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覚悟するのはきみだ ⑤
しおりを挟む「ああ。一度抜いてやり直すより、このまましたほうがきみの負担も少ないと思うんだ」
「え? え? ええ?」
このままって、中から抜かずに続けるってことなの? そんなやり方があるの!?
それに、負担が少ないって、本当?
未知の世界に目を瞬かせていたら、クリストフがゆっくりと抜き差しを始めた。
「あっ、あぁん、あっ、あっ」
最初のころよりも痛みや違和感は少ない。ずっと入っている間に、彼の形に広げられてしまったような気がする。
クリストフが腰を前後させるたびに、グチュングチュンと激しい水音がするのが恥ずかしい。
「ミルドレッド、きみの中は最高だ。こんな楽園がこの世にあるなんて」
「クリストフさま、わたし、ちょっとおかしいの」
幸福感はあっても、気持ちよさはなかったはずなのに……。
「なんだか気持ちいいみたい?」
「本当か? どうしたら気持ちいい?」
クリストフが腰を細かく動かしたり、大きく前後させたり、円を描くように回したりする。
「あんっ、それ! あっ、あっ、ああっ」
「どれだ?」
「ぜんぶ! ぜんぶいいの!!」
怖いくらい急速に体の感覚が変わっていく。
硬くて大きなものが内側を突くたびに、下半身が重くしびれて、頭の中が白くなっていく。
「あっ! あぁ、きもちいい……どこかに、いっちゃいそう」
「いっていい。俺が捕まえておくから大丈夫だ。ミルドレッド、いけ」
「あっ、あんっ、いくっ……いっちゃう! ああぁぁぁぁぁんっ」
「俺もまたいく! く……っ!」
真っ白な光がはじけて、宙に舞う。たくさんの星がまぶたの裏を流れていった。
気が遠くなりそうにぼんやりしているのに、彼の呼吸や熱をものすごく近くに感じる。わたしとクリストフの体がまざり合ってしまったかのような不思議な感覚だった。
満足感と幸福感に浸っていたら、なんだか眠くなってしまった。
「ミルドレッド」
「はぁい……」
「もう一度いいか?」
「はぁ……い!?」
それから何度したのか覚えていない。
結局、途中から記憶をなくしてしまって、気がついたら部屋が明るくなっていた。
目覚めたのは、声をかけても体を揺らしても起きないわたしを心配したクリストフが、医師を呼ぼうとしているところで――。
「クリストフ……さま?」
「ミルドレッド! 大丈夫か!?」
クリストフはめちゃくちゃ動揺して真っ青になっている。
ふだんから寝覚めのいいわたしは、今が昼間だということに気づくと、すぐに状況を察した。
「大丈夫ですよ、クリストフさま。たぶん寝不足と疲労で、寝入ってしまったんだと思います」
「そう……か? 本当に?」
おろおろとベッドの横を行ったり来たりするクリストフの影から、聞き慣れた声がした。
「だから、申し上げましたでしょう」
わたしの侍女のエミリだ。
エミリは腕を組んで、背の高いクリストフを見上げている。まるで怒っている母親のようだ。
「旦那さまと奥さまは体格も体力も違うのですから、いくら奥さまがかわいくても、あまりご無理はなさらないでください」
「す、すまん」
クリストフの顔がかっと赤くなった。
ついでに、わたしの頬もすごく熱くなってしまったのだった。
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