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少年は戦う(後編)
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俺と村井2曹は2人で最後の晩餐をしていた。
晩餐と言ってもまだ日が昇っている午後3時なのだが。
この日の夜に2人で奇襲をかける計画を立てていた。
武器はそこそこの量になった。
村井2曹たちが持っていた多目的無反動砲に対人ライフル(ベテランになると2kmまでなら当てられるらしい)、手榴弾といったところだ。
「・・・あの、本当にいいんですか?」
俺は村井2曹に聞いた。
「何が?」
「ほぼ無謀な作戦に参加してくれてです。」
村井2曹は持ってきていた日本酒を水筒のキャップに入れて一息に飲む。
「俺がなんで酒なんて持ってきているか・・・お前ならわかるやろ?」
俺の方を睨むように、されど、同志を見るような目で俺を見る。
「わかりますよ・・・少し、確認したかっただけです。」
俺がそういうと、真顔で俺の方に酒を差し出す。
俺も水筒のチャップを差し出し酒を入れてもらう。
「まあ、なんだ。俺も覚悟はしとるからな・・・・こうなるかもなーと思うとった。お前は、なんでこんなことをしようと思うたんや?」
「・・・」
俺は、もらった酒を一息に飲み干す。
「・・・家族がいるんです。・・・俺の両親に兄弟、そして俺の嫁。なら、やるしかないじゃないですか。」
俺は、空になったキャップを見る。
「守りたいんです・・・何がなんでも。」
村井2曹は持ってきた酒を一気に飲み干す。
「ああ!俺、もう少し欲しかったのに。」
「うるせ。ガキにはまだ早いわ!」
村井2曹は俺にそう言った。
「作戦の変更が必要やな。」
「え?なぜ?」
「お前みたいなやつを突撃させるわけにはいかん。」
村井2曹は少し怒った感じで俺に言う。
俺もムキになって言い返してしまう。
「俺が失敗するとでも思っているのですか?それとも、情に流されましたか?俺はできます。家族とも別れをすませています。俺がやります。」
「馬鹿野郎!」
村井2曹は酒瓶を地面に叩きつける。
「いいか!お前には、お前を待っている家族がおる。嫁がおる。それやのに、お前は死にに行こうとしとる。これがどう言うことかわかるんか?お前は、家族を裏切るんやぞ!それはな・・・それは、人として一番しちゃいかんんことや!生き残って、また会える可能性を捨てるんやない!歯を食いしばれ!」
俺は反射的に歯を食いしばった。
バチィィィン!
すごい音が洞窟内に広がった。
「いいか。お前は狙撃をやれ。俺が基地に突っ込む。ほんで、仕事を終えたら即、離脱しろ。」
「・・・・わかりました。」
村井2曹は再度戦闘準備をしだす。
俺も、それに続いて準備をした。
太陽は傾き始め、空は真っ赤に染まった。
俺と村井2曹はゆっくりと敵基地に近づいていき、狙撃場所の確認と侵入経路の確認をした。
「じゃあ、ここからは別行動やな。」
「はい。」
「まあ・・・短い間やったけど。お前が頼りになるなんは喋ってわかった。」
村井2曹は俺にそういうと、笑顔で俺の方を見た。
「お前は死なねぇ。死ぬのは俺だけだ・・・やから・・・安心して戦え。基本通りにな。」
俺の胸に拳を当てる。
俺は、その部分が妙に熱くなるのを感じた。
「・・・はい。」
俺はそれだけしか言えなかった。
俺たちは別々のルートで作戦開始位置に到着した。
作戦の合図は2つ。
1つは敵大将の首を取るためにあらかじめ決めておいた場所に大将が出現すること。
もう1つは敵基地から銃声が響き渡った時だ。
俺は1発撃つ度に場所を移動することになっている。
これは狙撃をするときに大変必要なことだ。
同じ場所に止まって狙撃をしていては、時期に気づ枯れて俺が撃たれて死ぬ。
また、違う方向から攻撃したっほうが敵の錯乱される効果が‘得られるためだ。
俺は狙撃場所の予備位置を頭の中で辿っていつでも動けるようにした。
呼吸は落ち着いている。
脈もちょうどいいくらいに早くなっている。
人のポテンシャルが最も上がっているときは、程よい心拍数と落ち着いた呼吸、冷静な頭の時だ。
俺は、その状態を維持することに専念した。
「・・・ふう・・・」
呼吸の音がよく聞こえる。
俺は静かにうつ伏せの状態からスコープで敵の位置を見る。
2時間ほど経った。
じっとその場所に留まらないといけないので、小便は垂れ流していた。
顔に虫がついても気にならなくなり、森と同化していた。
ずっと見ていた場所の扉が開いた。
そこにはタバコを吸いにきた敵の大将がいた。
「・・・・」
俺はスコープの真ん中に敵の頭を持ってくる。
敵の大将であることを敵の階級で確認する。
確かに大将であった。
ゆっくりと引き金を引く。
呼吸は安定している。
気候も悪くない。
敵もはっきりと見えている。
俺は瞬きを忘れ、ずっと敵を見る。
そして、
バンッ!!
静寂の世界に大きな音が響いた。
俺は弾が当たる瞬間まで目を開いたままだ。
敵は首から上を無くしていた。
俺の弾は敵の首の中央に当たったみたいだ。
「・・・ッ!!!」
俺は数秒間放心状態になった。
「・・・場所移動しないと。」
俺は低い姿勢のまま速やかに後ろに後退した。
基地中が騒がしくなった。
銃声も聞こえてきた。
多分、村井2曹が頑張って戦っているのだろう。
手榴弾の音も聞こえてきた。
俺は次の射撃位置に到着して敵方向を見る。
すぐに射撃姿勢を取って敵の頭めがけて撃つ。
俺の所からちょうど村井2曹が暴れているのが確認できる。
援護射撃をして村井2曹を守る。
戦車や装甲車、戦闘機を数機壊して回っていたところで、敵に囲まれてしまった。
俺は、一箇所に止まって敵を撃つ。
もう、移動する時間がなかった。
「・・・早まるなよ・・」
俺は、5発ほど撃った。
そのうち3発は敵を撃ち抜いたが、それでも間に合わなかった。
それでも、効果はあった。
敵が右往左往し始めた。
「ちょっとした時間稼ぎだな・・・急がないと。」
ここまで撃てば場所がバレたしまっているだろう。
なら、次の場所に移動しないといけない。
まだ、基地から爆発音が聞こえてくる。
村井2曹は、まだ戦っているのだろう。
俺は新しい射撃位置に到着すると射撃姿勢をとる。
「エロイムエッサイム、エロイムエッサイム・・・我は、求め、訴えたり。」
俺は、自分の世界に入る。
また、村井2曹が危機的状況に陥っていた。
俺は、もう一度同じことをしようとした。
「・・・まず、1人。」
俺は引き金を引く。
「・・・もう1人。」
引き金を引く。
「・・・もう1人。」
無心で引き金を引いた。
でも、世の中頑張ってもどうにもならないことがあるもので。
村井2曹は死んだ。
「やってやるか。」
俺は敵基地の中で身を潜めていた。
静かに的に見つからないようなところにいた。
まあ、下水のマンホールの中なんだけどな。
たまに俺の真下から音が聞こえてくる。
多分、近くのトイレで糞をした奴がいるのだろう。
ふざけやがって。
マジで汚い。
俺も、風呂に入ってないから汚いんだけどな。
もう、獣臭が漂ってるんだよな。
「あの小僧、うまくやるんやろうな。」
俺は、じっとしていた。
まあ、うまくやってもらわんとな。
「さて、俺の仕事をしねえとな。」
マンホールの中の中間の位置で壁にもたれ掛かるように中にいた。
自分の装備を一式確認する。
装備を見るだけで嫌気がする。
「よくこんな装備で戦えって国は言ってきたよな。」
でも、あるだけマシと考えるようにする。
普通はあるもんだけど。
そうしていると、外から銃声が聞こえた。
「・・・やったか。」
俺は音を出さないようにマンホールを開けると、顔と銃だけを出してまわりを見渡す。
数名の敵が確認できた。
俺はすぐに銃口を向けて敵を撃った。
バババババッ!!
ちょうど影になってて、俺の姿が見えなかったのがよかったのか、敵からの弾を貰わずに済んだ。
敵3名を殺したらすぐに穴から抜け出す。
ここに突撃する前に、敵の重要な装備が置いてある場所は確認したからそこに向かった。
暗闇の中を体を小さくして走り抜けた。
敵が視界に入ると全て撃ち殺していった。
敵からの射撃に見舞われた。
コンテナの影に隠れる。
「ファック!」
米兵がよく言う言葉を俺も言う。
ここにきて、この言葉を使う感覚がやったわかった気がした。
数発、この戦場とは違う所から銃声が聞こえてきた。
「・・・ナイス援護射撃。」
俺は身を半分ほど出して残りを殺す。
「よっしゃ!壊し放題や!」
格納庫に到着したら、そこには山のような装備が置いてあった。
俺は戦車に地雷をつけ爆破、手榴弾を投げつけ爆破、戦闘機のコックピットに手榴弾をつけて回った。
「ふふふ、乗ったら死ぬぜ。」
俺はすぐに次の場所に向かう。
外に出ようとしたところで敵からの射撃を貰った。
俺は左肩に食らってしまった。
「・・・くっそ・・・」
扉を閉めて倉庫の中で腰を下ろしてしまう。
外からは叫び声が聞こえる。
多分、援護射撃を食らっているのだろう。
「・・・あいつ、やる気ないような顔をしとるくせに、仕事熱心やな・・・」
俺は最後の踏ん張りを出した。
目の前にはガソリンの山。
「・・・最後の大仕事やな。」
ガソリンの蓋を外して辺りに転がす。
俺はガソリンが積んであるタンクの上に座る。
手榴弾をありったけ体に巻き付ける。
口にタバコを咥えて火をつける。
ガソリンの上でタバコとか・・・。
「最高のロマンやな。」
扉が強制的に開かれるが、俺が仕掛けていた手榴弾が爆発する。
外からは悲鳴が聞こえるが、すぐに立ち直って倉庫の中に入って展開する。
「・・・やあ、初めまして。・・・ほんじゃ、さいなら。」
俺は、蓋を開けたままのドラム缶の中にタバコを落とす。
じゃあな、先に行っとる。
大爆発した。
俺は、爆発とあたりに広がっている炎を見た。
「・・・・綺麗だ。」
その一言が出てきた。
俺は、その場に腰を下ろした。
「・・・終わっちまったな。」
水筒に入れておいた酒を出す。
「乾杯。」
一気に飲み干す。
この世で一番美味い酒を飲んだ。
「・・・これが、俺の戦争だ。」
自分に酔いしれた。
終わってしまうと時間の流れが早い気がする。
俺は思い返していた。
戦争に参加して、ここまできたことを、思い返した。
思い返して、思い出した。
「・・・嫁が、待ってたな。」
俺はスッとその場に立ち上がる。
山の中に姿を消した。
その場所に残ったのは、狙撃銃と弾薬だけだった。
その後の話をしよう。
俺は、森の中を彷徨い続けた。
もう何ヶ月森の中にいたかはわからない。
何度も死のうと思った。
けど、死ぬ勇気もなくて、死ななかった。
銃と弾薬は邪魔になると思って置いていったのが間違いだと思った。。
おかげで食料不足でやばかった。
まあ、それでも、そういう環境に慣れると言うもので、すぐに食料はどうにかなった。
木の根とか意外と栄養があってよかった。
サバイバルナイフは持ち歩いていたので、木の棒に結んで魚を刺して、焼いて食べていた。
ちょっとした小屋を見つけてはそこで寝泊まりした。
雨風が凌げるだけでもありがたかった。
何とか人のいるところまで着いた時は泣いた。
もう、何が何だかわからなくなって泣いた。
それから数日間、そこの村に滞在して、情報収集に勤しんだ。
寝床と飯に困らなかったことがよかった。
この時、戦争の状況もわかった。
意外なことに九州一帯は取り返して、現在沖縄奪還をしている最中のようだ。
まあ、今となっては関係のないことだ。
でも、こっちまで進行していなかったのはとてもよかった。
「おせわになりました。」
俺はそう言って村を後にした。
情報が手に入ったからだ。
俺は大分に行った。
そこに、ある程度の情報掲示板があるらしい。
そこにはこう書いてあった。
『各人、自宅に帰ることを許可する』
なるほど、つまり実家に帰ればいいわけだ。
俺は、少しのお金を手に入れ、電車で家まで帰った。
電車の中は混みまくっていた。
それが嫌だとは思わなかった。
服は村のお古をくれたのでそれを着ている。
一見、軍人だとは思わないだろう。
家に着いた。
家は無事だった。
人の声も聞こえる。
「ねえ、そこどいてよ。掃除ができない!」
「はいはい。わかったよ。」
「ねえ、私のスマホどこいったか知らない?」
「知らん。」
隣の家からは愛おしい声が聞こえた。
「ほら、安静にしてないといけないから。大人しくしてなさい。」
「無理よ!ちょっとくらい体を動かさないと元気な子が生まれないじゃない!」
うーん。子供か。誰の子供だろう。
まあ、・・・声の主敵に・・・俺かな。
「ちょっとびっくりだよ」
俺は、家のドアを開けた。
「ただいま。」
晩餐と言ってもまだ日が昇っている午後3時なのだが。
この日の夜に2人で奇襲をかける計画を立てていた。
武器はそこそこの量になった。
村井2曹たちが持っていた多目的無反動砲に対人ライフル(ベテランになると2kmまでなら当てられるらしい)、手榴弾といったところだ。
「・・・あの、本当にいいんですか?」
俺は村井2曹に聞いた。
「何が?」
「ほぼ無謀な作戦に参加してくれてです。」
村井2曹は持ってきていた日本酒を水筒のキャップに入れて一息に飲む。
「俺がなんで酒なんて持ってきているか・・・お前ならわかるやろ?」
俺の方を睨むように、されど、同志を見るような目で俺を見る。
「わかりますよ・・・少し、確認したかっただけです。」
俺がそういうと、真顔で俺の方に酒を差し出す。
俺も水筒のチャップを差し出し酒を入れてもらう。
「まあ、なんだ。俺も覚悟はしとるからな・・・・こうなるかもなーと思うとった。お前は、なんでこんなことをしようと思うたんや?」
「・・・」
俺は、もらった酒を一息に飲み干す。
「・・・家族がいるんです。・・・俺の両親に兄弟、そして俺の嫁。なら、やるしかないじゃないですか。」
俺は、空になったキャップを見る。
「守りたいんです・・・何がなんでも。」
村井2曹は持ってきた酒を一気に飲み干す。
「ああ!俺、もう少し欲しかったのに。」
「うるせ。ガキにはまだ早いわ!」
村井2曹は俺にそう言った。
「作戦の変更が必要やな。」
「え?なぜ?」
「お前みたいなやつを突撃させるわけにはいかん。」
村井2曹は少し怒った感じで俺に言う。
俺もムキになって言い返してしまう。
「俺が失敗するとでも思っているのですか?それとも、情に流されましたか?俺はできます。家族とも別れをすませています。俺がやります。」
「馬鹿野郎!」
村井2曹は酒瓶を地面に叩きつける。
「いいか!お前には、お前を待っている家族がおる。嫁がおる。それやのに、お前は死にに行こうとしとる。これがどう言うことかわかるんか?お前は、家族を裏切るんやぞ!それはな・・・それは、人として一番しちゃいかんんことや!生き残って、また会える可能性を捨てるんやない!歯を食いしばれ!」
俺は反射的に歯を食いしばった。
バチィィィン!
すごい音が洞窟内に広がった。
「いいか。お前は狙撃をやれ。俺が基地に突っ込む。ほんで、仕事を終えたら即、離脱しろ。」
「・・・・わかりました。」
村井2曹は再度戦闘準備をしだす。
俺も、それに続いて準備をした。
太陽は傾き始め、空は真っ赤に染まった。
俺と村井2曹はゆっくりと敵基地に近づいていき、狙撃場所の確認と侵入経路の確認をした。
「じゃあ、ここからは別行動やな。」
「はい。」
「まあ・・・短い間やったけど。お前が頼りになるなんは喋ってわかった。」
村井2曹は俺にそういうと、笑顔で俺の方を見た。
「お前は死なねぇ。死ぬのは俺だけだ・・・やから・・・安心して戦え。基本通りにな。」
俺の胸に拳を当てる。
俺は、その部分が妙に熱くなるのを感じた。
「・・・はい。」
俺はそれだけしか言えなかった。
俺たちは別々のルートで作戦開始位置に到着した。
作戦の合図は2つ。
1つは敵大将の首を取るためにあらかじめ決めておいた場所に大将が出現すること。
もう1つは敵基地から銃声が響き渡った時だ。
俺は1発撃つ度に場所を移動することになっている。
これは狙撃をするときに大変必要なことだ。
同じ場所に止まって狙撃をしていては、時期に気づ枯れて俺が撃たれて死ぬ。
また、違う方向から攻撃したっほうが敵の錯乱される効果が‘得られるためだ。
俺は狙撃場所の予備位置を頭の中で辿っていつでも動けるようにした。
呼吸は落ち着いている。
脈もちょうどいいくらいに早くなっている。
人のポテンシャルが最も上がっているときは、程よい心拍数と落ち着いた呼吸、冷静な頭の時だ。
俺は、その状態を維持することに専念した。
「・・・ふう・・・」
呼吸の音がよく聞こえる。
俺は静かにうつ伏せの状態からスコープで敵の位置を見る。
2時間ほど経った。
じっとその場所に留まらないといけないので、小便は垂れ流していた。
顔に虫がついても気にならなくなり、森と同化していた。
ずっと見ていた場所の扉が開いた。
そこにはタバコを吸いにきた敵の大将がいた。
「・・・・」
俺はスコープの真ん中に敵の頭を持ってくる。
敵の大将であることを敵の階級で確認する。
確かに大将であった。
ゆっくりと引き金を引く。
呼吸は安定している。
気候も悪くない。
敵もはっきりと見えている。
俺は瞬きを忘れ、ずっと敵を見る。
そして、
バンッ!!
静寂の世界に大きな音が響いた。
俺は弾が当たる瞬間まで目を開いたままだ。
敵は首から上を無くしていた。
俺の弾は敵の首の中央に当たったみたいだ。
「・・・ッ!!!」
俺は数秒間放心状態になった。
「・・・場所移動しないと。」
俺は低い姿勢のまま速やかに後ろに後退した。
基地中が騒がしくなった。
銃声も聞こえてきた。
多分、村井2曹が頑張って戦っているのだろう。
手榴弾の音も聞こえてきた。
俺は次の射撃位置に到着して敵方向を見る。
すぐに射撃姿勢を取って敵の頭めがけて撃つ。
俺の所からちょうど村井2曹が暴れているのが確認できる。
援護射撃をして村井2曹を守る。
戦車や装甲車、戦闘機を数機壊して回っていたところで、敵に囲まれてしまった。
俺は、一箇所に止まって敵を撃つ。
もう、移動する時間がなかった。
「・・・早まるなよ・・」
俺は、5発ほど撃った。
そのうち3発は敵を撃ち抜いたが、それでも間に合わなかった。
それでも、効果はあった。
敵が右往左往し始めた。
「ちょっとした時間稼ぎだな・・・急がないと。」
ここまで撃てば場所がバレたしまっているだろう。
なら、次の場所に移動しないといけない。
まだ、基地から爆発音が聞こえてくる。
村井2曹は、まだ戦っているのだろう。
俺は新しい射撃位置に到着すると射撃姿勢をとる。
「エロイムエッサイム、エロイムエッサイム・・・我は、求め、訴えたり。」
俺は、自分の世界に入る。
また、村井2曹が危機的状況に陥っていた。
俺は、もう一度同じことをしようとした。
「・・・まず、1人。」
俺は引き金を引く。
「・・・もう1人。」
引き金を引く。
「・・・もう1人。」
無心で引き金を引いた。
でも、世の中頑張ってもどうにもならないことがあるもので。
村井2曹は死んだ。
「やってやるか。」
俺は敵基地の中で身を潜めていた。
静かに的に見つからないようなところにいた。
まあ、下水のマンホールの中なんだけどな。
たまに俺の真下から音が聞こえてくる。
多分、近くのトイレで糞をした奴がいるのだろう。
ふざけやがって。
マジで汚い。
俺も、風呂に入ってないから汚いんだけどな。
もう、獣臭が漂ってるんだよな。
「あの小僧、うまくやるんやろうな。」
俺は、じっとしていた。
まあ、うまくやってもらわんとな。
「さて、俺の仕事をしねえとな。」
マンホールの中の中間の位置で壁にもたれ掛かるように中にいた。
自分の装備を一式確認する。
装備を見るだけで嫌気がする。
「よくこんな装備で戦えって国は言ってきたよな。」
でも、あるだけマシと考えるようにする。
普通はあるもんだけど。
そうしていると、外から銃声が聞こえた。
「・・・やったか。」
俺は音を出さないようにマンホールを開けると、顔と銃だけを出してまわりを見渡す。
数名の敵が確認できた。
俺はすぐに銃口を向けて敵を撃った。
バババババッ!!
ちょうど影になってて、俺の姿が見えなかったのがよかったのか、敵からの弾を貰わずに済んだ。
敵3名を殺したらすぐに穴から抜け出す。
ここに突撃する前に、敵の重要な装備が置いてある場所は確認したからそこに向かった。
暗闇の中を体を小さくして走り抜けた。
敵が視界に入ると全て撃ち殺していった。
敵からの射撃に見舞われた。
コンテナの影に隠れる。
「ファック!」
米兵がよく言う言葉を俺も言う。
ここにきて、この言葉を使う感覚がやったわかった気がした。
数発、この戦場とは違う所から銃声が聞こえてきた。
「・・・ナイス援護射撃。」
俺は身を半分ほど出して残りを殺す。
「よっしゃ!壊し放題や!」
格納庫に到着したら、そこには山のような装備が置いてあった。
俺は戦車に地雷をつけ爆破、手榴弾を投げつけ爆破、戦闘機のコックピットに手榴弾をつけて回った。
「ふふふ、乗ったら死ぬぜ。」
俺はすぐに次の場所に向かう。
外に出ようとしたところで敵からの射撃を貰った。
俺は左肩に食らってしまった。
「・・・くっそ・・・」
扉を閉めて倉庫の中で腰を下ろしてしまう。
外からは叫び声が聞こえる。
多分、援護射撃を食らっているのだろう。
「・・・あいつ、やる気ないような顔をしとるくせに、仕事熱心やな・・・」
俺は最後の踏ん張りを出した。
目の前にはガソリンの山。
「・・・最後の大仕事やな。」
ガソリンの蓋を外して辺りに転がす。
俺はガソリンが積んであるタンクの上に座る。
手榴弾をありったけ体に巻き付ける。
口にタバコを咥えて火をつける。
ガソリンの上でタバコとか・・・。
「最高のロマンやな。」
扉が強制的に開かれるが、俺が仕掛けていた手榴弾が爆発する。
外からは悲鳴が聞こえるが、すぐに立ち直って倉庫の中に入って展開する。
「・・・やあ、初めまして。・・・ほんじゃ、さいなら。」
俺は、蓋を開けたままのドラム缶の中にタバコを落とす。
じゃあな、先に行っとる。
大爆発した。
俺は、爆発とあたりに広がっている炎を見た。
「・・・・綺麗だ。」
その一言が出てきた。
俺は、その場に腰を下ろした。
「・・・終わっちまったな。」
水筒に入れておいた酒を出す。
「乾杯。」
一気に飲み干す。
この世で一番美味い酒を飲んだ。
「・・・これが、俺の戦争だ。」
自分に酔いしれた。
終わってしまうと時間の流れが早い気がする。
俺は思い返していた。
戦争に参加して、ここまできたことを、思い返した。
思い返して、思い出した。
「・・・嫁が、待ってたな。」
俺はスッとその場に立ち上がる。
山の中に姿を消した。
その場所に残ったのは、狙撃銃と弾薬だけだった。
その後の話をしよう。
俺は、森の中を彷徨い続けた。
もう何ヶ月森の中にいたかはわからない。
何度も死のうと思った。
けど、死ぬ勇気もなくて、死ななかった。
銃と弾薬は邪魔になると思って置いていったのが間違いだと思った。。
おかげで食料不足でやばかった。
まあ、それでも、そういう環境に慣れると言うもので、すぐに食料はどうにかなった。
木の根とか意外と栄養があってよかった。
サバイバルナイフは持ち歩いていたので、木の棒に結んで魚を刺して、焼いて食べていた。
ちょっとした小屋を見つけてはそこで寝泊まりした。
雨風が凌げるだけでもありがたかった。
何とか人のいるところまで着いた時は泣いた。
もう、何が何だかわからなくなって泣いた。
それから数日間、そこの村に滞在して、情報収集に勤しんだ。
寝床と飯に困らなかったことがよかった。
この時、戦争の状況もわかった。
意外なことに九州一帯は取り返して、現在沖縄奪還をしている最中のようだ。
まあ、今となっては関係のないことだ。
でも、こっちまで進行していなかったのはとてもよかった。
「おせわになりました。」
俺はそう言って村を後にした。
情報が手に入ったからだ。
俺は大分に行った。
そこに、ある程度の情報掲示板があるらしい。
そこにはこう書いてあった。
『各人、自宅に帰ることを許可する』
なるほど、つまり実家に帰ればいいわけだ。
俺は、少しのお金を手に入れ、電車で家まで帰った。
電車の中は混みまくっていた。
それが嫌だとは思わなかった。
服は村のお古をくれたのでそれを着ている。
一見、軍人だとは思わないだろう。
家に着いた。
家は無事だった。
人の声も聞こえる。
「ねえ、そこどいてよ。掃除ができない!」
「はいはい。わかったよ。」
「ねえ、私のスマホどこいったか知らない?」
「知らん。」
隣の家からは愛おしい声が聞こえた。
「ほら、安静にしてないといけないから。大人しくしてなさい。」
「無理よ!ちょっとくらい体を動かさないと元気な子が生まれないじゃない!」
うーん。子供か。誰の子供だろう。
まあ、・・・声の主敵に・・・俺かな。
「ちょっとびっくりだよ」
俺は、家のドアを開けた。
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