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肆章
仏の顔も
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国家安全保障庁庁舎内。
セリザワが庁舎内の廊下を少し焦り気味で歩く。
すると前からナヤが歩いてきた。
もうすぐですれ違うというところでセリザワが歩みを止める。
ナヤも少し追い抜いた後、歩みを止めた。
少しの間、お互いその場に止まった後セリザワが再び焦った様子で歩き始める。
ナヤは止まったままフッ、と不気味にニヤけた。
コンコンコン
と、セリザワが防衛部長官室のドアをノックする。
「司令本部長官、セリザワです。」
「入れ。」
ドアの奥からトウドウの返事が聞こえる。
「失礼します。」
そう言ってセリザワは重々しいドアをゆっくりと開き、部屋に入る。
長官は椅子をセリザワの方へ向けて振り向く。
「先ほどナヤ君から、被験者を派遣したが制圧失敗したと報告を受けたところだ。君もか。」
「被験者。」
セリザワは何の話か分からず、自分の話を忘れて長官に問う。
「君は知らなかったか。まあいい。話はなんだ。」
セリザワはこの前隊員たちが話していた噂話を思い出す。
「まさか、行方不明になって捜索を禁止されていた隊員というのは」
セリザワが不気味そうに聞く。
「そんな噂が出回っていたか。まあ君はこの計画の関係者故、特別に教えよう。」
長官が机に肘を置き、顔の前で手を組んで話始める。
「そうだ。その隊員というのが今回派遣された被験者の正体だ。」
セリザワは絶句する。
「少年の誘拐に失敗したため急遽隊員たちの中から選別されたのだ。その際少々やりすぎてしまったようでな。意識が戻らなくなったために人工知能などの技術を駆使していわゆるサイボーグ兵器に見事なり替わったのだ。」
そんな話を何の抵抗もなく淡々と話す長官に恐怖すら覚える。
「いい機会だから制圧に派遣させたが、コード・ファイブの方が一枚上手であったようだな。」
「なぜ」
セリザワが声にならないような声で小さく言う。
長官は聞き取れずセリザワを見る。
「なぜこのような非人道的実験を繰り返すのですか。」
セリザワが怒りを強く抑えて、しかし強く長官に問う。
「ナヤ君もこれ以上の損害を出してこの実験を水の泡にしたくないらしい。一時中断を申し入れてきた。」
「防衛隊はこの計画からの完全撤退するべきと考えます。」
声を震わせながらセリザワが言う。
「そうはいかない。この計画はこの国を支える軍事産業になりうるからな。ただ、ほとぼりが冷めるまでは
新規生産はやめるべきとは考える。」
「人命より国益が大事なのですか。」
「もちろんだ。一隊員など使い捨ての駒にすぎんということを忘れるな。」
そんな発言を聞いたセリザワは何かを心に決めた。
「失礼します。」
それだけ言ってセリザワは早歩きで部屋を後にする。
国家安全保障庁本庁
司令部内。
ウィン
と入り口が開き、セリザワが険しい顔で入ってくる。
「お戻りですか。今のところ異常は」
そうオキタが語り掛けるも、セリザワは体を大きく揺らして横を通り過ぎ、自分のデスクにつく。
机をドンと強くたたき、怒りを何とか抑えようとする。
それを横で見たオキタは話しかけるのをあきらめ、不思議そうに見ることしかできなかった。
セリザワが庁舎内の廊下を少し焦り気味で歩く。
すると前からナヤが歩いてきた。
もうすぐですれ違うというところでセリザワが歩みを止める。
ナヤも少し追い抜いた後、歩みを止めた。
少しの間、お互いその場に止まった後セリザワが再び焦った様子で歩き始める。
ナヤは止まったままフッ、と不気味にニヤけた。
コンコンコン
と、セリザワが防衛部長官室のドアをノックする。
「司令本部長官、セリザワです。」
「入れ。」
ドアの奥からトウドウの返事が聞こえる。
「失礼します。」
そう言ってセリザワは重々しいドアをゆっくりと開き、部屋に入る。
長官は椅子をセリザワの方へ向けて振り向く。
「先ほどナヤ君から、被験者を派遣したが制圧失敗したと報告を受けたところだ。君もか。」
「被験者。」
セリザワは何の話か分からず、自分の話を忘れて長官に問う。
「君は知らなかったか。まあいい。話はなんだ。」
セリザワはこの前隊員たちが話していた噂話を思い出す。
「まさか、行方不明になって捜索を禁止されていた隊員というのは」
セリザワが不気味そうに聞く。
「そんな噂が出回っていたか。まあ君はこの計画の関係者故、特別に教えよう。」
長官が机に肘を置き、顔の前で手を組んで話始める。
「そうだ。その隊員というのが今回派遣された被験者の正体だ。」
セリザワは絶句する。
「少年の誘拐に失敗したため急遽隊員たちの中から選別されたのだ。その際少々やりすぎてしまったようでな。意識が戻らなくなったために人工知能などの技術を駆使していわゆるサイボーグ兵器に見事なり替わったのだ。」
そんな話を何の抵抗もなく淡々と話す長官に恐怖すら覚える。
「いい機会だから制圧に派遣させたが、コード・ファイブの方が一枚上手であったようだな。」
「なぜ」
セリザワが声にならないような声で小さく言う。
長官は聞き取れずセリザワを見る。
「なぜこのような非人道的実験を繰り返すのですか。」
セリザワが怒りを強く抑えて、しかし強く長官に問う。
「ナヤ君もこれ以上の損害を出してこの実験を水の泡にしたくないらしい。一時中断を申し入れてきた。」
「防衛隊はこの計画からの完全撤退するべきと考えます。」
声を震わせながらセリザワが言う。
「そうはいかない。この計画はこの国を支える軍事産業になりうるからな。ただ、ほとぼりが冷めるまでは
新規生産はやめるべきとは考える。」
「人命より国益が大事なのですか。」
「もちろんだ。一隊員など使い捨ての駒にすぎんということを忘れるな。」
そんな発言を聞いたセリザワは何かを心に決めた。
「失礼します。」
それだけ言ってセリザワは早歩きで部屋を後にする。
国家安全保障庁本庁
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ウィン
と入り口が開き、セリザワが険しい顔で入ってくる。
「お戻りですか。今のところ異常は」
そうオキタが語り掛けるも、セリザワは体を大きく揺らして横を通り過ぎ、自分のデスクにつく。
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