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心配
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市場で綺麗な古着を何着か買って、穀物などの食料も買って、町の外に出て転移で家まで戻ってきた。
そして気づいた。
フードを外した彼の、顔色の悪さに。
「これから数日、僕は部屋から出てこないけど心配しなくていい」
青白い顔でそう言われて、心配しない訳がない。
けれど
「いつものことだから。君は好きにしてていい。食材も適当に使って。ただ、家からあまり離れないように。今、迷子になっても見つけてあげられないから」
肩をつかまれじっと見つめられた。
「いいね?」
向けられる視線の強さに、頷くしかなかった。
彼はほっと息を吐くと、壁に縋るようにして自分の部屋へと向かった。
バタンとドアが閉じる。
ドサリとベッドに転がるような音が聞こえ、それから静かになった。
その後は、耳を澄ましても、もう何も聞こえない。
大丈夫…なのだろうか
不安に思いつつも、できることなどない。何も喉を通らず、その日は水だけ飲んで眠った。
翌日、彼の部屋からは何の物音もせず、彼が顔を出すこともなかった。
翌々日も、同じだった。
少しの空腹を覚え、パンをひとかけらかじった。
その次の日も、彼は出てこなかった。
ふと思いついて、家の外から彼の部屋を見てみたけれど、カーテンがかかっていて中の様子はわからなかった。
その次の日も同じ。
不安ばかりが膨らんでいく。
その次の日も、彼は部屋から出てこない。
「いつものこと」と言っていたけれど、本当に大丈夫なのだろうか。
もう水さえ、喉を通らない。
キッチンの椅子にじっと座って、彼が出てくるのを待つ。
そして気づいた。
フードを外した彼の、顔色の悪さに。
「これから数日、僕は部屋から出てこないけど心配しなくていい」
青白い顔でそう言われて、心配しない訳がない。
けれど
「いつものことだから。君は好きにしてていい。食材も適当に使って。ただ、家からあまり離れないように。今、迷子になっても見つけてあげられないから」
肩をつかまれじっと見つめられた。
「いいね?」
向けられる視線の強さに、頷くしかなかった。
彼はほっと息を吐くと、壁に縋るようにして自分の部屋へと向かった。
バタンとドアが閉じる。
ドサリとベッドに転がるような音が聞こえ、それから静かになった。
その後は、耳を澄ましても、もう何も聞こえない。
大丈夫…なのだろうか
不安に思いつつも、できることなどない。何も喉を通らず、その日は水だけ飲んで眠った。
翌日、彼の部屋からは何の物音もせず、彼が顔を出すこともなかった。
翌々日も、同じだった。
少しの空腹を覚え、パンをひとかけらかじった。
その次の日も、彼は出てこなかった。
ふと思いついて、家の外から彼の部屋を見てみたけれど、カーテンがかかっていて中の様子はわからなかった。
その次の日も同じ。
不安ばかりが膨らんでいく。
その次の日も、彼は部屋から出てこない。
「いつものこと」と言っていたけれど、本当に大丈夫なのだろうか。
もう水さえ、喉を通らない。
キッチンの椅子にじっと座って、彼が出てくるのを待つ。
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