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3 忘れられない
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物足りない。月に一度のお楽しみが楽しくない。原因はきっとアレ。あの日の夜のせいだ。あの大きな手に包まれる頬の心地よさが忘れられない。俺を大人としてではなく、本当に赤ちゃんとして扱ってくれるのは、お店のお姉さんでは足りない。
あの日の事は誰にもバレていない。仕事の事で話す時は話すし、挨拶だって今まで通り。あの事はなかったかのように消化されている。
もう一度やってくれと言ったら怒るだろうか。気持ち悪がられるだろうか。いや、そもそも申し出があったのは向こうからだったのだから、変態は向こうだろ。そんな事を悶々と考えていたら、1人でパンを齧りながらスマホを見ているアイツを発見した。
「前良いか?」
イヤホンをしているヤツは、小さく会釈してスマホの画面を消した。
「先輩もお昼ですか?」
「あ、ああ、」
「珍しいですね。いつも社食なのに」
「まぁな、」
たわいも無い話が続くが全く頭は動いていない。あの時の事で一杯一杯で、自分が何を話しているか分からなくなりそう。
「あ、山口、その…この前の事、なんだけど…」
ひとしきり会話に区切りがついた頃、ひっくり返った声と共に切り出した。
「はい、」
「ぇーっと、その…だな…っ、」
「もー先輩、はっきり言ってください。お耳の中に小さくで良いんで」
「ぇ、っと、」
耳を近づけてくる後輩。なんて言えば良いのか、今でも言葉がまとまっていない。
「もう一回赤ちゃんになりたいのかな?」
一向に喋らない俺に痺れを切らしたのか、そう耳に振りかけられる。
ニヤリと笑った山口の顔。あの日の甘い甘い声が鼓膜にビリビリとまとわりつく。
「ぁ、あぁ、」
そう返事するので精一杯だった。ここは会社だと言うのに身体中の力が抜けてへたり込んでしまいそう。顔が熱い。赤くなっていなければいいのに。
「たーーっぷりいい子いい子してあげますからね」
頭を撫でられていないのに髪がムズムズする。皮膚がソワソワして、心臓の毛を撫でられているかのようだった。
あの日の事は誰にもバレていない。仕事の事で話す時は話すし、挨拶だって今まで通り。あの事はなかったかのように消化されている。
もう一度やってくれと言ったら怒るだろうか。気持ち悪がられるだろうか。いや、そもそも申し出があったのは向こうからだったのだから、変態は向こうだろ。そんな事を悶々と考えていたら、1人でパンを齧りながらスマホを見ているアイツを発見した。
「前良いか?」
イヤホンをしているヤツは、小さく会釈してスマホの画面を消した。
「先輩もお昼ですか?」
「あ、ああ、」
「珍しいですね。いつも社食なのに」
「まぁな、」
たわいも無い話が続くが全く頭は動いていない。あの時の事で一杯一杯で、自分が何を話しているか分からなくなりそう。
「あ、山口、その…この前の事、なんだけど…」
ひとしきり会話に区切りがついた頃、ひっくり返った声と共に切り出した。
「はい、」
「ぇーっと、その…だな…っ、」
「もー先輩、はっきり言ってください。お耳の中に小さくで良いんで」
「ぇ、っと、」
耳を近づけてくる後輩。なんて言えば良いのか、今でも言葉がまとまっていない。
「もう一回赤ちゃんになりたいのかな?」
一向に喋らない俺に痺れを切らしたのか、そう耳に振りかけられる。
ニヤリと笑った山口の顔。あの日の甘い甘い声が鼓膜にビリビリとまとわりつく。
「ぁ、あぁ、」
そう返事するので精一杯だった。ここは会社だと言うのに身体中の力が抜けてへたり込んでしまいそう。顔が熱い。赤くなっていなければいいのに。
「たーーっぷりいい子いい子してあげますからね」
頭を撫でられていないのに髪がムズムズする。皮膚がソワソワして、心臓の毛を撫でられているかのようだった。
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