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十一話

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 「な、なに?!…え?!ママ?!イールビおじちゃん?!」

タバスがイールビとロッロに気がつく。

「あ…タバス…ちゃん…これは…」

「マジかよ。いらねーのが混じっちまった」

「ちょ、いらないって事は…」

「野郎の歌声に神力なんて皆無だろ」

「そ、そんな事は…」

「ちょっと!ちょっと!!痴話喧嘩してないで説明して!アッキさん声出なくなっちゃってるの!なんで?!何をしたの!」

ポカンとして口をパクパクさせるアッキの横で火を付けたようにタバスが怒っていた。

「お前コイツから聞いていないのか。昔、共に歌う女は1人だけだと豪語しておいて、他の女と…ましてや出会ったばかりのお前と歌っていた。それに罰を与えたまでよ」

「え」

悪そうにわざと低い声で言うイールビだったが、その場で作った即席の理由にロッロは着いていけてなかった。

「はぁーー?!どういう事ですか!誰が誰と歌おうと勝手でしょ!なにそれ!アッキさんの声返してよ!」

本来の標的は自分だったという事も知らずタバスはますますヒートアップしてしまった。

「それは無理だ。この巻貝へは魔女ムヒコーウェル様の心音が途絶えた時歌声を解放するという呪いをかけてあるのだ。返してほしくばムヒコーウェル様を倒す事だな。ハッハッハッハッ…
《説明すんのが面倒くせぇ》
行くぞロッロ」

わざとらしく“悪役”風に演技をしつつ、途中心の声が直接胸に響く。
ロッロは混乱しつつも、

「ちょっ、、ええぇ…。は、はい、イールビ様…」

と、とりあえず返事をして、踵を返すイールビを追おうとした。

「ちょっとまてーーい!!」

タバスが物凄いスピードで走ってロッロを追い越しイールビの前に立ちはだかった。

「ちゃんと!説明してよ!なんだよそれ!誰と誰じゃないといけないなんて決まりはないでしょ!歌はもっと自由だ!歌いたい人と歌いたい時に歌ったらいいんだ!」

「タバスちゃん…」

「お前に話す事はない。話しても無駄だ」

「そんな事、おじちゃんの話を聞いてみなきゃわからないだろ!」

「時間の無駄だ。ロッロ、来い」

「えっ、あ、はい…」

ロッロがイールビに近寄ると黒い霧がふわりと足元から舞出て2人を包んだかと思うと、それがパッと晴れた時には姿が消えていた。

「あっ!!ちょっと!逃げられたー!」

タバスは顔をハバネロのように真っ赤にさせて地団駄を踏んだ。
アッキは声が出ないが、そんなタバスを優しくなだめる仕草をしつつ、イールビの消えた方向を睨んでいた。
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