素直になれないわたくしもそろそろ年貢の納め時かもしれませんわ。執事!執事のセバスチャン!わたくしのことをデートに誘ってもよろしくってよ。

みるふぃーゆ

文字の大きさ
上 下
2 / 3

002-転生したら勘違い悪役令嬢になっておりましたの!?~2

しおりを挟む
「~おっほん。ミレーユ、そろそろいいか?」
「よろしくてよ!」

 いけませんわ。気合いを入れすぎて天井を指差してポーズしてしまいました。
 さらにお父様に高飛車語を使ってしまいましたわ。

「ミレーユ。先も言ったように殿下との件、頼んだぞ」
「わかりましたわ」
「存分に楽しんでいくといい。なにか問題があればセバスチャンに聞くといい」

 お父様が右手を少し上げ、指を鳴らすと執務室の扉が開き、銀髪の少年が入ってくる。

「旦那様。失礼いたします。」
「セバス。トパーズの首飾りとそれにあうドレスをお父様に買っていただくの、それに似合うポーチを選びたいのよろしくて?」
「お部屋に並べております」

 執事というのは本当になんでもお見通しなのかしら。
 執事には大別して2種類あるというのは公式ガイド本で見たことがございますの。
 一方は、己の一生を主人に捧げ、執事でいる限り独り身を貫くもの。
 もう一方は、既存の子弟が教育の一環としてある程度の年齢になるまで勤めるもの。

 今わたくしの後ろを歩いているセバスチャンがそのどちらに属するかは、
主であるわたくしでさえ知らされていない。
 セバスはどちらに属するのかしら。

 部屋に入り、ソファに腰掛けると膝の上に布がかけられる。
視線を動かすとセバスと目が合った。

 銀髪の少年。物心ついた頃からわたくしに仕えていた男の子。
顔つきは幼さを残すというのに、物腰は大人びている。
彼は慣れた手付きで膝掛けの皺を伸ばしている。

「お嬢様。ご不要でしたか?」
「いえ、そんなことなくってよ。」

 いけませんわ。この素っ気ない態度がわたくしを悪役令嬢と勘違いさせておりますのよ。
わたくしは膝掛けを左手でゆっくりと撫でる。

「暖かいですわ。ありがとう。セバス」
「光栄でございます」

 少年執事は右手を胸に当て、礼をする。
こんな芝居がかった仕草でも様になっているのはイケメンのズルいところですわね。

 あと数年もすればV系のロックバンドにでも入れそうな美形なのに
子犬のような性質も兼ね備えているなんて…恐ろしい子。

「なにか気になることでもあったの?」
「いえ、お掛けしたらお嬢様と目が合いましたのでご不満な点でもあるのかと思いまして」

 この世界ではエアコンなどないのですから、温度調節は布と毛皮、火とあとひとつ、魔法で行いますの。
だから春先の暖かいこの季節であっても、普段着は薄着をして、膝掛けや上着などで調節をするのが一般的ですわ。

 そして貴族の令嬢に膝掛けを掛けるのはキザな殿方か、使用人ですの。

 しかしーー

「そんな風に思われるほど、わたくしはあなたと目を合わせていなかったのですね」

 ふと思ったことが口から出ていたことにミレーユは気がつかなかった。
しおりを挟む
ごきげんよう。閲覧ありがとうございますですわ。お気に入り登録していただけると励みになりますわ。おーほっほっほ。
感想 0

あなたにおすすめの小説

嘘をありがとう

七辻ゆゆ
恋愛
「まあ、なんて図々しいのでしょう」 おっとりとしていたはずの妻は、辛辣に言った。 「要するにあなた、貴族でいるために政略結婚はする。けれど女とは別れられない、ということですのね?」 妻は言う。女と別れなくてもいい、仕事と嘘をついて会いに行ってもいい。けれど。 「必ず私のところに帰ってきて、子どもをつくり、よい夫、よい父として振る舞いなさい。神に嘘をついたのだから、覚悟を決めて、その嘘を突き通しなさいませ」

私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜

月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。 だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。 「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。 私は心を捨てたのに。 あなたはいきなり許しを乞うてきた。 そして優しくしてくるようになった。 ーー私が想いを捨てた後で。 どうして今更なのですかーー。 *この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

悪女の私を愛さないと言ったのはあなたでしょう?今さら口説かれても困るので、さっさと離縁して頂けますか?

輝く魔法
恋愛
システィーナ・エヴァンスは王太子のキース・ジルベルトの婚約者として日々王妃教育に勤しみ努力していた。だがある日、妹のリリーナに嵌められ身に覚えの無い罪で婚約破棄を申し込まれる。だが、あまりにも無能な王太子のおかげで(?)冤罪は晴れ、正式に婚約も破棄される。そんな時隣国の皇太子、ユージン・ステライトから縁談が申し込まれる。もしかしたら彼に愛されるかもしれないー。そんな淡い期待を抱いて嫁いだが、ユージンもシスティーナの悪い噂を信じているようでー? 「今さら口説かれても困るんですけど…。」 後半はがっつり口説いてくる皇太子ですが結ばれません⭐︎でも一応恋愛要素はあります!ざまぁメインのラブコメって感じかなぁ。そういうのはちょっと…とか嫌だなって人はブラウザバックをお願いします(o^^o)更新も遅めかもなので続きが気になるって方は気長に待っててください。なお、これが初作品ですエヘヘ(о´∀`о) 優しい感想待ってます♪

もう散々泣いて悔やんだから、過去に戻ったら絶対に間違えない

もーりんもも
恋愛
セラフィネは一目惚れで結婚した夫に裏切られ、満足な食事も与えられず自宅に軟禁されていた。 ……私が馬鹿だった。それは分かっているけど悔しい。夫と出会う前からやり直したい。 そのチャンスを手に入れたセラフィネは復讐を誓う――。

やり直すなら、貴方とは結婚しません

わらびもち
恋愛
「君となんて結婚しなければよかったよ」 「は…………?」  夫からの辛辣な言葉に、私は一瞬息をするのも忘れてしまった。

その国外追放、謹んでお受けします。悪役令嬢らしく退場して見せましょう。

ユズ
恋愛
乙女ゲームの世界に転生し、悪役令嬢になってしまったメリンダ。しかもその乙女ゲーム、少し変わっていて?断罪される運命を変えようとするも失敗。卒業パーティーで冤罪を着せられ国外追放を言い渡される。それでも、やっぱり想い人の前では美しくありたい! …確かにそうは思ったけど、こんな展開は知らないのですが!? *小説家になろう様でも投稿しています

ヒロインでも悪役でもない…モブ?…でもなかった

callas
恋愛
 お互いが転生者のヒロインと悪役令嬢。ヒロインは悪役令嬢をざまぁしようと、悪役令嬢はヒロインを返り討ちにしようとした最終決戦の卒業パーティー。しかし、彼女は全てを持っていった…

母の中で私の価値はゼロのまま、家の恥にしかならないと養子に出され、それを鵜呑みにした父に縁を切られたおかげで幸せになれました

珠宮さくら
恋愛
伯爵家に生まれたケイトリン・オールドリッチ。跡継ぎの兄と母に似ている妹。その2人が何をしても母は怒ることをしなかった。 なのに母に似ていないという理由で、ケイトリンは理不尽な目にあい続けていた。そんな日々に嫌気がさしたケイトリンは、兄妹を超えるために頑張るようになっていくのだが……。

処理中です...