「――――ああああ、もう! だったらせめて指南書とかポルノ小説読み漁るとかぐらいしなよ! そしたら少しはマシな結果になったでしょうに!」
「う、うるさい! 結婚式の事で頭が一杯で忘れてしまったのだ!」
「ええ、知ってるさ! 暇さえあれば王都へ続く街道の方面を眺めては、はふぅと悩ましく溜め息吐いてましたし!? 奥様の部屋はどんな家具がいいか冊子と毎日にらめっこしてたもんね! この色惚けブルーム!」
「い、いい色惚けなどしておらん! 領主としてセレネイド家当主としての務めはしっかりと果たしていただろう!」
「えぇ、えぇ、ミス一つなかったようですね。――肝心な夫としての務めは果たせなかったけどね! ソルフィオーラ様はさぞお辛い気持ちになられたでしょうね!」
立ち上がったノクスの言葉が降り注ぎ、グサリと胸に刺さった。
それはそれは愛用の剣のように鋭く深く突き刺さって、痛い。本当に痛い。
ブルームは無い眼鏡の代わりに、眉間をぐにぐにと揉む。
あの眼鏡は恐らくソルフィオーラの部屋だ。
それをきっかけにして彼女に話しかけたいところだったのだが、恋愛初心者のブルームには女性へ話しかける自体難しいこと。ましてや愛しい女性に何て話しかければいいのかさえ悩んでしまうブルームである。
向かいのソファでぼすっと空気が抜ける音がした。
ノクスが頭を抱え腰を下ろしたところだったらしい。
「……ブルーム、今からでも遅くないから娼館へ行ってちょちょっと童貞捨てておいでよ……」
「……私はもう妻がいる身だ。そういうところへはもう行かん」
「……その妻にもう嫌われてるかもしれないけどね」
「………………」
「………………」
二人そろってはぁ……と息を吐く。
「とにかく、こういうのは早急にフォローをした方がいい。時間が経てば経つほど二人の距離が遠のいてしまうし、余計気まずくなって取り返すのつかない事になっちゃうからね」
結婚式の後はソルフィオーラとゆっくり過ごすつもりであったためブルームは五日ほど休みを取っている。
しかしそれももう半分も過ごしてしまった。その半分は気まずい状態なのでお互い別々に過ごしていた。
ソルフィオーラが出かけたという話も聞かないので、おそらくずっと家にいただろう。
「こういうとき贈り物をした方が一番無難だと思うんだけど。ブルーム、ソルフィオーラ様の好み知ってる?」
―――何か、何かきっかけは無いかとブルームは考える。
だが二年の間、二人でやり取りしていたこともないのでまだお互いの事を何も知らない状態だ。面と向かって顔を合わせて話をしたのも、例の出会いの一件以来だ。
(……ん?)
脳裏にピカンと何かが閃く。
天啓のようにそれは降りて来た。
(彼女と距離を縮められそうな物があったではないか……!)
何度も読み込んだせいで表紙は傷み本はくたびれて、題名だけ辛うじて読める程に色褪せしてしまっている本――――ソルフィオーラと話をするきっかけになった、あの。
ブルームはすくっと勢いよく立ち上がった。
そして急に立ったブルームを見て驚いているノクスに向かって告げた。
「――――街へ行く」
「お? 何か贈り物に検討ついているのかい? そうだなぁ、年頃の女性だし花やお菓子なんかがいいと思うんだけど」
「違う。贈り物はしない」
きっぱりと否定するブルーム。
脳裏にはあの日のソルフィオーラの笑顔と、古ぼけた本が映っている。
(――――彼女ならきっとあの場所を気に入ってくれる)
不確かな自信だが、絶対的な自信があった。
ブルームはもう一度ノクスに告げる。
「図書館へ行く。――――ソルフィオーラも一緒に、だ」
若い男女が行うという逢引き。ブルームが言っているのはそういう事だった。
言われたノクスは思いがけない提案に目をパチクリとさせていた。
そしてこう思った。ブルームにまだデートは早いんじゃないか、と。
何せ恋愛初心者で、口数の少ない男である。黙りこくったら絶対場が持たないという自信がある。何なら金貨一枚賭けたっていい――――
そんなノクスをよそに、ブルームは初めての逢引きに浮かれていた。
きっとこれで距離が縮まって、あの太陽のような笑顔を私に向けてくれる――――!
失敗なんてまるで考えていない。既に一度失敗しているというのに。
「……贈り物に、した方がいいんじゃないかなぁ」
しかし折角やる気になっているブルームにはっきりとは言い出せず、幼馴染の小さなぼやきはブルームの耳に届きもしなかった。
セレネイド家に仕える人々は恋煩いの溜め息を吐く当主の姿を見ているので、可愛い新妻を迎え二人きりの夜を過ごした彼の顔から不機嫌さは消えるだろうと誰もが思っていた。
結婚式から早三日。
窓から差し込む朝の太陽でぽかぽかと陽気さに包まれた食堂は、まるで葬式のように重苦しく静かな空気に包まれていた。
誰一人口を開く者はおらず、カチャカチャと食器の擦れる音だけが響く。
「…………」
「…………」
当主夫妻――ブルームとソルフィオーラの間に会話は無かった。
ソルフィオーラは見るからに表情を沈ませていて料理を一口運ぶごとに溜め息を吐き、ブルームといえば一見したらいつもの表情――不機嫌そうに眉根を寄せた――のように思えるが、眉間に刻まれた皺が通常より二本多い。そして何故かこの三日間眼鏡を掛けていなかった。
そのせいで手元が見え難くいつもより余計に皺寄せているのかと皆は思ったのだが、ソルフィオーラの表情を見て二人の間に何かあった事を悟る。
タイミングを考えれば、何かあったのは初夜の時だろう。
もしかして、夫人が怖がってしまったのか。
もしかして、当主様のが立派すぎて入らなかったとか。
もしかして、当主様が絶倫すぎて、性癖がヤバ過ぎて引かれてしまったとか。
当主様の当主様が――と使用人たちの間で下世話な勘繰りがされていたが、もちろん自分たちの主に対しそんなことを聞けるはずが無い。
だがたった一人だけ、ずけずけとブルームに言い詰られる人物がいた。
それが幼馴染であり、セレネイド家の執事を務めるノクスである。
「……というわけで、ブルーム絶倫説や変態説が提唱される前にいい加減何があったのか教えてくれませんか?」
顔の両横に手を置かれ、笑顔のノクスが言う。
朝食を終え早々に自室へと戻ったブルームは、今日こそは逃がさないとばかりに壁へ追い詰められていた。しかも背丈がそんなに変わらないので、爽やかな笑顔がとても近い。
……これがソルフィオーラであれば死ぬほど嬉しいのに。
何が悲しくて男に迫られねばならんのだと、ブルームは短く息を吐いた。ていうか絶倫説って何だ、変態説って何のことだと額を抱える。
ノクスに尋ねられたのはこれで三度目だった。
一度目は虚しい夜明けを迎えた朝、二度目は昨日、そして三度目が今日。
そろそろ限界かもとは思っていた。
ブルームはそっとノクスの腕に手を載せると視線でソファへと促す。
視線の意味をちゃんと捉えてくれたのだろう。ノクスは素直に腕を下ろし、ブルームを解放した。
「……で? 奥様との夜はどうだったんだい?」
――――かと思えば、向かい合いソファに座って早々核心に触れて来たので、ブルームは思い切りぶほっと咳込んでしまった。
「……はぁ、お前は……っ、だからなんでそう、明け透けに物を言うのだ……!」
「だって遠回しに聞いてもブルームは答えてくれないでしょう? なら、すぱっと直球で聞いた方が早いと思って」
「それにしても直球過ぎるだろう! ソ、ソソ、ソルフィオーラとの、よ、よよ夜の事などお前に、は、話せるわけがないだろう」
「……ブルームは本当奥様の事に関しては途端に分かり易くなるよね」
動揺がダダ漏れだった。
気付けばいつもの癖で眼鏡も無いのにくいくいと眉間を押し上げており、ブルームは慌てて止めた。
「最初の夜に何かあったことは一目瞭然だし、他の使用人たちもそれを察してる。あんな気まずい空間を毎日のように作られたら、皆働きにくくて仕方ないよ」
「………………」
「それにせっかく幼馴染が恋い焦がれた相手と結ばれたというのに幸せそうじゃないなんて放っておけないでしょう?」
ノクスが穏やかな笑みをブルームに向けて諭すように話をする。
そういえば結婚式の前も、今と同じ笑みを見せるノクスと会話した事を思い出す。
二人の時だけに許されるノクスの幼馴染としての顔は、真面目過ぎて少々頑固な所のあるブルームを解してくれる。
ソルフィオーラに出会った後は、恋愛事に不慣れな自分に助言までくれた。
――受け入れるかどうかは別としてだが。
主の意見を無視し縁談を求める手紙を出すなど本来やってはならないが、それはノクスが幼馴染の事を想っての行動である。
断られるのを恐れ一歩を踏み出せない自分の代わりにノクスがやってくれたのだ。
笑顔の裏に黒い企みを隠していることもあるが、いつもそうではない。
チャラけていて軽薄そうに見えるが、意外に真面目だ。
ノクスは自分の事を本当に思い遣ってくれている――――
「ノクス……お前は本当にい」
「どうせ浮かれ過ぎたブルームが暴走しちゃってドン引きされたんでしょう? だから優しくをモットーにって言ったのに……」
良い親友だな、と言おうとして辞めた。
肩を竦めてやれやれと首を振っている幼馴染を見て、ブルームは閉口する。
しかもこれだから恋愛素人は……なんて言う。
訂正、コイツは思い遣って行動してるんじゃない。面白がっているだけだ、絶対そうだ。そうに決まっている。
ブルームは眉間に皺を寄せてノクスを睨むが、ハハハと笑って流された。
「……とまぁ、冗談はほどほどにして。ブルームもそろそろどうにかしたいって思っているんでしょう? ブルームと僕の仲なんだし、今更変な言葉を口走ろうが気にしないから話してよ」
絶対冗談ではないくせに、と思うがノクスの夜色の瞳に真剣な色が乗ったのを見て改めた。一応真面目に聞くつもりはあるようだ。
しかし、いざ話そうと思ってもどう切り出せばいいものかとブルームは悩む。
何せ繊細な『夜』の話だ、流石のブルームも少々恥ずかしい。
「……………………まあ、なんだ。その……」
「うんうん」
勇気を振り絞って話し出した。
何なのだこれは。初めて実践で剣を振るった時よりも緊張する。
「……ソルフィオーラを前に、……まあ、昂りすぎたのは、確かだ」
「あー……ということは、ずんどこヤり過ぎちゃった訳だね?」
――――ずんどこヤるって何だ。
それにツッコミを入れてしまうと話が進まないのでブルームはとりあえず流しておく。
「………………いや、それが……していない」
「――していない? どういうこと? ソルフィオーラ様が怖がって出来なかった?」
「……それも、ちがう」
「んん?」
要領を得ないブルームの回答に、ノクスがとうとう首を傾げた。
はっきりと教えたいのはやまやまだが、やはり少々(かなり)恥ずかし過ぎた。
いつもの癖で眼鏡を押し上げようとして――無いことを思い出し、腕を組んで指をとんとんとリズミカルに動かす。
落ち着かない。とても落ち着かない。
「その…………まあ、なんだ。その……………………………………出てしまったのだ」
長く間を溜めて、ブルームはようやく直接的な言葉を吐き出した。
恥ずかしさからか体温が少し上昇したようでなんだか暑い。手のひらに変な汗が滲み始めた。
「出た? ……出たって、何が?」
「…………だから、いわゆる……その――――先に果ててしまった、ということだ」
しばらく、沈黙がこの場を支配した。
ノクスはぽかーんと大きく口を開けて呆然としている。
なんとも気まずい雰囲気に飲まれ、ブルームはいたたまれない。
何でもいいから早く何か言ってくれと願う。
「え? 果てたって、え? い、挿入れる前に?」
それは聞き届けられ、ややあってノクスがようやく声を発した。
しかしどうやら予想外の話だったのか、もごもごと口を動かしたノクスの声には動揺が滲んでいた。
あまり見ない幼馴染の表情にブルームは何だか申し訳ない気持ちに包まれたが、直接的な表現にぽっと頬に熱が灯った。
「……ああ、い、挿入れる前に……だ」
念のため言っておくと、経験は無いが自分のアレを相手のアレにアレする事だけは知識として知っていたブルームである。
「アハハ、まっさかー……そんな、まるで童貞みたいな……冗談でしょう?」
「………………」
苦笑するノクスにブルームは黙り込む。
その沈黙は肯定の証だった。
目を逸らし黙るブルームを見て、ノクスの表情が愕然としたものに変わる。
「……本当に?」
「…………ああ」
「――えっ、でも僕ブルームに娼館へ行かせてたよね……? シなかったの?」
「……………していない」
「まったく? なにも?」
「…………酒だけ、飲んでいた」
ノクスはぽかんと口を開け再び言葉を失った。
彼を騙していたことに今更ながら罪悪感を覚える。
しかし一つ言い訳をするならやはり最初は娼婦でなく、自分で選んだ相手と結ばれ――
「ブルームのおおばかやろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおッ!!」
突然叫ばれ、ブルームはひっくり返った。
ソファからずり落ちたブルームが驚いて見上げれば、ノクスが後ろで一つに束ねた黒髪をわしゃわしゃと掻き乱していた。
「ああもうっ、何のために通わせてたと思ってるんだ、このばかばかばかばかあんぽんたん!」
「ばっ……!? あん……っ!? ――だからノクス、お前は一応でも主に向かって何て口をき」
「そんなこと気にしている場合じゃないでしょうっ! 三十を前にした大の男がいざって時に初心者丸出しじゃ公爵として顔が立たないと思って気を回したというのにぃっ!!」
「いや、だが、しかし……さ、最初はやはり自分が選んだ人としたいだろうっ!」
「ああもう主が女々しくて辛いだなんて……! ――誰かを選ぶ気があるなら早いとこヤっときゃ暴発することもなかったでしょうがっ!」
うぐ、と言葉が詰まった。
これには言い返せず、ブルームはぐうと黙る。
(そ、ソルフィオーラが……か、可愛過ぎるのだから、仕方がないだろう……!)
羞恥でふるふると震えながらも、触れる度にぴくぴくと反応し愛らしい声で鳴かれたら興奮するに決まっている。
脳裏に蘇るソルフィオーラの艶姿――――金糸の髪をシーツいっぱいに広げ、青のネグリジェを着る彼女は羽を縫い止められた妖精のようだった。
胸元のリボンを解いたとき、露わになった小さな双丘はとても愛らしかった。その頂にある桜も彼女の純真さを表しているようだった。
初めて見る異性の肌、それが妻であり初恋の相手でもあるソルフィオーラだと言うのだから、喜びもひとしおというものだ。
想像の弊害か、身体の一部が昂ぶろうとしていたのでブルームは足を堅く閉じて何でもない風を装った。
頭痛でもするのか、ノクスが力なくソファに座り込んだ。
「……まあ過ぎたことを今更あれこれ言っても仕方がないでしょう。うん、今は置いておきましょう。で、――それからどうしたの? 食事で顔を合わせると途端に空気を重苦しくさせるくらいだから、どうせ他にもなにかやらかしているんでしょう? この際だから全部言っちゃいなよ」
そして腕を組み偉そうに踏ん反り返ったノクスが不機嫌丸出しの顔で言う。
まるでどこかの誰かを鏡越しに見ているようで少し苛つく。今この場の流れを支配しているのはノクスだが、一応立場は自分の方が上である。
しかし、それ咎めたところで数倍返しされること間違いなしだろう。
「……………………」
なのでブルームは黙ることにした。
ツンと横を向きノクスとは目を合わせない。
あの後の事を言ったら間違いなくガミガミ言われる。……それでは何も解決できない事は分かっているが。
「へぇ……ブルーム、だんまりしちゃうんだ?」
「……………………」
「へーふぅーん、そっかーへぇー」
横目で見たノクスの表情が爽やかな笑みに変わっていく。
――――ただし目は笑っていない。
「黙るってことはその後のフォローを間違えたってことなんですねぇ?」
「……………………」
「そうかぁ……きっと僕なら二人の仲を取り持つ手伝いができると思ったのに、そっかぁいらないなら仕方ないですねぇ」
「……………………」
「このまま行けばきっと離縁を切り出される日も近いでしょうねぇ、そして旦那様は一生童貞のままで暴発チェリー公爵なんて陰で呼ばれてしまうのですね」
「……言うから、……言うからねちっこく責めるのをやめろ」
ブルームは額を抱え降参した。無駄な抵抗だった。
「最初から素直にそうしてればいいんです。――それで、ソルフィオーラ様はどうされたんだい? まさか恥ずかしくなって逃げたとかは流石にしてないよね?」
――――ブルームはあの後部屋に戻り、汚してしまった下衣を自分で処理をした。その虚しさや恥ずかしさといったら……穴が有ったら今すぐ入りたいくらいであった。
自分が出したモノで汚れた部分を見られ心はあっという間に羞恥に染められた。
ソルフィオーラのことを気に掛ける余裕もなくなり……恥ずかしい思いに突き動かされてブルームは逃げることを選択してしまった。
翌朝、ソルフィオーラの目が泣き腫らしたように赤くなっていることに気づき、そこで自分がしでかした事の重さを認識したのだ。
(……流石幼馴染だな)
図星を突かれる形になり、ブルームはまたも口を閉ざした。
そんなブルームの様子に事情を全て理解したノクスが目を見開き立ち上がる。
「うそでしょうっ!? アンタマジでやりやがったか!」
「……し、仕方ないだろう! 他にどうしたらいいか分からなかったのだ!」
「――――ああああ、もう! だったらせめて指南書とかポルノ小説読み漁るとかぐらいしなよ! そしたら少しはマシな結果になったでしょうに!」
「う、うるさい! 結婚式の事で頭が一杯で忘れてしまったのだ!」
「ええ、知ってるさ! 暇さえあれば王都へ続く街道の方面を眺めては、はふぅと悩ましく溜め息吐いてましたし!? 奥様の部屋はどんな家具がいいか冊子と毎日にらめっこしてたもんね! この色惚けブルーム!」
「い、いい色惚けなどしておらん! 領主としてセレネイド家当主としての務めはしっかりと果たしていただろう!」
「えぇ、えぇ、ミス一つなかったようですね。――肝心な夫としての務めは果たせなかったけどね! ソルフィオーラ様はさぞお辛い気持ちになられたでしょうね!」
立ち上がったノクスの言葉が降り注ぎ、グサリと胸に刺さった。
それはそれは愛用の剣のように鋭く深く突き刺さって、痛い。本当に痛い。
ブルームは無い眼鏡の代わりに、眉間をぐにぐにと揉む。
あの眼鏡は恐らくソルフィオーラの部屋だ。
それをきっかけにして彼女に話しかけたいところだったのだが、恋愛初心者のブルームには女性へ話しかける自体難しいこと。ましてや愛しい女性に何て話しかければいいのかさえ悩んでしまうブルームである。
向かいのソファでぼすっと空気が抜ける音がした。
ノクスが頭を抱え腰を下ろしたところだったらしい。
「……ブルーム、今からでも遅くないから娼館へ行ってちょちょっと童貞捨てておいでよ……」
「……私はもう妻がいる身だ。そういうところへはもう行かん」
「……その妻にもう嫌われてるかもしれないけどね」
「………………」
「………………」
二人そろってはぁ……と息を吐く。
「とにかく、こういうのは早急にフォローをした方がいい。時間が経てば経つほど二人の距離が遠のいてしまうし、余計気まずくなって取り返すのつかない事になっちゃうからね」
結婚式の後はソルフィオーラとゆっくり過ごすつもりであったためブルームは五日ほど休みを取っている。
しかしそれももう半分も過ごしてしまった。その半分は気まずい状態なのでお互い別々に過ごしていた。
ソルフィオーラが出かけたという話も聞かないので、おそらくずっと家にいただろう。
「こういうとき贈り物をした方が一番無難だと思うんだけど。ブルーム、ソルフィオーラ様の好み知ってる?」
―――何か、何かきっかけは無いかとブルームは考える。
だが二年の間、二人でやり取りしていたこともないのでまだお互いの事を何も知らない状態だ。面と向かって顔を合わせて話をしたのも、例の出会いの一件以来だ。
(……ん?)
脳裏にピカンと何かが閃く。
天啓のようにそれは降りて来た。
(彼女と距離を縮められそうな物があったではないか……!)
何度も読み込んだせいで表紙は傷み本はくたびれて、題名だけ辛うじて読める程に色褪せしてしまっている本――――ソルフィオーラと話をするきっかけになった、あの。
ブルームはすくっと勢いよく立ち上がった。
そして急に立ったブルームを見て驚いているノクスに向かって告げた。
「――――街へ行く」
「お? 何か贈り物に検討ついているのかい? そうだなぁ、年頃の女性だし花やお菓子なんかがいいと思うんだけど」
「違う。贈り物はしない」
きっぱりと否定するブルーム。
脳裏にはあの日のソルフィオーラの笑顔と、古ぼけた本が映っている。
(――――彼女ならきっとあの場所を気に入ってくれる)
不確かな自信だが、絶対的な自信があった。
ブルームはもう一度ノクスに告げる。
「図書館へ行く。――――ソルフィオーラも一緒に、だ」
若い男女が行うという逢引き。ブルームが言っているのはそういう事だった。
言われたノクスは思いがけない提案に目をパチクリとさせていた。
そしてこう思った。ブルームにまだデートは早いんじゃないか、と。
何せ恋愛初心者で、口数の少ない男である。黙りこくったら絶対場が持たないという自信がある。何なら金貨一枚賭けたっていい――――
そんなノクスをよそに、ブルームは初めての逢引きに浮かれていた。
きっとこれで距離が縮まって、あの太陽のような笑顔を私に向けてくれる――――!
失敗なんてまるで考えていない。既に一度失敗しているというのに。
「……贈り物に、した方がいいんじゃないかなぁ」
しかし折角やる気になっているブルームにはっきりとは言い出せず、幼馴染の小さなぼやきはブルームの耳に届きもしなかった。
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