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参章
絶体絶命
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ウー。ウー。
「緊急車両通ります。緊急車両通ります。」
公道を2台のパトカーがサイレンを鳴らし緊急走行している。
「こちら川崎413、現在職務質問を拒否し逃走したため、少年を抱えたヘルメット姿の不審な男を緊急走行で追尾中。対象の走行速度は時速約68キロ。」
現在の状況を警察署本部へ無線で伝える。
「こちら川崎署、了解した。引き続き追尾せよ。」
「了解。」
「こちら川崎署より防衛庁司令部へ。現在川崎市野川柿生線上を指名手配の被験者らしき男が逃走中。パトカー二台が追跡中。位置情報を共有します。」
「こちら防衛庁司令部、了解。」
画面には地図が表示され、パトカーを表す緑の二つの光と、追尾対象を表すオレンジの光が公道上を点滅しながら動いている。
「もうすでに川崎まで。」
セリザワは静かに驚く。
「移動速度は時速約68キロ。進行方向には生田緑地があります。」
「川崎には確か防衛隊駐屯地があったな。」
「司令、ならば生田緑地に追い込んで周囲を包囲しましょう。」
副指令であるオキタが提案する。
「わかった。川崎署と川崎駐屯地へ伝達。生田緑地を警察車両で包囲、SATと防衛隊の到着を待つよう指示。神奈川県警本部と川崎駐屯地に部隊の派遣を要請しろ。」
「了解。こちら防衛庁司令部、川崎署へ。対象を生田緑地へ誘導後、もてる総力をもって警察車両で同地を包囲してください。」
「こちら川崎署、了解。」
司令部内が慌ただしくなるなっている中、セリザワが電話機のキーを009と押し、誰かに内線を繋げる。
「セリザワです。コード・ナインが見つかりました。はい。善処します。」
オキタがちらりとセリザワを見る。
いまだ公道上を逃走するハヤカワ。
「兄ちゃん、正面。」
「ああ。今はあそこに逃げ込むしかないか」
目の前には木が生い茂る森のようなものがあった。
ハヤカワは少年を抱えたまま緑地の中へ姿を消した。
木々を抜け、開けた場所へとハヤカワは出てきた。周りに人はいなかった。
「ひとまずこの森林の中でやり過ごすしかない。」
少年はハヤカワとヘルメット越しに目を合わせ力強くゆっくりと頷いた。
森林の奥、あらゆる方向からパトカーのサイレンの音が聞こえる。
「まさか。」
ハヤカワは嫌な予感がした。
バタバタバタバタ。
上空からはヘリの音が聞こえる。
ハヤカワと少年は森林の中へ再び身を潜めた。
「こちら現地指揮車両、SATと防衛隊の到着を確認。」
「了解。指示を待て。」
オザワがセリザワの方を振り向く。
「司令、準備は整いました。」
「わかった。」
そういうとセリザワは自分のデスク上にあるマイクの電源を入れる。
「全体に告ぐ。これより現在重要指名手配犯が潜伏中と思われる生田緑地内の捜索及び対象の制圧を行う。総員、この機を逃せば次はないと思え。以上。行動初め。」
セリザワは大きな迫力ある声で号令をかける。
各自緑地内へ侵入を始める。
敷地の外から入る隊員もいれば、ヘリ降下にて行動を始める隊員もいた。
潜伏するハヤカワは、自分の存在に気付いた隊員がいれば殺傷し、隠れながらを繰り返し逃げ回っていた。
しかし、次第に捜索範囲は狭まって行く。
そしてついに、広場の方へハヤカワは追いつめられる。
軽く30名を超える隊員たちに、ハヤカワは少年をかばいながらただ突っ立っていることしかできなかった。
その時だった。
「所属不明の装甲機動車が警察の包囲網を突破し、緑地内へ侵入した」
と、突如隊員たちのインカムに通信が入る。
それと同時に、
キキキキ。
とものすごい速度で突入してくる装甲機動車が現れ、ハヤカワの前で止まる。
ハヤカワはぐっと身構え、少年をかばう姿勢をとる。
ガチャッ。
と車両の扉が開く。
ハヤカワは目を見張った。
中からはハヤカワと同じ防護スーツ、ヘルメットをした人間が現れる。
そして同時に防衛隊の隊員も素早く車を降りてきた。
「防衛部長官からの命令だ。総員改めて銃撃の許可があるまで銃撃を禁ずる。」
装甲機動車から現れた隊員が声を張り上げる。
ハヤカワとスーツの男は、じっと顔を合わせ、動かなかった。
「緊急車両通ります。緊急車両通ります。」
公道を2台のパトカーがサイレンを鳴らし緊急走行している。
「こちら川崎413、現在職務質問を拒否し逃走したため、少年を抱えたヘルメット姿の不審な男を緊急走行で追尾中。対象の走行速度は時速約68キロ。」
現在の状況を警察署本部へ無線で伝える。
「こちら川崎署、了解した。引き続き追尾せよ。」
「了解。」
「こちら川崎署より防衛庁司令部へ。現在川崎市野川柿生線上を指名手配の被験者らしき男が逃走中。パトカー二台が追跡中。位置情報を共有します。」
「こちら防衛庁司令部、了解。」
画面には地図が表示され、パトカーを表す緑の二つの光と、追尾対象を表すオレンジの光が公道上を点滅しながら動いている。
「もうすでに川崎まで。」
セリザワは静かに驚く。
「移動速度は時速約68キロ。進行方向には生田緑地があります。」
「川崎には確か防衛隊駐屯地があったな。」
「司令、ならば生田緑地に追い込んで周囲を包囲しましょう。」
副指令であるオキタが提案する。
「わかった。川崎署と川崎駐屯地へ伝達。生田緑地を警察車両で包囲、SATと防衛隊の到着を待つよう指示。神奈川県警本部と川崎駐屯地に部隊の派遣を要請しろ。」
「了解。こちら防衛庁司令部、川崎署へ。対象を生田緑地へ誘導後、もてる総力をもって警察車両で同地を包囲してください。」
「こちら川崎署、了解。」
司令部内が慌ただしくなるなっている中、セリザワが電話機のキーを009と押し、誰かに内線を繋げる。
「セリザワです。コード・ナインが見つかりました。はい。善処します。」
オキタがちらりとセリザワを見る。
いまだ公道上を逃走するハヤカワ。
「兄ちゃん、正面。」
「ああ。今はあそこに逃げ込むしかないか」
目の前には木が生い茂る森のようなものがあった。
ハヤカワは少年を抱えたまま緑地の中へ姿を消した。
木々を抜け、開けた場所へとハヤカワは出てきた。周りに人はいなかった。
「ひとまずこの森林の中でやり過ごすしかない。」
少年はハヤカワとヘルメット越しに目を合わせ力強くゆっくりと頷いた。
森林の奥、あらゆる方向からパトカーのサイレンの音が聞こえる。
「まさか。」
ハヤカワは嫌な予感がした。
バタバタバタバタ。
上空からはヘリの音が聞こえる。
ハヤカワと少年は森林の中へ再び身を潜めた。
「こちら現地指揮車両、SATと防衛隊の到着を確認。」
「了解。指示を待て。」
オザワがセリザワの方を振り向く。
「司令、準備は整いました。」
「わかった。」
そういうとセリザワは自分のデスク上にあるマイクの電源を入れる。
「全体に告ぐ。これより現在重要指名手配犯が潜伏中と思われる生田緑地内の捜索及び対象の制圧を行う。総員、この機を逃せば次はないと思え。以上。行動初め。」
セリザワは大きな迫力ある声で号令をかける。
各自緑地内へ侵入を始める。
敷地の外から入る隊員もいれば、ヘリ降下にて行動を始める隊員もいた。
潜伏するハヤカワは、自分の存在に気付いた隊員がいれば殺傷し、隠れながらを繰り返し逃げ回っていた。
しかし、次第に捜索範囲は狭まって行く。
そしてついに、広場の方へハヤカワは追いつめられる。
軽く30名を超える隊員たちに、ハヤカワは少年をかばいながらただ突っ立っていることしかできなかった。
その時だった。
「所属不明の装甲機動車が警察の包囲網を突破し、緑地内へ侵入した」
と、突如隊員たちのインカムに通信が入る。
それと同時に、
キキキキ。
とものすごい速度で突入してくる装甲機動車が現れ、ハヤカワの前で止まる。
ハヤカワはぐっと身構え、少年をかばう姿勢をとる。
ガチャッ。
と車両の扉が開く。
ハヤカワは目を見張った。
中からはハヤカワと同じ防護スーツ、ヘルメットをした人間が現れる。
そして同時に防衛隊の隊員も素早く車を降りてきた。
「防衛部長官からの命令だ。総員改めて銃撃の許可があるまで銃撃を禁ずる。」
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