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「ずっと、ずっと、あなたのことしか、見ていない……あなたの幸せだけを、祈ってきたの……っ!」

 終末エンド回避のためとはいえ、本当はミーティアの恋に協力なんてしたくなかった。
 でも少しでもルートが変わるきっかけになるなら、と心を殺した。

「けれど、私、ずっとあなたは私のこと、ただの幼馴染、としか見ていないと思ったから……っ、ミーティアさん、のことも気に掛けていらしたから……っ」
「……つまり、君はミーティアと僕の間に何かあるのかもしれないと思った?」

 こくこく、とステラは頷いた。

 それに、また繰り返しが起こる保証はどこにもない。
 もしも今回到達する終末エンドで本当に終わりを迎えてしまったら、永遠のお別れとなる。
 そうなってしまったら、もう二度と会えない。
 レグルスと話をすることも、いつか恋人になって──と夢を見ることも叶わない。

「……ンッ」
「嫉妬をしたんだね? ああ、何て可愛いのだろうか、マイ・スティリアは」

 中から指を抜かれたと思えば、レグルスはステラを強く抱き締めてきた。
 頬に彼の胸元が当たる。
 細身の割にはしっかりと筋肉がついた胸元。その向こうからドクンドクンと心臓の音が聞こえてくる。

 ──彼は本当に生きている。前回の終わりで感じた生気のない冷たさはどこにも感じない。
 ステラもまたレグルスの背中に手を回して彼を抱き締めた。

「レギス……っ。私、あなたが本当に好きなの……っ」
「ああ、ステラ……僕もだよ……っ!」
「本当に、本当? あなたも、私を好いてくれているの?」
「ああ、本当だよ」

 両想いであることがこんなにも嬉しいなんて知らなかった。
 じわりと込み上げた涙を堪えることなく、ステラは彼の腕の中で静かに喜びの涙を流す。

「すまない。本当はずっと僕も君に想いを伝えたかったんだ……けれど、実は君の御父上から『交際は二十歳まで待て』と堅く言われていてね」
「おとう、さまが……?」
「君は可愛い可愛い一人娘だからね、気持ちは分かる」

 またも知らない設定だ。
 彼の苦笑が伝わってきて、なるほど相当強く言われてきたのだろうとステラは思った。

「……来月の君の誕生日に、愛を告げるつもりだった」

 確かにステラは終盤を迎える前に誕生日が来る。
 メインストーリー第三部、つまり終盤にあたる時期は今からちょうど一ヶ月後だ。ミーティアとの仲が深まっていない場合、いつもその時期に婚約が決まるわけはそういうことかと合点がいく。

「今までも、はっきりは言わなくとも君に好意は告げてきたつもりだった。毎年のように君と月花の祭りに行くのも、そうだ。君と特別な時間を過ごしたかったから。──でも、今ここではっきりと言わせて欲しい」

 レグルスの腕がステラを解放する。
 情熱を灯したガーネットの眼差しに、ステラは捉われた。
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