小さい頃、近所のお兄さんに赤ちゃんみたいに甘えた事がきっかけで性癖が歪んでしまって困ってる

海野

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きっかけ

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「ごめんねぇ…急に預かってもらっちゃって…せっかくの帰省なのに…予定とか大丈夫?」
「大学生は暇なんで!もう4年だし就職決まってるんで」
「あらおめでとう!!こっちに戻ってくるの?」
「そうです!知り合いの会社に紹介をいただいて…うぉ、雄介ぇ!でっかくなったなー今6歳?だっけ」
「そーなのぉ!来年には小学生になるっていうのにもーこの子は…ほら挨拶なさい!!」
隣の家の男の子を預かる事となった。下の子供の予防接種に病院に連れて行かないといけないらしい。一緒に連れていく予定だった雄介がごねにごねている所を見かけて声をかけて、今に至る。
「ごめんねぇ…すぐ帰ってくるから…雄介!!」
ムスッとした顔。目も合わせてくれない。ご機嫌ナナメなんだろうという事は一目で分かった。
「ゆっくりしてきて下さい。夜ご飯も食べさせちゃうんで」
「えっ本当に良いの!?ありがとうね~!!これ少ないけど。バイト代だと思って!!!」
「えぇ!?良いのに…」
「お願い受け取って!!あ、そろそろ行かなきゃ!!ごめんねバタバタしてて。行ってきます!!」
「行ってらっしゃーーい」
前に子供を抱きながらよくあんなに動けたものだ。子育てって大変だなぁとつくづく思う。

「よっしゃ雄介、どっか出かけるか!!」
未だ不機嫌そうな表情で指を弄っている。
「水族館とかどうよ?空いてるぞ~、遊園地?腹減ってたらファミレスでもいいな」
「…いかない」
「良いのか?すっげえ良い天気だぜ?お空も青色…」
「行かない!!!!」
どんな候補地を挙げても嫌だ嫌だと突っぱねられてしまう。時計を見ると11時。もうすぐ昼飯の時間だろう。
「そっか。なら飯食べるか。何食いたい?」
「…食べない」
あーこれは相当機嫌悪いな。熱はなさそうだし、体調が悪いわけではないのだろう。とりあえず、何も食わせないわけにはいかないので冷蔵庫を開く。雄介は不機嫌ながらも渡したタブレットでアニメを見ていた。



「やだいらない、」
こんのクソガキ。せっかく作ったオムライスを一口も手をつけようとしない。
「ふーんそう。ま、俺は食べるけどね」
大人気ないと思いつつも、売り言葉に買い言葉。中々席につかない雄介は無視して1人食べ始める。
「っ、いらない、ゆうくん食べない!!!」
「そうかそうか。良いよ別に。俺お腹空いてるし。たーべちゃおっかなー」
「っ゛!!う゛…っひ、」
しまった。いじめすぎた。みるみるうちに目に溜まる涙。
「うあああああああんっ!!」
来た。幼児特有の泣き叫び。これでも可愛さ故に笑ってしまうのだから小さい子パワーというものはすごい。
「ごめんごめん嘘嘘。食べないよ~」
しゃがみ込んで抱き上げる。ここではイヤイヤは発動しなかった様で、ギュッと首の後ろに手を回された。
「お腹空いてない?」
「ん゛~、」
「オムライスやだ?」
「ん゛~んっ、」
「食べちゃうって言ってごめんね。一緒に食べるか」
「っ゛、いやっ、」
さっきよりも覇気がない。この子はなんでこんなに機嫌が悪いんだろうか。
「重くなったなー…この前会ったのは3年前だったっけか…」
懐かしい。母親と遊びに行った時はまだ俺の名前も上手に言えなかったのに。子供の成長は早い。
「飯食うか」
軽く背中を2、3度叩き、椅子の上に降ろしてやって、目の前に少し冷めたオムライスとスプーンを置いた。
 ようやくスプーンを持ち始めると、大きく口を開けて食べ始める。
「食べるの上手になったな。偉い」
3年前は口いっぱいにミートソースをつけて、フォークもまともに使えず、手掴みで食べていたのに。きっとお箸もきちんと持てる様になっているのだろう。
 しかし、そう言った瞬間、食べていた手を止めて、スプーンを置いてしまう。
「どうした?おいしくなかった?」
「…」
「ゆーすけ、ちゃんと言いな?何が嫌なん」
「…あいちゃんはママにあーんしてもらってる」
「えぇ?そりゃあいちゃんは赤ちゃんだからな」
「っ゛!!もーいらない!!!」
がちゃんと音を立ててスプーンを置き、外に飛び出してしまう。
「っ、と待て待て待て待て、」
慌てて腹を掴み、玄関から引きずり戻す。
「どしたの今日。何かあった?」
「…あいちゃん嫌い」
「何で?」
「ずーーーっとママと居る、ご飯もお風呂も寝るのも、」
ああ、これはいわゆるアレだ。母親が下の子に取られて寂しいってやつだ。
「赤ちゃんは大変なんだよ。雄介だって赤ちゃんの時、ママ独り占めしただろ」
「してないっ、知らないっ!!!」
いやしてるだろ。忘れているだけだろ。心の中で突っ込みを入れつつ、背中を叩くとまた、首の後ろに手を回してきた。
「本物には叶わねえけど今日は俺が頑張ってママするからさ。あーんでもしてやろうか」
「…する、」
あ、するんだ。

2回目の着席。しかし、一向にスプーンを持たない。一口分を掬いとり口の前に持っていくと、雛鳥の様に口を開けた。
「おいし?」
「ケチャップのところ、」
「はいはい」
一人っ子だった俺には分からない感覚。ママを取られたと思うのだろうか。
「はいあと一口。よく食べました」
口元についたケチャップを拭いてやるとまた、手を広げられる。
「はいはい。抱っこね」
何で子供ってミルクの匂いがするんだろう。あ、石鹸か。お腹がいっぱいになったからなのか、俺の胸の中でふにゃふにゃと何やら呻いている。
「眠い?お昼寝すっか」
「…ゆうくんも赤ちゃん戻りたい」
「えー?何でよ」
「何にも出来ないもん。年長さんとかどうでもいいもん」
ああこれは。拗ねているのではない。気を引いて、困らせて、色々ワガママを言ってしまうのは。
「ママ、ゆーくんのことどーでもいい、?」
鼻水の啜る音が聞こえた。不安なのだ。今まで雄介のことしか見ていなかった母親が、違う対象ばかりを気にかけるのが。
「そーんなことないだろー?大事じゃなければ今日俺に預けるなんてしないじゃん」
「ママを助けてやりな?お兄ちゃんなんだろ?」
「…わかった、」
「偉い。でももし、」
でももし「お兄ちゃん」頑張るのが嫌になったらおいで、そう言ったからか、時々俺の家に泊まりに来て、風呂に入ったり一緒に昼寝をする様になったのはまた別の話。
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