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覚悟するのはきみだ ①
しおりを挟む「クリストフ……さま?」
「さっき、覚悟しろときみは言ったな」
たしかに言った。
落ち込んだ様子のクリストフにたまらなくなって、宣言した。
『わたくしは、あなたを幸せにしたいだけなのです。クリストフさま――旦那さま、やっぱりお覚悟ください』と。
淑女としてはちょっと過激な発言かもしれないけど、今さらかっこつけてもしょうがない。
クリストフに自分の気持ちを伝えるのが最優先だと思ったのだ。
「ミルドレッド」
熱い情熱を秘めた瞳が、わたしをじっと見つめている。
「覚悟するのはきみだ」
「え?」
「これまでどれだけ俺が我慢してきたと思っている」
わたしの腰をつかんでいた手がひらりと動いて、気づいたときにはクリストフに見下ろされていた。
その手が、ベッドに押し倒されたわたしの寝衣をはぎ取るように脱がせる。
あっという間にわたしは全裸になってしまった。
「綺麗だ……」
そうつぶやきながら、クリストフも自分の寝衣を脱ぎ去る。
芸術品のような鍛え上げられた体が現れて、わたしはついうっとりとしてしまった。
広い胸、盛り上がった肩。腕も長くて、手のひらも大きい。
こぢんまりとしたわたしと比べると、本当に大人と子どもみたいだ。
すべてが大きい彼を受け入れることができるだろうか。
改めて緊張してきたわたしに、クリストフが優しく微笑んだ。
「できるだけ暴走しないように気をつける。もう、きみに隠していることはないからな」
「はい……」
「きみの体の準備をしている途中でたまらなくなったら、自慰をしてしまうかもしれないが、それは許してくれ」
「じ、じい!?」
自慰って、自分で自分を慰めることよね?
そう思ってから、ふと閃いた。
もしかして、さっきわたしがクリストフに自分をこすりつけていたのも自慰になるのでは?
そこでわたしはクリストフにうなずいた。
「大丈夫です。さっきは、わたしも自慰しましたから!」
「ブホッ、ゲフゲフッ」
彼はなぜか思いっ切り咳き込んだ。
「クリストフさま、お体の具合でも悪いのですか?」
「い、いや、違う。きみの、その、じ、自慰を思い出したら興奮しすぎただけだ。鼻血……出ていないよな?」
「はい、出ていませんよ」
「よかった。――では、さわるぞ」
クリストフがわたしの胸に手を伸ばす。力が入っていないのではないかと思うくらいの優しいふれ方だ。
ゆっくりとした愛撫に、徐々に緊張感がほぐれてくる。
乳房自体はなにも感じなかったのだけど、彼の硬い手のひらが胸の先端に引っかかったとき、思わず声が出た。
「あんっ。そこ、ちょっと変かも」
「ここか?」
ふしくれだったクリストフの指が、両方の先端をつまんだ。
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