私の遺書

私の遺書

はじめて、死を実感したのは



いつだっただろうか？


おそらく、私の祖母が死んだときだろう。


私が中学１年のとき、


祖母は


難病で亡くなった。



治療などできず……ただ延命措置を


看護師である母の主導で行った。





最期に……私は立ち会えなかった。


両親の方針のもと、


祖母の時計が止まるとき


私は


いつもと変わらない生活をしていた。




自分の親しい人の死をちゃんと知ったのは

はじめてだった。


昨日まで


呼吸していた人が


今日には


ただの人形のように


動くことはーー……なかった。




今までだって


友人の父親の死や



ペットの死


……いくつもの死を見てきた




でも、



人間が人間でなくなってしまうという事象を




……はじめて経験した。




なんと、衝撃だったことだろう。




祖母の死を受け入れられず



泣くこともできず



悲しむこともできず




ただ、呆然とする私は




なんと愚かな若輩者だっただろうか……





いつものように



笑顔の仮面を貼り付け、



大丈夫かと問われれば



大丈夫だと言い、



大変だねと言われれば



他の人の方が大変だと答え、



可哀想だと言われることを嫌い、



家族を慰め、



自分の心を見ないようにして



年を重ねた。






人間の脆さを実感し始めたのは、



最近になってからだ。




突然、動かなくなる体躯……


突然、出来なくなる呼吸……


突然、届く大切な人の訃報……


突然、言われる私の病名……





ああーー……





なんと人間の生の儚いことか……




なんと脆いことか……





心の状態だけで



激痛をもたらし、


私を苦しめ、



他人を傷付ける。







なんど、




他人から誹謗中傷を贈られただろう？





なんど、





自分のことが嫌いになっただろう？





もう、健康な身体には戻れない。



死を理解せずにはいられまい。




生きるためにはーー……


……最期を考えねばならない。




もう、見て見ぬ振りは……許されない。




今、生きている



７０億を超える人々は……


何をやっている？？




生を受けただけでも



感謝すべき世界の奇跡に対して



何をしている？




東では大気汚染で苦しみ、


西では餓死する子供がいて、


南では温暖化の影響で動物が死に、


北では核ミサイルが開発され、



なあーー……





あなたたちはーー……





　　　　　　　なにをしているんですか？



















同じ、宇宙船地球号に乗る仲間達よ……



何で争っている？


何で殺しあっている？


何で傷付けあっている？



何で……誰も……手を繋ごうとしないんだ！？






私達に



平和をくださらないのはーー……







なぜですか？








大人の事情ですか？







社会の事情ですか？






家庭の事情ですか？






国家の事情ですか？






学校の事情ですか？







会社の事情ですか？







地球の事情ですか？










自分の事情ですか？










もう……やめましょうよ。





争いの時代は、





終わりました。







私達は、幸せにならなきゃいけないんです。




私達は、幸せにしなきゃいけないんです。




私達には、幸せになる権利があるんです。




私達には、幸せのバトンを渡す義務があるんです。








そのことをーー……





忘れないでください。







もしかしたら、




私は




明日……死んでいるかもしれません。






明日のことは




誰にだってわかりません。







もし、この小説を読んだあなたが




少しでも




今の世界を変えたいと思ってくれるなら







私が書いたこの遺書にも






意味がありました。














最後まで読んでくださりーー……




ありがとうございました。