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第1章 努力は一瞬の苦しみ、後悔は一生の苦しみ
アレク・セン・ウェルロッド
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俺は確かに転生した。
2度目の人生を手に入れたのだ。
俺の新しい名前は【アレク・セン・ウェルロッド】ーー黒い髪に黄金の瞳を持った容姿をしている。
銀河ダレーシア王国ーーウェルロッド領領主 ウェルロッド伯爵。
王国の中の領主の跡取り息子として俺は生まれた。
自分が転生者であると自覚し出したのはついさっきのこと。
本当なら喜んで小躍りするところだろう、しかしーー領地の中にある犯罪者が幽閉される洞窟の中の鉄格子の中で目覚めたら流石に気分が悪い。
「やっぱ、どんな奴も信用ならねぇな」
ついでに、俺は今日5歳の誕生日を迎えたところだ。
誕生日ケーキでも持ってきてもらえるのかと思ったんだけど、門番はそトレーにそこそこ豪勢な料理を持って着ただけだった。
門番の男は申し訳なさそうに俺に手渡してくる。
「申し訳ございません。こっそり料理長からいただいてきたのですが、ケーキはご用意することができませんでした。誠に申し訳ございません。・・・アレク様、誕生日おめでとうございます。」
俺はそれを手に取る。
うーん、ローストビーフに、カボチャのスープにパン、白身魚のムニエルにサラダーーまあ、美味しそうではあるな。
俺は、門番の目を見た。
門番は驚いた顔をした。
「ありがとう。お前の名前は何だ」
「はっ、私めの名前は【ダニエル・フォージャー】でございます」
膝をついて俺に首を垂れた。
それでも俺よりも大きいくらいだ。
まあ、俺はまだ5歳なんだけどね。
「ダニエル。俺はどうしてここにいるんだ」
ダニエルはどう言えばいいのかわからず篭っているため、俺が正直に全て言えと言ったら、話してくれた。
どうも俺をここに閉じ込めたのは両親だった。
俺の両親はどうもここの星の領主をしているらしい。
でも、領主経営はうまく行っていないというか、好き勝手やりたい放題した挙句、なんか面白そうという理由で子供まで作ったんだと。
その子供が俺で、俺の世話が面倒になったのと同時に、将来的にこの領地を俺に渡さないといけなくなったのが嫌になった体を俺をここに幽閉したそうだ。
元々、殺そうとしていたところでそば付きの人がどうにかこうにかでこの洞窟に幽閉したそうだ。
「なるほどね」
俺は少し考えた。
ここで焦ってもぶっちゃけしょうがない。
たかが5歳ではどうにもすることはできない。
感情的になってはいけない。
冷静に、ばかをどうやって転がしてやるかだけを考えるんだ。
「ダニエル、お願いがある」
「何なりとお申し付けください」
相手は相当なバカと思われる。
なら、バカはバカらしく騙されてもらおうではないか。
「俺の親に『隠居は今よりもやりたい放題、したい放題できるらしい』という噂を流して聞かせるんだ。できれば証拠となるようなリゾートが乗っているようなパンフレットでもそっと見える位置において置けばいい。そうやって隠居に追い込んでやれ」
ダニエルは、呆然と俺を見ていたが、すぐに顔を引き締めた。
「かしこまりました」
そういうとすぐにその場から立ち去っていった。
ここ周辺は俺しかいないので、ダニエルがいなくなると一気に静まり返った。
俺は、もう、人を信じることはしない。
しかし、今回はばかりはどうしようもない。
「今のお俺にできることをしておくかーー自由のために」
俺は出された食事を体に取り込んだ。
俺は特に何もすることがないのでーー寝た。
◆
なんか、弾力のある柔らかいところにいる気がする。
香りはどこか柔らかな香り、そう、優しい太陽の香りといった方がいいだろうか。
「う~ん。ここは・・・」
俺はゆっくりと起き上がる。
広い部屋がそこにはあった。
俺が寝ているベットには天井までついていて、レースのカーテンが閉められている。
うっすら見えるので周りを見渡すと、ちょっとしたクローゼットがあるだけだ。
ドアをノックする音が聞こえた。
「アレク様、お目覚めでしょうか」
少し年をとったの男の声が聞こえた。
俺はドアの方を向いた。
「ああ、ちょうど今起きたところだ」
俺は寝巻きを直してベットから降りる。
そこには灰色の髪をオールバックにした長身で細身の男がそこにいた。
執事服を完璧に着こなしており、俺に向かって一礼する。
「お着替えのお手伝いをさせていただきます」
そう言って、俺に近づいてくる。
俺はビクッと肩を揺らした。
「いい、必要な服だけおいておけーー自分で着替える」
「しかし、それでは」
「くどい、何度も言わせるな」
俺はその執事を睨んだ。
執事はクローゼットの中から適当な服を選んでベットの上に置いた。
寝巻きを脱いで何とも立派な服に着替える。
俺は部屋の端で突っ立っている男を見て名前を思い出していた。
そういえば、この執事は俺の親の側近のーークロードっていう執事。
「なあ、クロード。これはどういう状況なんだ」
俺は疑問に思っていたことを口に出した。
ついさっきまで牢に幽閉されていたのに、少し寝て目を覚ませばこんな豪華な部屋にいるんだ。
さすがにおかしいと思う。
「はい。アレク様が看守に御命じなさったことについてなのですが、ご両親のロイ様、アンナ様の耳に届きましてーーご隠居なされました」
「・・・え?」
マジで?
あんな適当な噂を本当に信じでこの国の領主をやめたのか?
「それに伴いまして、アレク様がただいまよりウェルロッド領の8代目当主となられます。何卒、よろしくお願いいたします」
クロードはそういうと俺に向かって再度礼をした。
ふ~ん、なるほどね。
簡単な話、俺は両親を追い出すことに成功して、5歳にしてこの俺がここの領主となっちゃったわけか。
つまり、俺がここの実質的な王になったわけだな。
やっば!やりたい放題じゃん!
「そうか。ーーとりあえず、俺、何していいのかさっぱりわかんないや」
俺は着替え終わった。
俺の服は豪華でキラキラしていて派手派手しい子供服。
これが着ていてめちゃくちゃ暑苦しい感じがする。
性能はいいためか特に不自由はないが、何となく気に入らない。
もっと落ち着いた雰囲気の服にしてもらいたいものだ。
「なあクロード。もっとまし服はなかったのか?これはなんか嫌だ」
「そうおっしゃられましても、これ以外の服がですね・・・その、少々奇抜と申しますか」
クロードが篭る。
何だ?クローゼットに服があるんだろ?
俺はクローゼットまで近づくと自動で開いた。
「・・・何だこりゃ!」
そこにあった服は、もう、人が来ていいような服じゃなかった。
赤、青、黄色、緑、シルバー、ゴールドetc
ヒラヒラ、襟長、針金でデコレーションetc
「・・・マジ?」
クロードは申し訳なさそうにしていたが、顔にはそれを出さない。
「こちらは前領主のご趣味でありまして、その服以外、まともなのがございません」
この服が一番まともだと?
マジで両親恨むからな。
「今日中にこの服全部処分しておけ、それと、新しい服を用意しておけ」
クロードは少し驚いたが、すぐに気を引き顔を引き締めた。
「かしこまりました。何かご要望はありますでしょうか?」
「特にない。普通の服を買ってこい」
「かしこまりました」
そう言って寝室を出た。
◆
「うーん。わからん」
俺は今、執務室というところに来ていた。
その広い部屋は街を一望できるようになっていて、とても景色がいい。
大きな机と座っていても全く疲れない椅子があって、目の前には大きなスクリーンがある。
俺は領主になったばかりだから、まずこの国の状況を把握しないといけない。
「なあクロード。この国の状況を見るためにはどうしたらいい?」
俺はクロードに聞いた。
「こちらになります」
目の前のスクリーンにこの国状況を表す表や数値が出されるがーーさっぱり理解できん。
「ーーわからん」
クロードも「そうでしょうね」という、少し残念そうに申し訳なさそうにしていた。
だが、顔には出さない。
にしても、弱った。
何から始めていいかさっぱりわからん。
困っていると、部屋の中に少し機械的な声が聞こえた。
『旦那様。お困りですか』
俺はキョロキョロした。
「お前は誰だ」
『私は、旦那様をサポートするAIにございます。もし、お困りでありましたら私が統治をお助けいたしますが』
「本当か? だが、俺は何もわからんぞ」
『旦那様は幼少期教育プログラムを受けておられませんので、そちらをお受けになるとよろしいかと思います。その間、私が統治を代行することが可能です』
それを聞いてクロードが慌てて止めに入る。
「なりません! アレク様! 人工知能に領地を統治させるのは王国では悪となっております。人工知能にさせることが許されるのはサポートまででございます」
「え、そうなの?」
『いえ、王国法にそのようなことは規定されておりません。犯罪ではございません』
「そういう問題ではないのです。これは、世間体の問題です」
俺はクロードの方を見た。
「ふーん。じゃあ、統治はAIに任せるわ」
「アレク様!」
「クロード。お前、これを見て俺に統治しろと本当に言えるのか」
俺はそういうとメインモニターを切って手を叩く。
後ろのカーテンが自動で開く。
そこには絶景が広がっていた。
いたがよく見て見ると、栄えているとは口を濁してもいえない状況になっていた。
一箇所を見るだけでも、盗みが行われているし、畑ではほとんど作物が育っていない。
これじゃ、俺の生活が潤わない!
夢の自由な生活が手に入らない!
俺は普通の自由はいらないーー何不自由のない自由がいいのだ。
「これは・・・前領主様の統治の結果でして・・・アレク様の結果では・・・」
クロードはそれでも食い下がる。
「すまんが、この状況で何も知らない俺が統治できるとは到底思えん。なら、AIに任せて俺は勉強するーー教育プログラムを用意しろ」
「かしこまりました」
クロードは納得して、教育プログラムの準備に取り掛かる。
俺はその間、教育プログラムがどういったものなのかの説明を見た。
ホログラム(立体映像)で教育プログラムの装置が映し出された。
どうも教育プログラムとは、数日から数ヶ月かけて前世で数年かけていた教育を終わらせるものだった。
カプセルの中に入れられて身体中を線で繋がれて液体の中で過ごすだけで、体と脳を成長させるらしい。
それでも、教育後のアウトプットをしっかりしないとしっかりと身につかないらしい。
まあ、そこは普通に勉強するよりも効率がいいということで納得している。
これだけのことができるのなら、結構優秀な人間を育てることもできるのでは?
いかんせん、ここの文明は俺が前まで生きていた日本よりも高い文明だ。
なんかアニメであるような現代知識を活かしてチートとかそんなことはできそうにない。
なら、俺に力がある方がいい。
結局、信用できるのは俺だけだ。
「なあ、俺は文武両道の最強になりたいが、それはこの教育では可能か?」
俺はAIに聞いた。
『はい、可能です。最低限の教育ではなく、最高の教育に修正しておきます』
「頼む。あと、俺の体は将来的にこうしたい」
立体映像に俺の理想の体型を映し出す。
身長は190cmと高めで、肩幅の広いゴリマッチョよりも少し大人しくした感じの体型を映し出すした。
『かしこまりました。そのように肉体成長プログラムを設定します』
そうやって俺は俺の完璧を目指した。
こうしておけば、俺の力でどうにかやっていけるだろう。
それに、任せられる仕事は任せてしまった方がいい。
そっちの方がうまくいくし、俺のために時間をかけられる。
本当は今すぐにでも領民から搾り取れるものは搾り取ってしまいたいが、いかんせん絞れるだけのものがない。
ここは我慢の一手だ。
それに、俺はまだ子供だ。時間はある。
なら、少しゆっくりしてもいいだろう。
俺はそんなことを考えながら、教育プログラムを受けるのだった。
2度目の人生を手に入れたのだ。
俺の新しい名前は【アレク・セン・ウェルロッド】ーー黒い髪に黄金の瞳を持った容姿をしている。
銀河ダレーシア王国ーーウェルロッド領領主 ウェルロッド伯爵。
王国の中の領主の跡取り息子として俺は生まれた。
自分が転生者であると自覚し出したのはついさっきのこと。
本当なら喜んで小躍りするところだろう、しかしーー領地の中にある犯罪者が幽閉される洞窟の中の鉄格子の中で目覚めたら流石に気分が悪い。
「やっぱ、どんな奴も信用ならねぇな」
ついでに、俺は今日5歳の誕生日を迎えたところだ。
誕生日ケーキでも持ってきてもらえるのかと思ったんだけど、門番はそトレーにそこそこ豪勢な料理を持って着ただけだった。
門番の男は申し訳なさそうに俺に手渡してくる。
「申し訳ございません。こっそり料理長からいただいてきたのですが、ケーキはご用意することができませんでした。誠に申し訳ございません。・・・アレク様、誕生日おめでとうございます。」
俺はそれを手に取る。
うーん、ローストビーフに、カボチャのスープにパン、白身魚のムニエルにサラダーーまあ、美味しそうではあるな。
俺は、門番の目を見た。
門番は驚いた顔をした。
「ありがとう。お前の名前は何だ」
「はっ、私めの名前は【ダニエル・フォージャー】でございます」
膝をついて俺に首を垂れた。
それでも俺よりも大きいくらいだ。
まあ、俺はまだ5歳なんだけどね。
「ダニエル。俺はどうしてここにいるんだ」
ダニエルはどう言えばいいのかわからず篭っているため、俺が正直に全て言えと言ったら、話してくれた。
どうも俺をここに閉じ込めたのは両親だった。
俺の両親はどうもここの星の領主をしているらしい。
でも、領主経営はうまく行っていないというか、好き勝手やりたい放題した挙句、なんか面白そうという理由で子供まで作ったんだと。
その子供が俺で、俺の世話が面倒になったのと同時に、将来的にこの領地を俺に渡さないといけなくなったのが嫌になった体を俺をここに幽閉したそうだ。
元々、殺そうとしていたところでそば付きの人がどうにかこうにかでこの洞窟に幽閉したそうだ。
「なるほどね」
俺は少し考えた。
ここで焦ってもぶっちゃけしょうがない。
たかが5歳ではどうにもすることはできない。
感情的になってはいけない。
冷静に、ばかをどうやって転がしてやるかだけを考えるんだ。
「ダニエル、お願いがある」
「何なりとお申し付けください」
相手は相当なバカと思われる。
なら、バカはバカらしく騙されてもらおうではないか。
「俺の親に『隠居は今よりもやりたい放題、したい放題できるらしい』という噂を流して聞かせるんだ。できれば証拠となるようなリゾートが乗っているようなパンフレットでもそっと見える位置において置けばいい。そうやって隠居に追い込んでやれ」
ダニエルは、呆然と俺を見ていたが、すぐに顔を引き締めた。
「かしこまりました」
そういうとすぐにその場から立ち去っていった。
ここ周辺は俺しかいないので、ダニエルがいなくなると一気に静まり返った。
俺は、もう、人を信じることはしない。
しかし、今回はばかりはどうしようもない。
「今のお俺にできることをしておくかーー自由のために」
俺は出された食事を体に取り込んだ。
俺は特に何もすることがないのでーー寝た。
◆
なんか、弾力のある柔らかいところにいる気がする。
香りはどこか柔らかな香り、そう、優しい太陽の香りといった方がいいだろうか。
「う~ん。ここは・・・」
俺はゆっくりと起き上がる。
広い部屋がそこにはあった。
俺が寝ているベットには天井までついていて、レースのカーテンが閉められている。
うっすら見えるので周りを見渡すと、ちょっとしたクローゼットがあるだけだ。
ドアをノックする音が聞こえた。
「アレク様、お目覚めでしょうか」
少し年をとったの男の声が聞こえた。
俺はドアの方を向いた。
「ああ、ちょうど今起きたところだ」
俺は寝巻きを直してベットから降りる。
そこには灰色の髪をオールバックにした長身で細身の男がそこにいた。
執事服を完璧に着こなしており、俺に向かって一礼する。
「お着替えのお手伝いをさせていただきます」
そう言って、俺に近づいてくる。
俺はビクッと肩を揺らした。
「いい、必要な服だけおいておけーー自分で着替える」
「しかし、それでは」
「くどい、何度も言わせるな」
俺はその執事を睨んだ。
執事はクローゼットの中から適当な服を選んでベットの上に置いた。
寝巻きを脱いで何とも立派な服に着替える。
俺は部屋の端で突っ立っている男を見て名前を思い出していた。
そういえば、この執事は俺の親の側近のーークロードっていう執事。
「なあ、クロード。これはどういう状況なんだ」
俺は疑問に思っていたことを口に出した。
ついさっきまで牢に幽閉されていたのに、少し寝て目を覚ませばこんな豪華な部屋にいるんだ。
さすがにおかしいと思う。
「はい。アレク様が看守に御命じなさったことについてなのですが、ご両親のロイ様、アンナ様の耳に届きましてーーご隠居なされました」
「・・・え?」
マジで?
あんな適当な噂を本当に信じでこの国の領主をやめたのか?
「それに伴いまして、アレク様がただいまよりウェルロッド領の8代目当主となられます。何卒、よろしくお願いいたします」
クロードはそういうと俺に向かって再度礼をした。
ふ~ん、なるほどね。
簡単な話、俺は両親を追い出すことに成功して、5歳にしてこの俺がここの領主となっちゃったわけか。
つまり、俺がここの実質的な王になったわけだな。
やっば!やりたい放題じゃん!
「そうか。ーーとりあえず、俺、何していいのかさっぱりわかんないや」
俺は着替え終わった。
俺の服は豪華でキラキラしていて派手派手しい子供服。
これが着ていてめちゃくちゃ暑苦しい感じがする。
性能はいいためか特に不自由はないが、何となく気に入らない。
もっと落ち着いた雰囲気の服にしてもらいたいものだ。
「なあクロード。もっとまし服はなかったのか?これはなんか嫌だ」
「そうおっしゃられましても、これ以外の服がですね・・・その、少々奇抜と申しますか」
クロードが篭る。
何だ?クローゼットに服があるんだろ?
俺はクローゼットまで近づくと自動で開いた。
「・・・何だこりゃ!」
そこにあった服は、もう、人が来ていいような服じゃなかった。
赤、青、黄色、緑、シルバー、ゴールドetc
ヒラヒラ、襟長、針金でデコレーションetc
「・・・マジ?」
クロードは申し訳なさそうにしていたが、顔にはそれを出さない。
「こちらは前領主のご趣味でありまして、その服以外、まともなのがございません」
この服が一番まともだと?
マジで両親恨むからな。
「今日中にこの服全部処分しておけ、それと、新しい服を用意しておけ」
クロードは少し驚いたが、すぐに気を引き顔を引き締めた。
「かしこまりました。何かご要望はありますでしょうか?」
「特にない。普通の服を買ってこい」
「かしこまりました」
そう言って寝室を出た。
◆
「うーん。わからん」
俺は今、執務室というところに来ていた。
その広い部屋は街を一望できるようになっていて、とても景色がいい。
大きな机と座っていても全く疲れない椅子があって、目の前には大きなスクリーンがある。
俺は領主になったばかりだから、まずこの国の状況を把握しないといけない。
「なあクロード。この国の状況を見るためにはどうしたらいい?」
俺はクロードに聞いた。
「こちらになります」
目の前のスクリーンにこの国状況を表す表や数値が出されるがーーさっぱり理解できん。
「ーーわからん」
クロードも「そうでしょうね」という、少し残念そうに申し訳なさそうにしていた。
だが、顔には出さない。
にしても、弱った。
何から始めていいかさっぱりわからん。
困っていると、部屋の中に少し機械的な声が聞こえた。
『旦那様。お困りですか』
俺はキョロキョロした。
「お前は誰だ」
『私は、旦那様をサポートするAIにございます。もし、お困りでありましたら私が統治をお助けいたしますが』
「本当か? だが、俺は何もわからんぞ」
『旦那様は幼少期教育プログラムを受けておられませんので、そちらをお受けになるとよろしいかと思います。その間、私が統治を代行することが可能です』
それを聞いてクロードが慌てて止めに入る。
「なりません! アレク様! 人工知能に領地を統治させるのは王国では悪となっております。人工知能にさせることが許されるのはサポートまででございます」
「え、そうなの?」
『いえ、王国法にそのようなことは規定されておりません。犯罪ではございません』
「そういう問題ではないのです。これは、世間体の問題です」
俺はクロードの方を見た。
「ふーん。じゃあ、統治はAIに任せるわ」
「アレク様!」
「クロード。お前、これを見て俺に統治しろと本当に言えるのか」
俺はそういうとメインモニターを切って手を叩く。
後ろのカーテンが自動で開く。
そこには絶景が広がっていた。
いたがよく見て見ると、栄えているとは口を濁してもいえない状況になっていた。
一箇所を見るだけでも、盗みが行われているし、畑ではほとんど作物が育っていない。
これじゃ、俺の生活が潤わない!
夢の自由な生活が手に入らない!
俺は普通の自由はいらないーー何不自由のない自由がいいのだ。
「これは・・・前領主様の統治の結果でして・・・アレク様の結果では・・・」
クロードはそれでも食い下がる。
「すまんが、この状況で何も知らない俺が統治できるとは到底思えん。なら、AIに任せて俺は勉強するーー教育プログラムを用意しろ」
「かしこまりました」
クロードは納得して、教育プログラムの準備に取り掛かる。
俺はその間、教育プログラムがどういったものなのかの説明を見た。
ホログラム(立体映像)で教育プログラムの装置が映し出された。
どうも教育プログラムとは、数日から数ヶ月かけて前世で数年かけていた教育を終わらせるものだった。
カプセルの中に入れられて身体中を線で繋がれて液体の中で過ごすだけで、体と脳を成長させるらしい。
それでも、教育後のアウトプットをしっかりしないとしっかりと身につかないらしい。
まあ、そこは普通に勉強するよりも効率がいいということで納得している。
これだけのことができるのなら、結構優秀な人間を育てることもできるのでは?
いかんせん、ここの文明は俺が前まで生きていた日本よりも高い文明だ。
なんかアニメであるような現代知識を活かしてチートとかそんなことはできそうにない。
なら、俺に力がある方がいい。
結局、信用できるのは俺だけだ。
「なあ、俺は文武両道の最強になりたいが、それはこの教育では可能か?」
俺はAIに聞いた。
『はい、可能です。最低限の教育ではなく、最高の教育に修正しておきます』
「頼む。あと、俺の体は将来的にこうしたい」
立体映像に俺の理想の体型を映し出す。
身長は190cmと高めで、肩幅の広いゴリマッチョよりも少し大人しくした感じの体型を映し出すした。
『かしこまりました。そのように肉体成長プログラムを設定します』
そうやって俺は俺の完璧を目指した。
こうしておけば、俺の力でどうにかやっていけるだろう。
それに、任せられる仕事は任せてしまった方がいい。
そっちの方がうまくいくし、俺のために時間をかけられる。
本当は今すぐにでも領民から搾り取れるものは搾り取ってしまいたいが、いかんせん絞れるだけのものがない。
ここは我慢の一手だ。
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