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快渇
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「まだイっちゃダメだから!足りない!足りない!!」
「あっ…も…無理…ぃ…」
泣きながら絞り出す男の声が嗜虐心を煽る。
どいつもこいつもこうだ。
何人食った、何人イかせた、俺はテクに自信がある…
そんな言葉は、私にとってなんの指標にもならない。
誰1人、私を満足させなかった。
この男も自信ありげなツラで誘ってきたクセに、惨めに泣かされている。
自慢の、ホワイトに染め上げた髪をなびかせてスパートをかける。
男はもう声すら出せなくなっていたが、一瞬痙攣するように力を込めた後、思い出したかのように荒く呼吸していた。
「そこそこ楽しめたよ」
倒れ伏す男を尻目に、私は片付けをして部屋を出た。
これまで、いろんなプレイを試してみた。
でも何をやっても、何度やっても満足できない。
相手の方がおかしくなったことさえあるのに。
病院に入ったやつもいるのに。
何人使い潰してもダメだった。
だからずっと体が疼く。
はじめての時、貫く雷のような快感に魅了された。
もう一度、あの快楽を味わいたい。
その思いだけで、私は何度も夜を過ごした。
満足できないイライラを持て余しながら街を歩いていると、見慣れない店があることに気づいた。
ふと心惹かれた私は店に入って、中を物色する。
「あなた、こんなものをお探しではないでしょうか?」
不意に声をかけられ、ビクッとしながら振り向く。
声がした方にはレジがあり、1人の老人が座っていた。
老人の手には、黒いパッケージが握られている。
「あなた、ずっと満たされないものがありますね?」
「これを使えば、きっと楽になる」
私は恐る恐るそれを手に取った。
中身はディルドのようだ。
「こんなの、何本も試したけど無駄だったわよ」
私はそう言って断ろうとしたが、老人は「満足できなかったらいつでも返品してくれ」という。
そこまでいうなら、試してみるか…軽い気持ちで購入した私に、老人は声をかけた。
「これは自信作だけど、程々に遊ぶようにね…」
「1日1回くらいにしときなさいね」
分かった、と言って私は店を後にした。
帰宅してひと段落した私は、先ほどのディルドをパッケージから取り出し、眺めていた。
特に変わったところはない。
目新しい機能も何もなさそうだ。
まあもし気に入らなければ、返品すればいい。
そう考えた私は、早速使ってみることにした。
「~っ…」
ただの一回で、コレのすごさが理解できた。
一度挿れたら、もう動かす余裕もないほどの快感。
まるで私を悦ばせるためだけに作られたかのようだ。
それでも、さらなる快感を求めてディルドを動かす。
その後のことはあまり覚えていない。
気がつくと私はその辺に寝っ転がっていて、
あたり一面びしゃびしゃになっていた。
相当叫んだようで、声も枯れている。
「これ…すごすぎ…」
私が求め続けた快楽。
男を、女を、何度抱いても得られなかったもの。
それをもたらしてくれる。
もうこれ無しでは生きられないと実感していた。
それから、私は人を抱くのをやめた。
ひたすらこのディルドに愛され続けている。
毎回、涙と溢れる潮に濡れながら快楽に浸った。
一日一回、という縛りも最初は守っていた。
しかし一週間も経つと、快楽を求める体の命令に勝てなくなり、日に二度、三度と回数は増えていった。
その頃だ。
私はあることに気づいた。
これを使ったあと、肌の艶が少しなくなっている気がする。
少しカサついているというか、水分が足りていないような…
行為の後風呂に入ったら回復していたので、それ以上気にはしなかった。
一カ月後。
風呂に入っても前ほど回復しなくなった。
最近調子が悪く、私は病院に来ていた。
番号を呼ばれた私は、診察室に入る。
「脱水ですね。寒くなってきたので、暖房つけてたりしませんか?」
医者はそう聞いてきたが、まだ暖房はつけていない。
「うーん、少し検査しましょうか」
ひとしきりの検査を終えて、診察室に戻る。
その医者は、意味のわからないことを言い出した。
「あなた、23歳ですよね…」
「この数値見てください。人体の水分量なんですが、20代なら大体70%くらいあるんです。でもあなたの数値がこれ…」
「55歳くらいの水分量です。何かこれまでお医者さんに言われたこととかないですか」
そう言われても、私には心当たりがない。
時期的に、あのディルドを使うようになってからの不調だが、まさか関係はないだろう。
そう思いディルドのことを伝えなかった私は、処方箋を受け取って病院を後にした。
その後も、私は変わらずディルドを使い続けた。
さすがに不安ではあったが、もう体がアレを求めている。
食事や睡眠と同じ、アレがないと生きられない。
次に変化が現れたのは髪だ。
これまで「染めているとは思えない」と褒められていた自慢の髪に、潤いがなくなってきたのだ。
サラサラとした感触もなくなり、これまでストレートにまとまっていたものが少しうねってくるようになった。
これでは本物の白髪、おばあちゃんの髪の毛じゃないか。
私は必死にトリートメントとシャンプーで誤魔化そうとした。
さらに1カ月後。
もう鏡は長いこと見ていない。
最後に見た時、自分がどこにいるか分からなかった。
鏡に映っていたのは、自分とよく似たおばあちゃんだった。
乾燥しきって艶のない肌。
潤いのない髪。
深く顔に刻まれたシワ。
私はまだ23歳のはずなのに、どうしてこんな…
いや、原因は分かっている。
あのディルドだ。
思えば、アレを使うまで潮なんて吹いたことがなかった。
初めての時でさえそうだ。
それに、アレで出てくる量は凄まじい。
AVのも大概だが、絶対もっと大量に出ている。
…私は、言いつけを守らなかった。
一日一回、という縛りを無視して、快楽に耽っていた。
体に補充される水が、排出される水より遥かに足りなかったんだ。
…あの医者は言っていた。
老化すると、人体の水分量は減っていく。
それなら、急に水分を失っていった私の体はどうなる…?
急激に老化したとしてもおかしくないんじゃないか…?
考えるほど、不安は募っていく。
もう私はおばあちゃんになってしまった。
ホワイトに染めていた髪は、今や本物の白髪になってしまった。
顔に触れると、大小のシワが刻まれている。
…そういえば、前にネットで見たことがある。
老衰は、厳密には脱水症状なんだって。
こんなおばあちゃんになっても、私はあの快楽を求めてる。
今も体はアレを欲している…
「気持ちよくなって、イけるとこまでいこう」
今日のは、これまでにない最高の快楽だった。
白髪をなびかせ、ビクンと身を震わせた私は、絶頂と共に訪れた眠気を拒むことなく受け入れた。
完
「あっ…も…無理…ぃ…」
泣きながら絞り出す男の声が嗜虐心を煽る。
どいつもこいつもこうだ。
何人食った、何人イかせた、俺はテクに自信がある…
そんな言葉は、私にとってなんの指標にもならない。
誰1人、私を満足させなかった。
この男も自信ありげなツラで誘ってきたクセに、惨めに泣かされている。
自慢の、ホワイトに染め上げた髪をなびかせてスパートをかける。
男はもう声すら出せなくなっていたが、一瞬痙攣するように力を込めた後、思い出したかのように荒く呼吸していた。
「そこそこ楽しめたよ」
倒れ伏す男を尻目に、私は片付けをして部屋を出た。
これまで、いろんなプレイを試してみた。
でも何をやっても、何度やっても満足できない。
相手の方がおかしくなったことさえあるのに。
病院に入ったやつもいるのに。
何人使い潰してもダメだった。
だからずっと体が疼く。
はじめての時、貫く雷のような快感に魅了された。
もう一度、あの快楽を味わいたい。
その思いだけで、私は何度も夜を過ごした。
満足できないイライラを持て余しながら街を歩いていると、見慣れない店があることに気づいた。
ふと心惹かれた私は店に入って、中を物色する。
「あなた、こんなものをお探しではないでしょうか?」
不意に声をかけられ、ビクッとしながら振り向く。
声がした方にはレジがあり、1人の老人が座っていた。
老人の手には、黒いパッケージが握られている。
「あなた、ずっと満たされないものがありますね?」
「これを使えば、きっと楽になる」
私は恐る恐るそれを手に取った。
中身はディルドのようだ。
「こんなの、何本も試したけど無駄だったわよ」
私はそう言って断ろうとしたが、老人は「満足できなかったらいつでも返品してくれ」という。
そこまでいうなら、試してみるか…軽い気持ちで購入した私に、老人は声をかけた。
「これは自信作だけど、程々に遊ぶようにね…」
「1日1回くらいにしときなさいね」
分かった、と言って私は店を後にした。
帰宅してひと段落した私は、先ほどのディルドをパッケージから取り出し、眺めていた。
特に変わったところはない。
目新しい機能も何もなさそうだ。
まあもし気に入らなければ、返品すればいい。
そう考えた私は、早速使ってみることにした。
「~っ…」
ただの一回で、コレのすごさが理解できた。
一度挿れたら、もう動かす余裕もないほどの快感。
まるで私を悦ばせるためだけに作られたかのようだ。
それでも、さらなる快感を求めてディルドを動かす。
その後のことはあまり覚えていない。
気がつくと私はその辺に寝っ転がっていて、
あたり一面びしゃびしゃになっていた。
相当叫んだようで、声も枯れている。
「これ…すごすぎ…」
私が求め続けた快楽。
男を、女を、何度抱いても得られなかったもの。
それをもたらしてくれる。
もうこれ無しでは生きられないと実感していた。
それから、私は人を抱くのをやめた。
ひたすらこのディルドに愛され続けている。
毎回、涙と溢れる潮に濡れながら快楽に浸った。
一日一回、という縛りも最初は守っていた。
しかし一週間も経つと、快楽を求める体の命令に勝てなくなり、日に二度、三度と回数は増えていった。
その頃だ。
私はあることに気づいた。
これを使ったあと、肌の艶が少しなくなっている気がする。
少しカサついているというか、水分が足りていないような…
行為の後風呂に入ったら回復していたので、それ以上気にはしなかった。
一カ月後。
風呂に入っても前ほど回復しなくなった。
最近調子が悪く、私は病院に来ていた。
番号を呼ばれた私は、診察室に入る。
「脱水ですね。寒くなってきたので、暖房つけてたりしませんか?」
医者はそう聞いてきたが、まだ暖房はつけていない。
「うーん、少し検査しましょうか」
ひとしきりの検査を終えて、診察室に戻る。
その医者は、意味のわからないことを言い出した。
「あなた、23歳ですよね…」
「この数値見てください。人体の水分量なんですが、20代なら大体70%くらいあるんです。でもあなたの数値がこれ…」
「55歳くらいの水分量です。何かこれまでお医者さんに言われたこととかないですか」
そう言われても、私には心当たりがない。
時期的に、あのディルドを使うようになってからの不調だが、まさか関係はないだろう。
そう思いディルドのことを伝えなかった私は、処方箋を受け取って病院を後にした。
その後も、私は変わらずディルドを使い続けた。
さすがに不安ではあったが、もう体がアレを求めている。
食事や睡眠と同じ、アレがないと生きられない。
次に変化が現れたのは髪だ。
これまで「染めているとは思えない」と褒められていた自慢の髪に、潤いがなくなってきたのだ。
サラサラとした感触もなくなり、これまでストレートにまとまっていたものが少しうねってくるようになった。
これでは本物の白髪、おばあちゃんの髪の毛じゃないか。
私は必死にトリートメントとシャンプーで誤魔化そうとした。
さらに1カ月後。
もう鏡は長いこと見ていない。
最後に見た時、自分がどこにいるか分からなかった。
鏡に映っていたのは、自分とよく似たおばあちゃんだった。
乾燥しきって艶のない肌。
潤いのない髪。
深く顔に刻まれたシワ。
私はまだ23歳のはずなのに、どうしてこんな…
いや、原因は分かっている。
あのディルドだ。
思えば、アレを使うまで潮なんて吹いたことがなかった。
初めての時でさえそうだ。
それに、アレで出てくる量は凄まじい。
AVのも大概だが、絶対もっと大量に出ている。
…私は、言いつけを守らなかった。
一日一回、という縛りを無視して、快楽に耽っていた。
体に補充される水が、排出される水より遥かに足りなかったんだ。
…あの医者は言っていた。
老化すると、人体の水分量は減っていく。
それなら、急に水分を失っていった私の体はどうなる…?
急激に老化したとしてもおかしくないんじゃないか…?
考えるほど、不安は募っていく。
もう私はおばあちゃんになってしまった。
ホワイトに染めていた髪は、今や本物の白髪になってしまった。
顔に触れると、大小のシワが刻まれている。
…そういえば、前にネットで見たことがある。
老衰は、厳密には脱水症状なんだって。
こんなおばあちゃんになっても、私はあの快楽を求めてる。
今も体はアレを欲している…
「気持ちよくなって、イけるとこまでいこう」
今日のは、これまでにない最高の快楽だった。
白髪をなびかせ、ビクンと身を震わせた私は、絶頂と共に訪れた眠気を拒むことなく受け入れた。
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