あなたの愛が正しいわ

来須みかん

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【よりを戻して仲良く過ごす、そんな夫婦が見たいあなたへ】

05 その後の私たち

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 デイヴィスと約束を交わしてから、あわただしい日々がすぎていった。

 あれからいろんなことがあったけど、私は私がやりたいことをして、私らしく生きている。

 私がデザインしたドレスを売る店は、とても好評で二店舗目を出す話が進んでいた。

 女性を支援する体制も少しずつ整えられていき、今後は、もっと大きな組織や行政を巻き込んでいくことになるだろう。

 そんな私をデイヴィスは、いつも側で支えてくれた。

 あまり信用していなかった愛人の件も、デイヴィスの周りにそれらしい女性の影はみえなかった。

 今日は、約束を交わした日から、ちょうど一年後だった。

 私は、いつものようにデイヴィスの寝室を訪れた。

 デイヴィスはワイン片手に、優しい笑みを浮かべて部屋に招き入れてくれる。

 私たちは、いつものようにテーブルをはさんで向かい合った。

「約束した日から、今日で一年ね」
「うん、そうだね」

 なぜかデイヴィスが私から視線をそらしたので、私は嫌な予感がした。

「ろ、ローザ、その件なんだけど、ずっと君に言わないといけないと思っていたことがあって……」

 まるで恋する乙女のように頬を赤く染める彼の表情に、私の身体は冷たくなっていく。

 女性の影はなかったけど、それは私が見落としていただけで、結局はそういうことらしい。

「で、何?」

 自分でも驚くくらい、私の声は冷たかった。

「実は、その、僕は……」

 私がため息をつくと、言いよどんでいたデイヴィスは、覚悟を決めたようにつづきの言葉を口にする。

「実は、僕、君が酔って眠ったあとに、いろいろしていたんだ!」
「そうなの……」

 私は、もうすべてがどうでも良くなっていた。デイヴィスの言葉が、耳に入ってこない。

「無防備な君がかわいくて、がまんできなくて! 抱きしめたり、キスしたり……本当にごめん! あっでも、子どもができるようなことはしていないから! それだけは信じてほしい」

「……は?」

 この人は、何を言っているのかしら?

 私がじっとデイヴィスを見つめると、デイヴィスは叱られた子犬のような顔をしていた。

「ちょっと待って。いったいなんの話なの? あなたに愛人がいるって話じゃないの?」
「愛人なんて、いないよ!?」

 驚くデイヴィスに、私のほうが驚いてしまう。

「ん? え? さっきの話、もう一度、私に説明してくれる?」

 これでもかと顔を赤くしたデイヴィスは、「だから……酔って眠った君に、いろいろしていました。抱きしめたり、キスしたり……本当にすみませんでした」と深く頭を下げた。


「愛人は?」
「いないって!?」

 デイヴィスのその言葉を聞いて、『嬉しい』と思った私がいる。

「そう、良かったわ」

 私が微笑んだのを見たデイヴィスがホッと肩をなでおろした。

「良かったよ……。これで、ゆるしてもらえなかったら、一年前に君に言われたとおり、僕は泣くところだった……」

 私はクスクスと笑いながら、立ち上がると座っているデイヴィスのとなりに立った。

「私、今のあなたのこと、好きよ」

 出会ったころのような盲目的な愛ではないけれど、たしかに今の私たちの間にも、愛とよべる何かはある。

「ローザ……」

 そうつぶやいたデイヴィスは、理由は違ったけど、一年前に予言したとおりに私の前で泣きだした。
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