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むひ

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出会い頭のよくある憂鬱

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 夕方、村に戻ったエルヒムは自室のベットに横になり天井を眺める。
ハヤノはいつもそうだ。魔法を使えなくたって生活に困らないじゃないか。皆一緒じゃなきゃダメなのか。
お節介なんだよ。僕は僕なりにやるさ。
もやもやした気持ちのままいつの間にか寝てしまった。

「あ、やべ!遅刻だ」
急いで制服に着替えポンを口にくわえ家を出た。
ドン!誰かにぶつかった。
「あ、ごめんなさい」二軒先の角を曲がった所だった。
「いてててて。エルヒムじゃない」
「ヒュメも遅刻かよ」
「昨日夜更かしして…って急がないと!」
「そうだった!」

先生の声が頭に入ってこない。「でーあるからしてこのマテリアルは…エルヒム聞いているのかね?」
「あ、はい聞いてます!」
「じゃあこの赤いマテリアルの粉をマンドレイクに振りかけるとどうなる」
「あ、えー、えっと…」
「魔法ができないなら授業くらい聞いてたまえ」
クスクスと周りから聞こえた。

日差しは強いが屋上の風が気持ちいい。
「エルヒム怒られたんだって?」ヒュメが手すりにもたれた。
「あ、うん…」
「ハヤノの事でしょ」ヒュメは悩み事をよく当てる。
「聞いた?」
「少しね、気にしなくていいと思うよ。ハヤノは後引かないし普通に話しかければハヤノもケロッとしてるって」
強い風が吹いた。
「うん…」
「あ、ところで聞いた?変な病気が流行ってるんだってね」
「病気?」
そういえば最近村が騒がしかった。
「エルフに感染する病気なんだって。今のとこ治療する薬草も見つかってないみたい」
「エルフに感染するって、ハーフエルフもか?」
「わかんないけどエルヒムも気をつけた方がいいよ」

それからというもの村では感染予防のためエルフの集まりが禁止となった。お互い距離を取るようになり交流が無くなった。外に出ることは禁止されていなかったが出歩く者もいなかった。
まだ村では感染者はいなかったが噂ではエルフ都市カラバートでは感染者が出たそうだ。あくまで噂で誰も確かめたものはいなかった。
ハヤノとは学校が閉鎖されたので仲直りする間もなく、また会った時にでも、と漠然と考えていた。

そんな時だった。ダッタン国が村の位置を特定し軍を送り込んだ。伝染病のおかげで連絡系統は機能せず。村のエルフも交流が無くなったため伝わるのも遅かった。

「我はダッタン国軍指揮官ナツァーキ。悪さをするエルフ共大人しく投降しろ!」
村は完全に包囲され。投降するものもいれば戦うものもいた。
その時だった。地面からゴーレムが錬成され軍に襲いかかる。だがゴーレムは力はあるが数で押された。
ゴーレムによってナツァーキまで道を開けたところにハヤノがダガーで切りかかる。
「エルフは悪さなんてしてない!」
ナツァーキも応戦する。剣とダガーは金属音を立てた。「小癪な!何人も被害者がいるんだぞ!いまさら」
ナツァーキの方が上手だった。ほんの差でハヤノの腕を切りつける。
ヒュメは大地の詠唱でハヤノの腕を癒した。
「ヒュメ、ナイス!まだまだこれから!」
「ハヤノ!無理しちゃダメだよ」
ハヤノは詠唱しゴーレムを一体に集めナツァーキを攻撃させる。ナツァーキはその速さで難なくかわした。
「大きければいいってもんじゃないでしょ」
ナツァーキが着地したところにヒュメの罠が待っていた。ナツァーキの足に蔦が絡み身動きが取れなくなった。
この連携プレーは学校でも評価されいた。ただ仲が良くて一緒にいる訳ではなかったのだ。お互いの強さを最大限に、息を合わせるためでもあった。
ハヤノはナツァーキの前に立つ。
「エルフは悪さをしない。盗賊のしわざなんだからね。今すぐ引き上げて」
「そんなことはどうでもいい。国民の不安が我々をよこしたのだ」
「事実はどうでもいいって言うの?」
「それが国だ」
「人間って…ほんと愚か…」
視線をそらすと心配で見に来たエルヒムと目が合った。聞こえた。
エルヒムは顔を背け走った。
「エルヒム!違うの!待って!」
何も聞こえなかった。家でカバンを取ると森に走った。
指揮官を捕らえられ浮き足立った兵士の間を抜けるのは容易だ。

どれくらい走ったのか。息が切れ木にもたれかかった。
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