9 / 10
肆章
仏の顔も
しおりを挟む
国家安全保障庁庁舎内。
セリザワが庁舎内の廊下を少し焦り気味で歩く。
すると前からナヤが歩いてきた。
もうすぐですれ違うというところでセリザワが歩みを止める。
ナヤも少し追い抜いた後、歩みを止めた。
少しの間、お互いその場に止まった後セリザワが再び焦った様子で歩き始める。
ナヤは止まったままフッ、と不気味にニヤけた。
コンコンコン
と、セリザワが防衛部長官室のドアをノックする。
「司令本部長官、セリザワです。」
「入れ。」
ドアの奥からトウドウの返事が聞こえる。
「失礼します。」
そう言ってセリザワは重々しいドアをゆっくりと開き、部屋に入る。
長官は椅子をセリザワの方へ向けて振り向く。
「先ほどナヤ君から、被験者を派遣したが制圧失敗したと報告を受けたところだ。君もか。」
「被験者。」
セリザワは何の話か分からず、自分の話を忘れて長官に問う。
「君は知らなかったか。まあいい。話はなんだ。」
セリザワはこの前隊員たちが話していた噂話を思い出す。
「まさか、行方不明になって捜索を禁止されていた隊員というのは」
セリザワが不気味そうに聞く。
「そんな噂が出回っていたか。まあ君はこの計画の関係者故、特別に教えよう。」
長官が机に肘を置き、顔の前で手を組んで話始める。
「そうだ。その隊員というのが今回派遣された被験者の正体だ。」
セリザワは絶句する。
「少年の誘拐に失敗したため急遽隊員たちの中から選別されたのだ。その際少々やりすぎてしまったようでな。意識が戻らなくなったために人工知能などの技術を駆使していわゆるサイボーグ兵器に見事なり替わったのだ。」
そんな話を何の抵抗もなく淡々と話す長官に恐怖すら覚える。
「いい機会だから制圧に派遣させたが、コード・ファイブの方が一枚上手であったようだな。」
「なぜ」
セリザワが声にならないような声で小さく言う。
長官は聞き取れずセリザワを見る。
「なぜこのような非人道的実験を繰り返すのですか。」
セリザワが怒りを強く抑えて、しかし強く長官に問う。
「ナヤ君もこれ以上の損害を出してこの実験を水の泡にしたくないらしい。一時中断を申し入れてきた。」
「防衛隊はこの計画からの完全撤退するべきと考えます。」
声を震わせながらセリザワが言う。
「そうはいかない。この計画はこの国を支える軍事産業になりうるからな。ただ、ほとぼりが冷めるまでは
新規生産はやめるべきとは考える。」
「人命より国益が大事なのですか。」
「もちろんだ。一隊員など使い捨ての駒にすぎんということを忘れるな。」
そんな発言を聞いたセリザワは何かを心に決めた。
「失礼します。」
それだけ言ってセリザワは早歩きで部屋を後にする。
国家安全保障庁本庁
司令部内。
ウィン
と入り口が開き、セリザワが険しい顔で入ってくる。
「お戻りですか。今のところ異常は」
そうオキタが語り掛けるも、セリザワは体を大きく揺らして横を通り過ぎ、自分のデスクにつく。
机をドンと強くたたき、怒りを何とか抑えようとする。
それを横で見たオキタは話しかけるのをあきらめ、不思議そうに見ることしかできなかった。
セリザワが庁舎内の廊下を少し焦り気味で歩く。
すると前からナヤが歩いてきた。
もうすぐですれ違うというところでセリザワが歩みを止める。
ナヤも少し追い抜いた後、歩みを止めた。
少しの間、お互いその場に止まった後セリザワが再び焦った様子で歩き始める。
ナヤは止まったままフッ、と不気味にニヤけた。
コンコンコン
と、セリザワが防衛部長官室のドアをノックする。
「司令本部長官、セリザワです。」
「入れ。」
ドアの奥からトウドウの返事が聞こえる。
「失礼します。」
そう言ってセリザワは重々しいドアをゆっくりと開き、部屋に入る。
長官は椅子をセリザワの方へ向けて振り向く。
「先ほどナヤ君から、被験者を派遣したが制圧失敗したと報告を受けたところだ。君もか。」
「被験者。」
セリザワは何の話か分からず、自分の話を忘れて長官に問う。
「君は知らなかったか。まあいい。話はなんだ。」
セリザワはこの前隊員たちが話していた噂話を思い出す。
「まさか、行方不明になって捜索を禁止されていた隊員というのは」
セリザワが不気味そうに聞く。
「そんな噂が出回っていたか。まあ君はこの計画の関係者故、特別に教えよう。」
長官が机に肘を置き、顔の前で手を組んで話始める。
「そうだ。その隊員というのが今回派遣された被験者の正体だ。」
セリザワは絶句する。
「少年の誘拐に失敗したため急遽隊員たちの中から選別されたのだ。その際少々やりすぎてしまったようでな。意識が戻らなくなったために人工知能などの技術を駆使していわゆるサイボーグ兵器に見事なり替わったのだ。」
そんな話を何の抵抗もなく淡々と話す長官に恐怖すら覚える。
「いい機会だから制圧に派遣させたが、コード・ファイブの方が一枚上手であったようだな。」
「なぜ」
セリザワが声にならないような声で小さく言う。
長官は聞き取れずセリザワを見る。
「なぜこのような非人道的実験を繰り返すのですか。」
セリザワが怒りを強く抑えて、しかし強く長官に問う。
「ナヤ君もこれ以上の損害を出してこの実験を水の泡にしたくないらしい。一時中断を申し入れてきた。」
「防衛隊はこの計画からの完全撤退するべきと考えます。」
声を震わせながらセリザワが言う。
「そうはいかない。この計画はこの国を支える軍事産業になりうるからな。ただ、ほとぼりが冷めるまでは
新規生産はやめるべきとは考える。」
「人命より国益が大事なのですか。」
「もちろんだ。一隊員など使い捨ての駒にすぎんということを忘れるな。」
そんな発言を聞いたセリザワは何かを心に決めた。
「失礼します。」
それだけ言ってセリザワは早歩きで部屋を後にする。
国家安全保障庁本庁
司令部内。
ウィン
と入り口が開き、セリザワが険しい顔で入ってくる。
「お戻りですか。今のところ異常は」
そうオキタが語り掛けるも、セリザワは体を大きく揺らして横を通り過ぎ、自分のデスクにつく。
机をドンと強くたたき、怒りを何とか抑えようとする。
それを横で見たオキタは話しかけるのをあきらめ、不思議そうに見ることしかできなかった。
4
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説

戦国記 因幡に転移した男
山根丸
SF
今作は、歴史上の人物が登場したりしなかったり、あるいは登場年数がはやかったりおそかったり、食文化が違ったり、言語が違ったりします。つまりは全然史実にのっとっていません。歴史に詳しい方は歯がゆく思われることも多いかと存じます。そんなときは「異世界の話だからしょうがないな。」と受け止めていただけると幸いです。
カクヨムにも載せていますが、内容は同じものになります。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
銀河戦国記ノヴァルナ 第1章:天駆ける風雲児
潮崎 晶
SF
数多の星大名が覇権を目指し、群雄割拠する混迷のシグシーマ銀河系。
その中で、宙域国家オ・ワーリに生まれたノヴァルナ・ダン=ウォーダは、何を思い、何を掴み取る事が出来るのか。
日本の戦国時代をベースにした、架空の銀河が舞台の、宇宙艦隊やら、人型機動兵器やらの宇宙戦記SF、いわゆるスペースオペラです。
主人公は織田信長をモデルにし、その生涯を独自設定でアレンジして、オリジナルストーリーを加えてみました。
史実では男性だったキャラが女性になってたり、世代も改変してたり、そのうえ理系知識が苦手な筆者の書いた適当な作品ですので、歴史的・科学的に真面目なご指摘は勘弁いただいて(笑)、軽い気持ちで読んでやって下さい。
大事なのは勢いとノリ!あと読者さんの脳内補完!(笑)
※本作品は他サイト様にても公開させて頂いております。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる