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【よりを戻して仲良く過ごす、そんな夫婦が見たいあなたへ】
03 最悪の朝
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のどの渇きで目が覚めた。昨日は、公爵夫人マチルダに進めてもらったワインがおいしくて、ついつい飲みすぎてしまった。
水を飲みたくて重い身体をむりやり起こすと、頭の奥がズキリと痛む。
メイドを呼ぼうとして、いつも枕元に置いているベルに手をのばしたが、そこにベルはなかった。
違和感を覚えてあたりを見回す。
「……え? こ、ここはどこ?」
私は私の寝室ではない、見知らぬベッドの上にいた。
戸惑う私の横の毛布のかたまりから「うーん」と男性の声がする。
「ひっ!?」
あわてて自分の服を確認すると、昨日着ていたドレスをそのまま着ていた。ドレスはぐちゃぐちゃになってしまっているが、ぬいで乱れた形跡はない。
酔った勢いで、見知らぬ男性と一夜をすごしてしまうという最悪の事態はおこっていなさそうだった。
私がおそるおそる包まれた毛布をめくると、そこには夫のデイヴィスがいた。ハァと安堵のため息をつく。よくみれば、ここはデイヴィスの寝室だった。
うっすら目を開けたデイヴィスは「ローザぁ」と言いながら抱きついてこようとする。
「デイヴィス、寝ぼけないで」
私がデイヴィスの手を払うと、ようやく目が覚めたようだ。
「ろ、ローザ!? お、おはよう……」
起き上がったデイヴィスは、なぜか視線をさまよわせている。私はズキズキと痛む頭を手でおさえた。
「ローザ、頭がいたいの?」
「ええ、少し飲みすぎてしまって……」
「二日酔いだね。良く効く薬があるよ」
デイヴィスは、ベッドから下りると引き出しから薬を取りだし、水と一緒に持ってきてくれた。
「……ありがとう」
大人しく薬を受け取りのみこむ。のどがうるおって、気分が少しよくなった。
「ねぇ、デイヴィス。ここ、あなたの部屋よね? 私はどうしてここにいるの?」
「え!? いや、あの……」
言いよどむデイヴィスを見て、私は「もしかして……」とつぶやく。
「酔った私が、あなたの部屋におしかけたの?」
信じられないけど、それ以外考えられない。
「うそ……ごめんなさい。私ったら……またあなたを追いかけて、迷惑をかけて……」
これはあきらかに契約違反だった。
「契約を違反してしまったから、私が違約金を払うわ」
うつむきながら私の話を聞いていたデイヴィスが、覚悟を決めたように勢いよく顔を上げた。
「ちがうんだ、ごめん! その、酔ったローザがかわいすぎて! エントランスホールで眠ってしまった君を僕が部屋に連れ込んだんだ」
「え?」
私の声から戸惑いを聞き取ったのか、デイヴィスは「何もしていない! ただ、一緒のベッドで寝ただけだよ!」とあわてている。
「デイヴィス、何を考えているの? これは契約違反よ?」
「わかっているよ、違約金は払うから……」
「そういう問題じゃ……」
ないと言いたいけど、契約書的には、『違反をすれば相手に違約金を払って解決すること』になっている。だから、違約金を払うと言っている相手を、これ以上責めるわけにはいかない。それに、今回のことは、私が記憶をなくすくらいお酒を飲んでしまったことが原因だ。
「……わかったわ。今回は私も悪かったから、お互いさまということにしましょう。こんなことになるなら、もう、お酒は飲まないわ」
私が反省していると、デイヴィスが「公爵夫人はワイン好きじゃなかったっけ?」と聞いてくる。
「そうなの、マチルダ様はワインが大好きで……」
「それなら、ローザも多少飲めたほうが良くない? お酒は慣れもあるけど、自分が飲める量がわかったら、失敗することはないよ」
「でも……」
ためらう私にデイヴィスは「僕が教えてあげるよ!」と前のめりに提案した。
「教えるって?」
「お酒の飲み方をだよ! 僕とならローザが酔って寝てしまっても問題ないし、練習相手にちょうど良くないかな!?」
やけに瞳を輝かせるデイヴィスに、私は「少し考えてみるわ」と伝えてデイヴィスの部屋をあとにした。
屋敷内でジョンに出会ったときに「もし、また私が酔って帰って自室以外で眠ってしまったら、必ず起こしてね。私も、二度と昨日のようなことはないように気をつけるけど、デイヴィスに私を任せないで」と注意しておく。
ジョンは「大変申し訳ありません」と頭を下げた。
私としては、お酒を飲む練習はしたいけど、必要以上にデイヴィスとかかわりたくない。離婚はしないと決めたけど、彼を信じて愛するのは、それとはまた別の話だ。
しかし、数日後、マチルダからの手紙で、私は考えを変えるしかなくなった。
手紙には『あなたと飲むワインがとても楽しかったから、今後はお茶会ではなく、ワイン会にしましょう。そのときに、あなたがやりたいと言っていたことに使える人材を紹介するわ』と書かれている。
私はため息をつきながら手紙を閉じた。ワイン会は嫌じゃないけど、マチルダにつき合えるほどお酒に強くないと前回のときにわかってしまった。
自分の飲める量を知っておかないと、これから先、とんでもない失敗をしてしまうかもしれない。
デイヴィスに飲む練習相手になってもらうのは抵抗がある。でも、伯爵家の女主人として、無理やり使用人につきあわせて酔っぱらった姿を何度も見せるほうが問題だ。
私は仕方なくメイドを呼ぶと、デイヴィスの執務室に行くことを伝えた。
最近では、デイヴィスも急に部屋に押しかけてこなくなった。私たちは、お互いを訪問するときは、できるだけ連絡をしてから訪れるようにしている。
しばらくしてから、私が執務室へ向かうと、わざわざデイヴィスが扉を開けて招き入れてくれた。
「いっらっしゃい、ローザ! 待っていたよ、今日はどうしたの?」
「あなたにお願いがあって……」
デイヴィスの青い瞳が驚きで大きく見開く。まだ内容も伝えていないのに、「もちろんいいよ、僕に任せて!」とすぐに返事が返ってきた。
「デイヴィス……内容を聞いてから返事をしてね。この前に言っていた、お酒を飲む練習をしたいの。つきあってくれる?」
嬉しそうに頬を赤くしたデイビィスは「もちろんいいよ、僕に任せて!」と同じ返事をくり返した。
水を飲みたくて重い身体をむりやり起こすと、頭の奥がズキリと痛む。
メイドを呼ぼうとして、いつも枕元に置いているベルに手をのばしたが、そこにベルはなかった。
違和感を覚えてあたりを見回す。
「……え? こ、ここはどこ?」
私は私の寝室ではない、見知らぬベッドの上にいた。
戸惑う私の横の毛布のかたまりから「うーん」と男性の声がする。
「ひっ!?」
あわてて自分の服を確認すると、昨日着ていたドレスをそのまま着ていた。ドレスはぐちゃぐちゃになってしまっているが、ぬいで乱れた形跡はない。
酔った勢いで、見知らぬ男性と一夜をすごしてしまうという最悪の事態はおこっていなさそうだった。
私がおそるおそる包まれた毛布をめくると、そこには夫のデイヴィスがいた。ハァと安堵のため息をつく。よくみれば、ここはデイヴィスの寝室だった。
うっすら目を開けたデイヴィスは「ローザぁ」と言いながら抱きついてこようとする。
「デイヴィス、寝ぼけないで」
私がデイヴィスの手を払うと、ようやく目が覚めたようだ。
「ろ、ローザ!? お、おはよう……」
起き上がったデイヴィスは、なぜか視線をさまよわせている。私はズキズキと痛む頭を手でおさえた。
「ローザ、頭がいたいの?」
「ええ、少し飲みすぎてしまって……」
「二日酔いだね。良く効く薬があるよ」
デイヴィスは、ベッドから下りると引き出しから薬を取りだし、水と一緒に持ってきてくれた。
「……ありがとう」
大人しく薬を受け取りのみこむ。のどがうるおって、気分が少しよくなった。
「ねぇ、デイヴィス。ここ、あなたの部屋よね? 私はどうしてここにいるの?」
「え!? いや、あの……」
言いよどむデイヴィスを見て、私は「もしかして……」とつぶやく。
「酔った私が、あなたの部屋におしかけたの?」
信じられないけど、それ以外考えられない。
「うそ……ごめんなさい。私ったら……またあなたを追いかけて、迷惑をかけて……」
これはあきらかに契約違反だった。
「契約を違反してしまったから、私が違約金を払うわ」
うつむきながら私の話を聞いていたデイヴィスが、覚悟を決めたように勢いよく顔を上げた。
「ちがうんだ、ごめん! その、酔ったローザがかわいすぎて! エントランスホールで眠ってしまった君を僕が部屋に連れ込んだんだ」
「え?」
私の声から戸惑いを聞き取ったのか、デイヴィスは「何もしていない! ただ、一緒のベッドで寝ただけだよ!」とあわてている。
「デイヴィス、何を考えているの? これは契約違反よ?」
「わかっているよ、違約金は払うから……」
「そういう問題じゃ……」
ないと言いたいけど、契約書的には、『違反をすれば相手に違約金を払って解決すること』になっている。だから、違約金を払うと言っている相手を、これ以上責めるわけにはいかない。それに、今回のことは、私が記憶をなくすくらいお酒を飲んでしまったことが原因だ。
「……わかったわ。今回は私も悪かったから、お互いさまということにしましょう。こんなことになるなら、もう、お酒は飲まないわ」
私が反省していると、デイヴィスが「公爵夫人はワイン好きじゃなかったっけ?」と聞いてくる。
「そうなの、マチルダ様はワインが大好きで……」
「それなら、ローザも多少飲めたほうが良くない? お酒は慣れもあるけど、自分が飲める量がわかったら、失敗することはないよ」
「でも……」
ためらう私にデイヴィスは「僕が教えてあげるよ!」と前のめりに提案した。
「教えるって?」
「お酒の飲み方をだよ! 僕とならローザが酔って寝てしまっても問題ないし、練習相手にちょうど良くないかな!?」
やけに瞳を輝かせるデイヴィスに、私は「少し考えてみるわ」と伝えてデイヴィスの部屋をあとにした。
屋敷内でジョンに出会ったときに「もし、また私が酔って帰って自室以外で眠ってしまったら、必ず起こしてね。私も、二度と昨日のようなことはないように気をつけるけど、デイヴィスに私を任せないで」と注意しておく。
ジョンは「大変申し訳ありません」と頭を下げた。
私としては、お酒を飲む練習はしたいけど、必要以上にデイヴィスとかかわりたくない。離婚はしないと決めたけど、彼を信じて愛するのは、それとはまた別の話だ。
しかし、数日後、マチルダからの手紙で、私は考えを変えるしかなくなった。
手紙には『あなたと飲むワインがとても楽しかったから、今後はお茶会ではなく、ワイン会にしましょう。そのときに、あなたがやりたいと言っていたことに使える人材を紹介するわ』と書かれている。
私はため息をつきながら手紙を閉じた。ワイン会は嫌じゃないけど、マチルダにつき合えるほどお酒に強くないと前回のときにわかってしまった。
自分の飲める量を知っておかないと、これから先、とんでもない失敗をしてしまうかもしれない。
デイヴィスに飲む練習相手になってもらうのは抵抗がある。でも、伯爵家の女主人として、無理やり使用人につきあわせて酔っぱらった姿を何度も見せるほうが問題だ。
私は仕方なくメイドを呼ぶと、デイヴィスの執務室に行くことを伝えた。
最近では、デイヴィスも急に部屋に押しかけてこなくなった。私たちは、お互いを訪問するときは、できるだけ連絡をしてから訪れるようにしている。
しばらくしてから、私が執務室へ向かうと、わざわざデイヴィスが扉を開けて招き入れてくれた。
「いっらっしゃい、ローザ! 待っていたよ、今日はどうしたの?」
「あなたにお願いがあって……」
デイヴィスの青い瞳が驚きで大きく見開く。まだ内容も伝えていないのに、「もちろんいいよ、僕に任せて!」とすぐに返事が返ってきた。
「デイヴィス……内容を聞いてから返事をしてね。この前に言っていた、お酒を飲む練習をしたいの。つきあってくれる?」
嬉しそうに頬を赤くしたデイビィスは「もちろんいいよ、僕に任せて!」と同じ返事をくり返した。
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