12 / 27
心配
しおりを挟む
その後の何日かは、更にうじうじと過ごした。
お父様に相談しようとして。
でももう取り返しのつかないところまで話が進んでいるのではと思うと、確認するのが怖くて。
結局、何も言えなくて…。
そんなある日、お父様が怪我をしていた。頬を青く腫らして唇の端が切れていた。
「お…お父様…?どうされたのですか…?」
動揺する私に、お父様は痛みに顔を顰めながらもニヤリと笑った。
「いやなに。あの若造が「婚約を解消したがったのは彼女の方だ。俺は結婚したかった」なんて抜かすもんだからちょっとな」
…何でちょっと得意気なんですか。
…若造って彼のことよね。
彼は…お父様にそう言ったのか…。
胸の辺りが重苦しい。
やはり、何か誤解があったのでは…。
けれど今さらどうやってそれを確認したらいいのか…。
黙り込む私に、お父様が優しく笑った。
「おまえは彼が好きなんだろう?」
思わずコクリと頷いてしまった。
じわりと涙が滲む。
今さら言っても仕方ないけれど。
でも…彼が好き……
「彼もおまえが好きなんだそうだ」
「え……」
お父様の顔を見つめる。
なんでそんなことをお父様が…
「おまえを振った腹いせに散々ボコボコにしてやって、「うちの娘はおまえのことが好きだったのに」って言ってやったら、それまで大人しく殴られてた癖に「俺だって彼女のことが大好きだった!」っていきなり殴り返してきたからな」
何やってるんですかお父様!
「なかなかいいパンチだった」
満足そうに頷かないでください!
「あの目は本気だった。拳で語り合った相手の言葉だからな。俺は信じるぞ」
なんでそんな青春小説みたいなことになってるんですか!!
あなたいくつですか!!!
ツッコミどころは山ほどあった。
でも…
「だからもう一度、ちゃんと話し合いなさい」
お父様の声は、あくまで優しい。
私を見つめる瞳も。
私のことを、とても心配してくれている顔。そんな顔をされて、言い返せる訳もない。
だから大人しく頷いた。
お父様に相談しようとして。
でももう取り返しのつかないところまで話が進んでいるのではと思うと、確認するのが怖くて。
結局、何も言えなくて…。
そんなある日、お父様が怪我をしていた。頬を青く腫らして唇の端が切れていた。
「お…お父様…?どうされたのですか…?」
動揺する私に、お父様は痛みに顔を顰めながらもニヤリと笑った。
「いやなに。あの若造が「婚約を解消したがったのは彼女の方だ。俺は結婚したかった」なんて抜かすもんだからちょっとな」
…何でちょっと得意気なんですか。
…若造って彼のことよね。
彼は…お父様にそう言ったのか…。
胸の辺りが重苦しい。
やはり、何か誤解があったのでは…。
けれど今さらどうやってそれを確認したらいいのか…。
黙り込む私に、お父様が優しく笑った。
「おまえは彼が好きなんだろう?」
思わずコクリと頷いてしまった。
じわりと涙が滲む。
今さら言っても仕方ないけれど。
でも…彼が好き……
「彼もおまえが好きなんだそうだ」
「え……」
お父様の顔を見つめる。
なんでそんなことをお父様が…
「おまえを振った腹いせに散々ボコボコにしてやって、「うちの娘はおまえのことが好きだったのに」って言ってやったら、それまで大人しく殴られてた癖に「俺だって彼女のことが大好きだった!」っていきなり殴り返してきたからな」
何やってるんですかお父様!
「なかなかいいパンチだった」
満足そうに頷かないでください!
「あの目は本気だった。拳で語り合った相手の言葉だからな。俺は信じるぞ」
なんでそんな青春小説みたいなことになってるんですか!!
あなたいくつですか!!!
ツッコミどころは山ほどあった。
でも…
「だからもう一度、ちゃんと話し合いなさい」
お父様の声は、あくまで優しい。
私を見つめる瞳も。
私のことを、とても心配してくれている顔。そんな顔をされて、言い返せる訳もない。
だから大人しく頷いた。
33
お気に入りに追加
1,855
あなたにおすすめの小説
頑張らない政略結婚
ひろか
恋愛
「これは政略結婚だ。私は君を愛することはないし、触れる気もない」
結婚式の直前、夫となるセルシオ様からの言葉です。
好きにしろと、君も愛人をつくれと。君も、もって言いましたわ。
ええ、好きにしますわ、私も愛する人を想い続けますわ!
五話完結、毎日更新
痛みは教えてくれない
河原巽
恋愛
王立警護団に勤めるエレノアは四ヶ月前に異動してきたマグラに冷たく当たられている。顔を合わせれば舌打ちされたり、「邪魔」だと罵られたり。嫌われていることを自覚しているが、好きな職場での仲間とは仲良くしたかった。そんなある日の出来事。
マグラ視点の「触れても伝わらない」というお話も公開中です。
別サイトにも掲載しております。
天使の行きつく場所を幸せになった彼女は知らない。
ぷり
恋愛
孤児院で育った茶髪茶瞳の『ミューラ』は11歳になる頃、両親が見つかった。
しかし、迎えにきた両親は、自分を見て喜ぶ様子もなく、連れて行かれた男爵家の屋敷には金髪碧眼の天使のような姉『エレナ』がいた。
エレナとミューラは赤子のときに産院で取り違えられたという。エレナは男爵家の血は一滴も入っていない赤の他人の子にも関わらず、両親に溺愛され、男爵家の跡目も彼女が継ぐという。
両親が見つかったその日から――ミューラの耐え忍ぶ日々が始まった。
■※※R15範囲内かとは思いますが、残酷な表現や腐った男女関係の表現が有りますので苦手な方はご注意下さい。※※■
※なろう小説で完結済です。
※IFルートは、33話からのルート分岐で、ほぼギャグとなっております。
【完結】巻き戻りを望みましたが、それでもあなたは遠い人
白雨 音
恋愛
14歳のリリアーヌは、淡い恋をしていた。相手は家同士付き合いのある、幼馴染みのレーニエ。
だが、その年、彼はリリアーヌを庇い酷い傷を負ってしまった。その所為で、二人の運命は狂い始める。
罪悪感に苛まれるリリアーヌは、時が戻れば良いと切に願うのだった。
そして、それは現実になったのだが…短編、全6話。
切ないですが、最後はハッピーエンドです☆《完結しました》
本当の勝者は正直者
夕鈴
恋愛
侯爵令嬢ナンシーの婚約者は友人の伯爵令嬢に恋をしている。ナンシーが幼馴染の婚約者の恋を応援しても動かない。不毛な恋愛相談に呆れながらも、ナンシーはヘタレな幼馴染の恋を叶えるために動き出す。
幼馴染の恋を応援したい少女が選んだ結末は。
※小説家になろう様にも投稿しています。
【完結】人生を諦めていましたが、今度こそ幸せになってみせます。
曽根原ツタ
恋愛
──もう全部どうでもいいや。
──ああ、なんだ。私まだ生きてるんだ。
ルセーネは強い神力を持っていたために、魔物を封じる生贄として塔に幽閉された。次第に希望も潰えて、全てを諦めてしまう。けれど7年後、正体不明の男がルセーネの目の前に現れ……?
これは、人生を諦めていた主人公が、才能を見出され、本当の居場所を見つけるお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる