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参章
ヒトか機械か
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「君は人なのか。」
ハヤカワはヘルメット越しのこもった声で、しばらくの沈黙を破る。
すると相手もヘルメット越し、こもった声で答えてくる。
「5号さん、私は」
男が含みを持たせた言い方で話を区切り、また続ける。
「私はあなたと同じです。あなたは。」
男の声は少し機械音声のようにも聞こえた。
ハヤカワは質問を無視し、
「あいにく俺は戻る気はない。道を空けてもらいたい。」
周囲もちらちらと見まわしながら言う。
男は少年の方をちらりと見た後、再びハヤカワに顔を向ける。
「同志、そして若い命を傷つけることは私の本意ではありません。おとなしく私とお戻りください。」
スッと手を差し伸べる。
やはり動きが人間ではなく機械のようだった。
ハヤカワは改めて少年をかばうように右手を突き出す。
「なるほど。」
そういうと男は少年の方へ腕を伸ばし、掴みかかろうとする。
その腕をハヤカワは強く掴んで少年へ近づけまいとする。
「いいですねえ、このパワー。もっとあなたの力が知りたい。」
そう言って掴まれた腕をぐっと少年の方へまた伸ばす。
ハヤカワは男の頭部の真正面から強く殴る。
男は息の漏れたような声を出しつつ、頭を軽く抱えながらふらふらとする。
「これがサイボーグ・ウルトラ作戦の人体機械技術結合手術によるサイボーグメンテナンスで生まれた最高傑作の力。」
と、男はなぜか嬉しそうに早口でそう言う。
ハヤカワは男を殴った右の拳を少し見つめ、改めて戦闘の構えをとる。
「いいですねえ、響きましたよ。同志とはいえ分かり合えなかったこと、非常に遺憾です。しかしこうなればやむを得えません。あなたはここで指示通り」
男も戦闘の構えをとる。
「殺させていただきます。」
と同時に男は右足で地面をけり、ハヤカワの方へ殴りかかってくる。
余りの速さにハヤカワは避けることができなかった。
後方へ強く倒れこむ。
「なんて速さだ。」
そう言って空を見上げる間に、男はハヤカワへ馬乗りになり、首を強く絞める。
「いくらスペックで上回っていても力を使えないのであれば意味がありません。」
男がしゃべる間、ハヤカワは必死にもがく。
「私こそ真に最高傑作となり」
ハヤカワは男の手をぐっと握る。
「あなたを殺すのです」
男がそう言うと同時に、ハヤカワは男の手を強く引きはがし腹部に強く蹴りを入れる。
男は大きく吹き飛び、地面に叩きつけられる。
腹部を抑えて地面でもがき苦しむ男。
ハヤカワはじっと男を見つめる。
腹部を抱えながらも膝立ちで姿勢を整える男。
「なぜ見ているだけなのですか。」
苦しそうな声で男がそう言うとハヤカワは
「この力は人を苦しめるためのものじゃない。」
と強く言う。
「そのような甘い考えではあなたはいずれ大切なものを失うでしょう。」
そう言うと男が再び立ち上がる。
「あなた自身さえも。」
男は高く飛び上がる。
それを見たハヤカワは負けじと最大限の力で飛び上がる。
「跳躍力も劣りましたか。」
男を抜かして空中へ躍り出るハヤカワは空中で男の腹部に両足を置き、右足で勢いよく蹴りつける。
男は砂埃を上げ、地面に強く叩きつけられる。
ハヤカワも叩きつけられるも、スーツに内蔵されているエアークッションでスーツ内に空気を取り込み、膨らませ軽い衝撃を受けるにとどまる。
立ち上がり男の方を見ると、男はピクリとも動かずに倒れていた。
ハヤカワが手首についているスイッチを押すと、
プシューッ
とスーツ内の空気が抜ける音がして、膨らみがなくなる。
周りを囲んでいた数十の隊員たちは、異次元の戦闘にただ茫然と立ってハヤカワを見ていることしかできなかった。
これを好機と見たハヤカワは、
「少しだけ我慢してくれ。」
と少年に言葉をかけ、腰に手を回す。
その瞬間、周りを囲んでいた隊員達の頭上をやすやすと飛び越え、近くの森林の中に姿をくらませる。
ハッとようやく状況を理解した隊員が、
「こちら制圧部隊、目標をロスト。指示を待つ。」
と現場指揮官へと指示を仰ぐ。
すると現場指揮官も
「こちら包囲および制圧任務部隊、目標をロスト。指示を待つ。」
と司令部へ指示を仰ぐ。
「司令、現場の指揮官が目標をロストしたため次の指示を仰いでいます。」
司令部通信士であるオザワが緊迫した様子でセリザワへ伝える。
「ここまでして逃すか」
セリザワが震えた声で言うと
パキン
と手にしていた鉛筆を指で二つに折る。
「まだ遠くへは行っていないだろう、付近をくまなく探すんだ」
比較的冷静であった副指令・オキタが改めて指令を出し、吸っていた煙草の吸殻を灰皿に力強くねじ込む。
「司令、作戦遂行中に防衛部長官からの命令と称し作戦を妨害した部隊がいたとの報告が。」
オザワが勢いよくセリザワの方を振り向き大きな声で報告する。
「なんだと、長官が。」
そういうとセリザワは立ち上がり、司令部を後にした。
ハヤカワはヘルメット越しのこもった声で、しばらくの沈黙を破る。
すると相手もヘルメット越し、こもった声で答えてくる。
「5号さん、私は」
男が含みを持たせた言い方で話を区切り、また続ける。
「私はあなたと同じです。あなたは。」
男の声は少し機械音声のようにも聞こえた。
ハヤカワは質問を無視し、
「あいにく俺は戻る気はない。道を空けてもらいたい。」
周囲もちらちらと見まわしながら言う。
男は少年の方をちらりと見た後、再びハヤカワに顔を向ける。
「同志、そして若い命を傷つけることは私の本意ではありません。おとなしく私とお戻りください。」
スッと手を差し伸べる。
やはり動きが人間ではなく機械のようだった。
ハヤカワは改めて少年をかばうように右手を突き出す。
「なるほど。」
そういうと男は少年の方へ腕を伸ばし、掴みかかろうとする。
その腕をハヤカワは強く掴んで少年へ近づけまいとする。
「いいですねえ、このパワー。もっとあなたの力が知りたい。」
そう言って掴まれた腕をぐっと少年の方へまた伸ばす。
ハヤカワは男の頭部の真正面から強く殴る。
男は息の漏れたような声を出しつつ、頭を軽く抱えながらふらふらとする。
「これがサイボーグ・ウルトラ作戦の人体機械技術結合手術によるサイボーグメンテナンスで生まれた最高傑作の力。」
と、男はなぜか嬉しそうに早口でそう言う。
ハヤカワは男を殴った右の拳を少し見つめ、改めて戦闘の構えをとる。
「いいですねえ、響きましたよ。同志とはいえ分かり合えなかったこと、非常に遺憾です。しかしこうなればやむを得えません。あなたはここで指示通り」
男も戦闘の構えをとる。
「殺させていただきます。」
と同時に男は右足で地面をけり、ハヤカワの方へ殴りかかってくる。
余りの速さにハヤカワは避けることができなかった。
後方へ強く倒れこむ。
「なんて速さだ。」
そう言って空を見上げる間に、男はハヤカワへ馬乗りになり、首を強く絞める。
「いくらスペックで上回っていても力を使えないのであれば意味がありません。」
男がしゃべる間、ハヤカワは必死にもがく。
「私こそ真に最高傑作となり」
ハヤカワは男の手をぐっと握る。
「あなたを殺すのです」
男がそう言うと同時に、ハヤカワは男の手を強く引きはがし腹部に強く蹴りを入れる。
男は大きく吹き飛び、地面に叩きつけられる。
腹部を抑えて地面でもがき苦しむ男。
ハヤカワはじっと男を見つめる。
腹部を抱えながらも膝立ちで姿勢を整える男。
「なぜ見ているだけなのですか。」
苦しそうな声で男がそう言うとハヤカワは
「この力は人を苦しめるためのものじゃない。」
と強く言う。
「そのような甘い考えではあなたはいずれ大切なものを失うでしょう。」
そう言うと男が再び立ち上がる。
「あなた自身さえも。」
男は高く飛び上がる。
それを見たハヤカワは負けじと最大限の力で飛び上がる。
「跳躍力も劣りましたか。」
男を抜かして空中へ躍り出るハヤカワは空中で男の腹部に両足を置き、右足で勢いよく蹴りつける。
男は砂埃を上げ、地面に強く叩きつけられる。
ハヤカワも叩きつけられるも、スーツに内蔵されているエアークッションでスーツ内に空気を取り込み、膨らませ軽い衝撃を受けるにとどまる。
立ち上がり男の方を見ると、男はピクリとも動かずに倒れていた。
ハヤカワが手首についているスイッチを押すと、
プシューッ
とスーツ内の空気が抜ける音がして、膨らみがなくなる。
周りを囲んでいた数十の隊員たちは、異次元の戦闘にただ茫然と立ってハヤカワを見ていることしかできなかった。
これを好機と見たハヤカワは、
「少しだけ我慢してくれ。」
と少年に言葉をかけ、腰に手を回す。
その瞬間、周りを囲んでいた隊員達の頭上をやすやすと飛び越え、近くの森林の中に姿をくらませる。
ハッとようやく状況を理解した隊員が、
「こちら制圧部隊、目標をロスト。指示を待つ。」
と現場指揮官へと指示を仰ぐ。
すると現場指揮官も
「こちら包囲および制圧任務部隊、目標をロスト。指示を待つ。」
と司令部へ指示を仰ぐ。
「司令、現場の指揮官が目標をロストしたため次の指示を仰いでいます。」
司令部通信士であるオザワが緊迫した様子でセリザワへ伝える。
「ここまでして逃すか」
セリザワが震えた声で言うと
パキン
と手にしていた鉛筆を指で二つに折る。
「まだ遠くへは行っていないだろう、付近をくまなく探すんだ」
比較的冷静であった副指令・オキタが改めて指令を出し、吸っていた煙草の吸殻を灰皿に力強くねじ込む。
「司令、作戦遂行中に防衛部長官からの命令と称し作戦を妨害した部隊がいたとの報告が。」
オザワが勢いよくセリザワの方を振り向き大きな声で報告する。
「なんだと、長官が。」
そういうとセリザワは立ち上がり、司令部を後にした。
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