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黄色い花

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次に彼と会ったのは、うちでのお茶会だった。
いつも通り、二人きりでのんびりとした時間を過ごす。見通しのいい屋外ならば、婚約者と二人きりになっても問題ないのだ。

気候がいいので、婚約して以来、彼がうちに来るといつも庭でお茶をしている。毎回、場所を変えて。
うちの庭師は腕がいいので、場所によって様々な景色が楽しめるのだ。

今日はちょうど、黄色い大きな花びらをつける木が見頃だったので、その近くの東屋にティーセットを用意してもらった。
葉をつける前に大ぶりの花を咲かせるその木は、私のお気に入りだ。

「見事な木だ」

彼がそう言ってくれて、嬉しくなる。

「はい。曽祖父の代からあるそうで。私のお気に入りなんです」

そう言うと、彼は一つ頷いた。

「なるほど、よく似合いそうだ。一つもらっても?」

「ええ、どうぞ」

持って帰るのかしらと不思議に思いながらも頷くと、彼はサッと東屋から出てその木の下へ行った。そして腕を伸ばし綺麗に咲いた花を一つとる。
戻ってきた彼が私に近づいた。

「動かないで」

突然の接近に動揺して、動きたくても動けない。
私が固まっている間に、彼は私の左の耳元を少し弄って手を離した。
そして私を見つめて目を細めた。

「ああ、やっぱり綺麗だ」

耳元で、黄色い花びらが揺れているのが見える。
でも、心臓がうるさくてそれどころではない。
こんなことをされたのは、生まれて初めてだった。…この前みたいに抱きしめられたのも。
それに、私を見つめる彼の優しい瞳…。

真っ赤な顔で見つめ返すと、不意に彼が顔を赤くして、困ったように呟いた。

「…すまない。迷惑だっただろうか」

慌てて首を横に振る。

「いえ…嬉しいです……」

自分で言っておいて、更に赤くなった。

「っ…そうか…ならよかった…」

彼も赤い顔で黙り込む。
沈黙は、お茶がすっかり冷めてしまうまで続いた。

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