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初夜、ふたたび ②
しおりを挟むようやく訪れた、やり直しの初夜。
この勢いのまま、彼のものにしてもらわないと。もう二度と、こんな勇気は出ないかもしれないし。
わたしは起き上がって、自分でコルセットを脱ぎはじめた。編み上げのリボンをほどき、いくつも連なっている細かい留め金を外していく。
手の届かないところは思い切ってクリストフに頼んで、ようやくすべてが終わると、コルセットに押さえつけられていた乳房がぷるんと解放された。
「はぁー、締めつけがないと楽だわー」
ひとりでいるときみたいに、思わず大きな伸びをしてしまう。
すると、隣でゴクリとつばを呑む音がして、我に返った。
「えーっと」
恐る恐るそちらを見ると、クリストフがわたしの裸の胸を凝視している。
「ちゃんと見るのは初めてだな」
たしかに前回わたしが襲ったときは、彼はどさくさまぎれに顔をうずめただけだった。
「そんなに見ないでください」
急に恥ずかしさがこみ上げて、両手で胸を隠そうとしたら、ベッドに押し倒された。
「わ……っ!?」
彼は片手でわたしの両方の手首をひとまとめにすると、頭の上で拘束する。
軽く押さえているようで痛くはないけれど、身動きができない。
クリストフが片方の胸のふくらみにふれる。
「思っていたよりも大きい」
「は、恥ずかしいです」
わたしは小柄な体格のわりに、胸が大きい。
そんな体型はバランスが悪くてみっともないという劣等感があって、いつもコルセットをきつめに締めていた。
クリストフはその乳房をすくい上げるようにして、そうっともみはじめた。
「あん……っ」
「柔らかい」
前のときみたいな激しい愛撫じゃない。
ゆっくりとした動きは、わたしを気遣ってくれているみたいで、少しほっとする。
でも、彼の額には玉のような汗が噴き出していた。呼吸も、心配になるくらい荒い。
「ミルドレッド、では、慣らすぞ」
「ど、どうやって慣らすのですか?」
「指で広げると聞いた」
「聞いた? どなたにでしょうか?」
女性の体、しかも性行為にかかわることなんて、だれに相談したのかしら。
彼の緑色の瞳が、上下左右にふらふらと泳ぐ。
「それは……言えない」
一気に悲しさが込み上げた。
その手の商売の女性に聞いたのだろうか。それとも、秘密の恋人とか?
いや、さすがにそれはないか。いくら政略結婚でも、妻に隠れて愛人を囲ったりするような不実な人ではないはずだ。
もちろんクリストフはいい大人なのだから、これまで経験もあるだろう。
ただ貴族の嫡男として、女性問題を起こすと大変だから、玄人の女性にお世話になっていたのだと思う。だから、処女相手の作法は知らないのだ。
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