白い結婚なんてお断りですわ! DT騎士団長様の秘密の執愛

月夜野繭

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初恋の人はあなたです ③

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 そう、二十代後半のクリストフは、貴族男性としては晩婚の年代になっていた。
 伯爵位を継いで数年経ち、騎士団長にもなり、クリストフのまわりはそろそろ腰を落ち着けるべきだという雰囲気で。

 それまでクリストフがだれかに恋をしていたかどうかは知らなかった。
 けれど、彼の縁談を潰しまくったのは、実はわたし。公爵であるお父さまや、社交界に派閥を持つお母さまの力を借りて、わたしが彼から女性を遠ざけていた。
 だから、彼が女性からもてなかったとしたら、わたしのせい。

(本当にごめんなさい)

 申し訳ない思いはあるけれど、わたしはどうしても彼と結婚したかった。
 わたしはその機会を逃さず、婚約者として滑り込んだ。
 クリストフは、そんなわたしの気持ちには気づかずに優しく笑った。

「だが、次第にきみが裏表なく俺を想ってくれているのだとわかってきた」
「もちろんです!」
「いつも一生懸命なミルドレッドが、かわいく思えてきて……。そうしているうちに、きみはどんどん綺麗になっていく。やっと結婚式をして夫婦になったものの、俺はきみを傷つけてはいけないと自分を抑えるのに必死だった」
「そんな……どうして? わたくし、クリストフさまのお気持ちを知ったら、喜びこそすれ傷つけられたりしないのに」

 クリストフは困ったように頭をかいた。

「きみは成人しているとはいえ、まだ十八だ。俺のような年の離れた男の欲望を向けてはいけない気がしたんだ」

 欲望って……。
 思わず息を呑んでしまう。

 わたしに興味がないわけではなかったの? それで抱いてくれなかったのではないの?

 ぼう然と彼を見上げていると、深い緑色の瞳がとろりととろけた。

「それに、こんな華奢な体で、俺を受けとめることができるのだろうかと……きみを壊してしまいそうで怖かった。だから、初夜も、そのあともずっと我慢していた」

 これまで見たこともないような、熱くて甘い視線。
 彼の燃えるような瞳に囚われて、わたしもとけてしまいそうだった。
 クリストフがわたしの肩を軽く押すと、わたしはベッドに沈み込んだ。

「ミルドレッド……」

 口づけが降ってくる。
 舌と舌を絡ませる大人の口づけ。この深い口づけは二度目だ。
 彼の舌で、わたしの口の中がいっぱいになる。

「ん……っ、ん、あぁ」

 口づけをしているだけなのに、気持ちよくて、体がしびれてくる。
 クリストフの情熱を感じられるのがうれしくて、ずっとずっと口づけていたいと思った。
 わたしがうっとりとしていると、急にクリストフが体を起こした。

「すまない」
「え? なんですか? なにかありました?」
「きみはつらい目に遭ったばかりなのに、思わず求めてしまった。俺は自分勝手だな」

 離れていこうとする体に、思わずしがみつく。
 ベッドにひじをついて見下ろしてくる彼の目はまだ熱いのに、なぜやめてしまうの?

「いやです……」
「ああ、悪かった」
「違うの。行っちゃいや」

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