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「聞いてもいいかな、ステラ」
「はい、何でしょう?」
「後悔したくないってどういう意味かな」
緊張で指先が僅かに震える。
ひとつひとつゆっくりとボタンを外しながら回答に迷う。
口を開けば緊張が彼に伝わってしまいそうだ。ステラの心臓はうるさいくらいにドクドクと鼓動を打っている。
──ちゃんと言わなければ。
言ったところでレグルスが納得してくれる訳ではない、と理解した上で。
例えステラがレグルスの最有力婚約者候補だと言われているとしても、本人の好意は別なのだから。
ステラとレグルスの婚約はエンドを迎える直前に決まる。終末以外のルートの展開次第では、ステラとレグルスは仲睦まじそうに身を寄せ合っていたのできっと両想いになれたのだろう。
両思いにならなかったとしても、レグルスとステラの関係は良好と言える。それはこのルート上でもそうだろう。
しかし幼馴染以上のものはきっと彼にはないことを、ステラは理解していた。
なぜならこれは終末エンドルートでは、彼との婚約は王家とセレニア家の間で取り決められる。政略結婚に意志など関係ないのだ。
だからそれでもと、ステラは思いを遂げるためにレグルスのもとへ来た。
こんな勝手、許されるわけがない。
「私はずっと恐ろしくてたまらないのです。いつか大切な人を失うかもしれない、そんな恐怖がどうしても心から拭えないのです」
「……魔族国との関係が悪化しているからね。その気持ちは、分かる」
指先まで緊張しながらも、どうにかレグルスのシャツのボタンを全て外し終えた。
目の前に現れた細身ながらに逞しい胸板と腹筋に眩しさを感じつつ、このときめきは胸の奥へと閉じ込める。
今は逐一ときめいては悶える余裕などない。
滑り降りてきた髪を耳に掛けながら、ステラは彼の胸元へ唇を寄せる。
どきどきしながらちゅっと唇を弾ませると、微かに彼が息を漏らすのが聞こえてきた。
「でも、だから、……んっ、僕を、抱くと? どうして、そこに繋がったのかな?」
「……それ、は……」
彼が言葉を紡いでいるのもお構いなしに、ステラは身体へのキスを続けた。
──言うなら今だ。
今はきっとゲームの強制力は働いていない。
だが、言葉にするには勇気がいる。
これは前世のステラでもできなかったことでもあるからだ。
「はい、何でしょう?」
「後悔したくないってどういう意味かな」
緊張で指先が僅かに震える。
ひとつひとつゆっくりとボタンを外しながら回答に迷う。
口を開けば緊張が彼に伝わってしまいそうだ。ステラの心臓はうるさいくらいにドクドクと鼓動を打っている。
──ちゃんと言わなければ。
言ったところでレグルスが納得してくれる訳ではない、と理解した上で。
例えステラがレグルスの最有力婚約者候補だと言われているとしても、本人の好意は別なのだから。
ステラとレグルスの婚約はエンドを迎える直前に決まる。終末以外のルートの展開次第では、ステラとレグルスは仲睦まじそうに身を寄せ合っていたのできっと両想いになれたのだろう。
両思いにならなかったとしても、レグルスとステラの関係は良好と言える。それはこのルート上でもそうだろう。
しかし幼馴染以上のものはきっと彼にはないことを、ステラは理解していた。
なぜならこれは終末エンドルートでは、彼との婚約は王家とセレニア家の間で取り決められる。政略結婚に意志など関係ないのだ。
だからそれでもと、ステラは思いを遂げるためにレグルスのもとへ来た。
こんな勝手、許されるわけがない。
「私はずっと恐ろしくてたまらないのです。いつか大切な人を失うかもしれない、そんな恐怖がどうしても心から拭えないのです」
「……魔族国との関係が悪化しているからね。その気持ちは、分かる」
指先まで緊張しながらも、どうにかレグルスのシャツのボタンを全て外し終えた。
目の前に現れた細身ながらに逞しい胸板と腹筋に眩しさを感じつつ、このときめきは胸の奥へと閉じ込める。
今は逐一ときめいては悶える余裕などない。
滑り降りてきた髪を耳に掛けながら、ステラは彼の胸元へ唇を寄せる。
どきどきしながらちゅっと唇を弾ませると、微かに彼が息を漏らすのが聞こえてきた。
「でも、だから、……んっ、僕を、抱くと? どうして、そこに繋がったのかな?」
「……それ、は……」
彼が言葉を紡いでいるのもお構いなしに、ステラは身体へのキスを続けた。
──言うなら今だ。
今はきっとゲームの強制力は働いていない。
だが、言葉にするには勇気がいる。
これは前世のステラでもできなかったことでもあるからだ。
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