16 / 24
爆裂業雷の純白魔女
第16話 ウルフィリア平原『爆裂業雷の純白魔女』誕生(味方からの新しい呼び名)
しおりを挟む
「ここではいつも通りの爆裂魔法か雷魔法でやることにするわ。あと、汚れずにミッション成功させるってのを継続でやってみせようかしらね」
彼女はウルフィリア平原の上空に漂っていた。そ、今回もまた私でぇーす! え? うれしい? ねぇ? うれしい?
「お? いたいた。ここ、無駄にだだっ広いから探すのが面倒なのよねぇ」
そう言い終わった彼女は指パッチンをする。すると彼女が遠目で見つけたモンスターが爆ぜた。あー、きたない花火。
「はい一体しゅーりょー」
彼女はダルそうな表情をしていた。はぁ、さっきのとこみたいに一ヵ所に固まっててくれれば楽なのに。ウルフィリア平原って名称だけど、森とか山とかダンジョンとかも一括りにしてるのよね~、ここ。
「んー、たしかここは『間引け』ば良いのよね。さっきのとこと違って一体一体魔力量計りながらだからホントめんどくさい。……って、愚痴ってても仕方ないか。サーチ」
探知魔法を使用するが反応がない。あー、やっぱり? 範囲が広すぎるのと漂う魔力が異質なせいで、常に探知自体が阻害されてるようなものね。
「『龍脈』っていったっけ? 私あんまそーゆーの詳しくないのよねー。たしかそんなやつがここを通ってるから魔力がオカシイし、そのオカシイ魔力にあてられてモンスターが突然変異して強くなるんだったっけ? ま、私のミッションはその強いモンスターを消していけば良いのよね」
彼女はホウキに腰掛けて空を移動しながら呟く。私もその突然変異をして強くなった個体になるのよね。
「人種なのにこんなに魔力があるし、全属性を使えるなんて『化物』よね……」
顔を俯かせ彼女は少し感傷に浸る。が、すぐに彼女は顔を上げ、トンチンカンなことを言い出す。
「ま、と言っても、マルチデリーターっていう『本物の化物』の存在を知っちゃえば私なんて化物なんて呼べる程強くないわよね。本当にただの剣技だけで私を超えちゃう本当の化物」
剣技なんて使ってない彼の剣技を絶賛する彼女。そう、私なんて彼の剣に劣るただの魔法使いよ。
「多重万能能力が有るのにその一部の能力しか組織は知らないし、ターゲット始末時は剣しか使わない……いや、剣だけで十分なのよね」
能力は一つで剣も使ってない。転移や空を飛んだりはしてないようだから使えないようだけど、それでも私の魔法より他の能力の方が上みたいなのよね。
「ん? 『万能能力』のはずなのにそれらが使えない? ……!? そ、そうよ!!」
ま、まさか、気づいた!? そう……私は気付いてしまった。彼の能力に。
「使う必要が無いから使ってないだけなのよ! 転移とか空を飛ぶとかっていう『万能能力』が使えないなんてことないわ」
そんな能力無い。きっとそうね、そうに違いないわ。もし使ってたら私のこういうミッションも彼がやってしまって私や転移持ちの仕事がなくなっちゃうもんね。そう考えると彼って優しいのかも? それとも力あるのに使わない系の人で何も考えてないって思った方がいいのかな?
彼女はそんなことを考えながら月明かりに照らされた夜の平原を飛行する。時速百二十キロで目視で発見した魔力量が高い敵を爆裂魔法か雷魔法で始末しながら--。
「にしてもほんっっっと広いわねぇ。もう五十体以上は見つけて来たのにぃ」
そう言う彼女は無傷で始末してきていた。と、いうのもモンスターが彼女に気付いた時には『もう死んでいる』からだ。
「あ、洞窟はっけん。そろそろナザル森林に行かないといけないのよね。もうここに居る標的をやったら向かっちゃお」
彼女は洞窟の入口まで高度を下げる。ただし地面に足はつけない。汚れるから。そんな理由。彼女は見通しの悪い洞窟の中を覗き込む。
「うへぇ。思った以上に難所かも。でもやりがいはありそうね。『魔法障壁常時』展開……さぁ、汚れずに終わらせますか」
ホウキに座ったまま洞窟に入っていく。魔法で辺りを照らしながら進んで行くとスライムやゴブリンといったザコモンスターが出て来て攻撃を仕掛けるが『エーティーフィールド』によって彼女に攻撃は届かない。
ザコはこのミッションでは標的ではないため無闇に殺せない。だけど傷は付けられたくない。っていうか、汚れたくない。
そんな考えで攻撃を無視され続け……無効化され続け、攻撃疲れたモンスター達はへばって座り込んでしまう。
「まったく、ザコモンスターはやっぱり根性無いわね~。よわいよわい。お? もうそろそろでボスって感じ?」
---
ここにいるのはザコモンスターなんかではない。ウルフィリア平原という地は『大地に流れる魔力の通り道』--龍脈がある。そしてここに流れる龍脈は他の龍脈より太く、そして色濃い。その龍脈の影響を受けたモンスターは突然変異を遂げ、進化する。
龍脈は地中深くになればなるほど濃い魔力が流れている。では、洞窟。……そう、地下へと続いている洞窟があったとしよう。その洞窟の中は外より濃い魔力が流れている。さらには外とは違い、風で空へと霧散していくことなく洞窟内で循環し、さらに魔力が濃くなる。
なら、そこで産まれたモンスターは弱いのか?
否、強い。ただのゴブリンだろうと一体でC級ハンターを凌ぐ強さを持っている。通常のゴブリンは馴れてしまえばハンターランクの下から二番目のE級ハンター一人で30体1くらいはさばける。だが、突然変異体のゴブリンは一体でB級ハンターと互角。戦闘センスや武器の扱い方、そして知能がB級ハンター並である。
B級ハンターは武器や職業が熟練の領域にある証だ。B級ハンターで剣を使っているのなら剣を教える師範代を名乗って剣術道場を開けるレベル。ちなみにルークさんは準A級ハンターのライセンスを持っている。
話を戻そう。つまり突然変異体のゴブリンは武器や職業の師範代レベルの化物であるということである。
スライムに至ってはF級ハンターどころか村人Cみたいな人でも倒せるモンスター。でもそれはもちろん通常のスライムの話。
突然変異体のスライムは何でも溶かす。攻撃しようにも剣は溶かされ、防御しようにも盾も防具も溶かされ、あげくそのまま体を溶かされる。魔法攻撃でさえ魔力を喰われ、スライムがより大きくなってしまう。そんな化物。
そして、その洞窟の最深部ではより濃い魔力が満ちていて、洞窟の入口付近にいたモンスターより遥かに強いモンスターがいるのは道理である。
え? 今までのそんな化物モンスターの攻撃を無効化し続けて一番奥まで来れる化物がいるって? え、どこに? そんなやついるわけないじゃない。ましてや最深部のモンスターをたったいち……--。
---
「うわー、広いわねぇ。なんかキラキラ光っててキレイね、ここ。あ、あの淡い青い色した結晶とかもいいかも。んー、たしか名前は……」
「まずはここまで来れたことを褒めてやろう」
突然響く低い声。ここはただの石が龍脈の魔力を浴びてそれが結晶となり発光して辺りを照らしている。そしてその結晶が散らばる空間の奥。そこから人の言葉で彼女に話かけられた。
「ここってやっぱり魔力がオカシイからモンスター一体一体の魔力量測って倒すってのが出来ないのよねぇ。あー、よかった。あんたみたいに分かりやすく強そうなやつがいてくれて。ウルフィリア平原でのミッションはとりあえずあんたをやれば完了ね」
「ほう、我の魔力の波動を浴びて怯むどころか啖呵を切ってこようとは。ふむ、ここまで辿り着けるだけの強者ということか」
彼女が話しているは魔人。それも突然変異体の。魔人は個体差が激しいが、たった一体でもA級ハンターのパーティーが決死の覚悟で挑む化物モンスター。それが突然変異体ともなれば魔王といわれてもおかしくはない。それくらい強い。
「悪いけど戦って汚れたくないから一撃で死んでもらうわよ」
「ぬ、ヌハハハハハ!! 我を一撃で葬るだと!? 嗤わせてくれるわ! 小娘が!!」
「『死してなお、死を--』」
「ヌン!」
彼女が呪文を紡ぎ、魔人が彼女に急接近し攻撃を仕掛ける。が--。
「『エーティーフィールド』だと!? ばかな!? 人間が! 人間ごときが使える魔法ではない!!」
「『--時とともに、過去にして--』」
魔人が狼狽え、驚いた表情で後ずさる。彼女はなんてことのない表情で呪文を続ける。
「!! 我が……我が下がる……だと!? ふ、ふざけるな!」
「『--黄泉に還りしは、死の--』」
魔人は拳を握り締め、彼女に殴りかかる。ラッシュラッシュ。殴る蹴るのラッシュの嵐。魔法で強化された魔人の攻撃で彼女の周りの壁や床はその余波で壊れ崩れていく。だが、彼女は無傷で服に汚れ一つ付いてない。そして彼女は呪文を続ける。
「な、なんなのだ。なんなのだ貴様は!? ハッ! そしてその呪文は何の呪文なんなのだ!? 我は聞いたことないぞ! その呪文」
「『--始まりは死で、終わりは死--』私はただの魔法使いよ。で、この魔法はくらってみれば分かるわよ」
魔人は彼女の呪文がそろそろ終わるのを感じ距離をとり身構える。彼女は呪文の最後のセリフを言う。
「く! 『エーティーフィールド』出力最大!! そして前面展開!! これで貴様の魔法を受けきってみせよう!」
「『--始まりは爆発、次に光--』あんた、良い度胸してるじゃない? でも私の魔法を受けきれないわよ。『--爆裂業雷』」
彼女の攻撃が魔人に届き、『エーティーフィールド』に亀裂が走り砕け散る間際……魔人が敗北を認めた時に魔人は思わず口にしてしまう。
「バ、バケモノめ!!」
「だ、誰がバケモノよ! 見た目はあんたの方がバケモノじゃない!!」
「あんたは本当の化物を知らないから私のことをバケモノって呼ぶのよ。彼を知ったら私なんて、なんてことないただのか弱き乙女よ」
大爆発と共に洞窟は崩壊し、ウルフィリア平原に洞窟というものが消えた。
彼女の今の魔法は彼女が苦手な爆裂魔法と雷魔法を混ぜて創ったオリジナル魔法。では、彼女が得意な魔法同士を混ぜて創った魔法なら威力は--。
「標的の始末を確認。……って、洞窟ごとやっちゃったわ。どうしよう。ま、いいや、どうせ後処理班がなんとかしてくれるでしょ。さ、次行きましょ。次!」
彼女の爆裂業雷魔法を見た者がいた。そして彼女が白い服を汚さずに化物を吹き飛ばしたところを知った者もいた。それらは新魔王軍の配下の者でもあった。
「『組織の白い化物』め……」
彼女はウルフィリア平原の上空に漂っていた。そ、今回もまた私でぇーす! え? うれしい? ねぇ? うれしい?
「お? いたいた。ここ、無駄にだだっ広いから探すのが面倒なのよねぇ」
そう言い終わった彼女は指パッチンをする。すると彼女が遠目で見つけたモンスターが爆ぜた。あー、きたない花火。
「はい一体しゅーりょー」
彼女はダルそうな表情をしていた。はぁ、さっきのとこみたいに一ヵ所に固まっててくれれば楽なのに。ウルフィリア平原って名称だけど、森とか山とかダンジョンとかも一括りにしてるのよね~、ここ。
「んー、たしかここは『間引け』ば良いのよね。さっきのとこと違って一体一体魔力量計りながらだからホントめんどくさい。……って、愚痴ってても仕方ないか。サーチ」
探知魔法を使用するが反応がない。あー、やっぱり? 範囲が広すぎるのと漂う魔力が異質なせいで、常に探知自体が阻害されてるようなものね。
「『龍脈』っていったっけ? 私あんまそーゆーの詳しくないのよねー。たしかそんなやつがここを通ってるから魔力がオカシイし、そのオカシイ魔力にあてられてモンスターが突然変異して強くなるんだったっけ? ま、私のミッションはその強いモンスターを消していけば良いのよね」
彼女はホウキに腰掛けて空を移動しながら呟く。私もその突然変異をして強くなった個体になるのよね。
「人種なのにこんなに魔力があるし、全属性を使えるなんて『化物』よね……」
顔を俯かせ彼女は少し感傷に浸る。が、すぐに彼女は顔を上げ、トンチンカンなことを言い出す。
「ま、と言っても、マルチデリーターっていう『本物の化物』の存在を知っちゃえば私なんて化物なんて呼べる程強くないわよね。本当にただの剣技だけで私を超えちゃう本当の化物」
剣技なんて使ってない彼の剣技を絶賛する彼女。そう、私なんて彼の剣に劣るただの魔法使いよ。
「多重万能能力が有るのにその一部の能力しか組織は知らないし、ターゲット始末時は剣しか使わない……いや、剣だけで十分なのよね」
能力は一つで剣も使ってない。転移や空を飛んだりはしてないようだから使えないようだけど、それでも私の魔法より他の能力の方が上みたいなのよね。
「ん? 『万能能力』のはずなのにそれらが使えない? ……!? そ、そうよ!!」
ま、まさか、気づいた!? そう……私は気付いてしまった。彼の能力に。
「使う必要が無いから使ってないだけなのよ! 転移とか空を飛ぶとかっていう『万能能力』が使えないなんてことないわ」
そんな能力無い。きっとそうね、そうに違いないわ。もし使ってたら私のこういうミッションも彼がやってしまって私や転移持ちの仕事がなくなっちゃうもんね。そう考えると彼って優しいのかも? それとも力あるのに使わない系の人で何も考えてないって思った方がいいのかな?
彼女はそんなことを考えながら月明かりに照らされた夜の平原を飛行する。時速百二十キロで目視で発見した魔力量が高い敵を爆裂魔法か雷魔法で始末しながら--。
「にしてもほんっっっと広いわねぇ。もう五十体以上は見つけて来たのにぃ」
そう言う彼女は無傷で始末してきていた。と、いうのもモンスターが彼女に気付いた時には『もう死んでいる』からだ。
「あ、洞窟はっけん。そろそろナザル森林に行かないといけないのよね。もうここに居る標的をやったら向かっちゃお」
彼女は洞窟の入口まで高度を下げる。ただし地面に足はつけない。汚れるから。そんな理由。彼女は見通しの悪い洞窟の中を覗き込む。
「うへぇ。思った以上に難所かも。でもやりがいはありそうね。『魔法障壁常時』展開……さぁ、汚れずに終わらせますか」
ホウキに座ったまま洞窟に入っていく。魔法で辺りを照らしながら進んで行くとスライムやゴブリンといったザコモンスターが出て来て攻撃を仕掛けるが『エーティーフィールド』によって彼女に攻撃は届かない。
ザコはこのミッションでは標的ではないため無闇に殺せない。だけど傷は付けられたくない。っていうか、汚れたくない。
そんな考えで攻撃を無視され続け……無効化され続け、攻撃疲れたモンスター達はへばって座り込んでしまう。
「まったく、ザコモンスターはやっぱり根性無いわね~。よわいよわい。お? もうそろそろでボスって感じ?」
---
ここにいるのはザコモンスターなんかではない。ウルフィリア平原という地は『大地に流れる魔力の通り道』--龍脈がある。そしてここに流れる龍脈は他の龍脈より太く、そして色濃い。その龍脈の影響を受けたモンスターは突然変異を遂げ、進化する。
龍脈は地中深くになればなるほど濃い魔力が流れている。では、洞窟。……そう、地下へと続いている洞窟があったとしよう。その洞窟の中は外より濃い魔力が流れている。さらには外とは違い、風で空へと霧散していくことなく洞窟内で循環し、さらに魔力が濃くなる。
なら、そこで産まれたモンスターは弱いのか?
否、強い。ただのゴブリンだろうと一体でC級ハンターを凌ぐ強さを持っている。通常のゴブリンは馴れてしまえばハンターランクの下から二番目のE級ハンター一人で30体1くらいはさばける。だが、突然変異体のゴブリンは一体でB級ハンターと互角。戦闘センスや武器の扱い方、そして知能がB級ハンター並である。
B級ハンターは武器や職業が熟練の領域にある証だ。B級ハンターで剣を使っているのなら剣を教える師範代を名乗って剣術道場を開けるレベル。ちなみにルークさんは準A級ハンターのライセンスを持っている。
話を戻そう。つまり突然変異体のゴブリンは武器や職業の師範代レベルの化物であるということである。
スライムに至ってはF級ハンターどころか村人Cみたいな人でも倒せるモンスター。でもそれはもちろん通常のスライムの話。
突然変異体のスライムは何でも溶かす。攻撃しようにも剣は溶かされ、防御しようにも盾も防具も溶かされ、あげくそのまま体を溶かされる。魔法攻撃でさえ魔力を喰われ、スライムがより大きくなってしまう。そんな化物。
そして、その洞窟の最深部ではより濃い魔力が満ちていて、洞窟の入口付近にいたモンスターより遥かに強いモンスターがいるのは道理である。
え? 今までのそんな化物モンスターの攻撃を無効化し続けて一番奥まで来れる化物がいるって? え、どこに? そんなやついるわけないじゃない。ましてや最深部のモンスターをたったいち……--。
---
「うわー、広いわねぇ。なんかキラキラ光っててキレイね、ここ。あ、あの淡い青い色した結晶とかもいいかも。んー、たしか名前は……」
「まずはここまで来れたことを褒めてやろう」
突然響く低い声。ここはただの石が龍脈の魔力を浴びてそれが結晶となり発光して辺りを照らしている。そしてその結晶が散らばる空間の奥。そこから人の言葉で彼女に話かけられた。
「ここってやっぱり魔力がオカシイからモンスター一体一体の魔力量測って倒すってのが出来ないのよねぇ。あー、よかった。あんたみたいに分かりやすく強そうなやつがいてくれて。ウルフィリア平原でのミッションはとりあえずあんたをやれば完了ね」
「ほう、我の魔力の波動を浴びて怯むどころか啖呵を切ってこようとは。ふむ、ここまで辿り着けるだけの強者ということか」
彼女が話しているは魔人。それも突然変異体の。魔人は個体差が激しいが、たった一体でもA級ハンターのパーティーが決死の覚悟で挑む化物モンスター。それが突然変異体ともなれば魔王といわれてもおかしくはない。それくらい強い。
「悪いけど戦って汚れたくないから一撃で死んでもらうわよ」
「ぬ、ヌハハハハハ!! 我を一撃で葬るだと!? 嗤わせてくれるわ! 小娘が!!」
「『死してなお、死を--』」
「ヌン!」
彼女が呪文を紡ぎ、魔人が彼女に急接近し攻撃を仕掛ける。が--。
「『エーティーフィールド』だと!? ばかな!? 人間が! 人間ごときが使える魔法ではない!!」
「『--時とともに、過去にして--』」
魔人が狼狽え、驚いた表情で後ずさる。彼女はなんてことのない表情で呪文を続ける。
「!! 我が……我が下がる……だと!? ふ、ふざけるな!」
「『--黄泉に還りしは、死の--』」
魔人は拳を握り締め、彼女に殴りかかる。ラッシュラッシュ。殴る蹴るのラッシュの嵐。魔法で強化された魔人の攻撃で彼女の周りの壁や床はその余波で壊れ崩れていく。だが、彼女は無傷で服に汚れ一つ付いてない。そして彼女は呪文を続ける。
「な、なんなのだ。なんなのだ貴様は!? ハッ! そしてその呪文は何の呪文なんなのだ!? 我は聞いたことないぞ! その呪文」
「『--始まりは死で、終わりは死--』私はただの魔法使いよ。で、この魔法はくらってみれば分かるわよ」
魔人は彼女の呪文がそろそろ終わるのを感じ距離をとり身構える。彼女は呪文の最後のセリフを言う。
「く! 『エーティーフィールド』出力最大!! そして前面展開!! これで貴様の魔法を受けきってみせよう!」
「『--始まりは爆発、次に光--』あんた、良い度胸してるじゃない? でも私の魔法を受けきれないわよ。『--爆裂業雷』」
彼女の攻撃が魔人に届き、『エーティーフィールド』に亀裂が走り砕け散る間際……魔人が敗北を認めた時に魔人は思わず口にしてしまう。
「バ、バケモノめ!!」
「だ、誰がバケモノよ! 見た目はあんたの方がバケモノじゃない!!」
「あんたは本当の化物を知らないから私のことをバケモノって呼ぶのよ。彼を知ったら私なんて、なんてことないただのか弱き乙女よ」
大爆発と共に洞窟は崩壊し、ウルフィリア平原に洞窟というものが消えた。
彼女の今の魔法は彼女が苦手な爆裂魔法と雷魔法を混ぜて創ったオリジナル魔法。では、彼女が得意な魔法同士を混ぜて創った魔法なら威力は--。
「標的の始末を確認。……って、洞窟ごとやっちゃったわ。どうしよう。ま、いいや、どうせ後処理班がなんとかしてくれるでしょ。さ、次行きましょ。次!」
彼女の爆裂業雷魔法を見た者がいた。そして彼女が白い服を汚さずに化物を吹き飛ばしたところを知った者もいた。それらは新魔王軍の配下の者でもあった。
「『組織の白い化物』め……」
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
婚約者は、今月もお茶会に来ないらしい。
白雪なこ
恋愛
婚約時に両家で決めた、毎月1回の婚約者同士の交流を深める為のお茶会。だけど、私の婚約者は「彼が認めるお茶会日和」にしかやってこない。そして、数ヶ月に一度、参加したかと思えば、無言。短時間で帰り、手紙を置いていく。そんな彼を……許せる?
*6/21続編公開。「幼馴染の王女殿下は私の元婚約者に激おこだったらしい。次期女王を舐めんなよ!ですって。」
*外部サイトにも掲載しています。(1日だけですが総合日間1位)
私はただ一度の暴言が許せない
ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
厳かな結婚式だった。
花婿が花嫁のベールを上げるまでは。
ベールを上げ、その日初めて花嫁の顔を見た花婿マティアスは暴言を吐いた。
「私の花嫁は花のようなスカーレットだ!お前ではない!」と。
そして花嫁の父に向かって怒鳴った。
「騙したな!スカーレットではなく別人をよこすとは!
この婚姻はなしだ!訴えてやるから覚悟しろ!」と。
そこから始まる物語。
作者独自の世界観です。
短編予定。
のちのち、ちょこちょこ続編を書くかもしれません。
話が進むにつれ、ヒロイン・スカーレットの印象が変わっていくと思いますが。
楽しんでいただけると嬉しいです。
※9/10 13話公開後、ミスに気づいて何度か文を訂正、追加しました。申し訳ありません。
※9/20 最終回予定でしたが、訂正終わりませんでした!すみません!明日最終です!
※9/21 本編完結いたしました。ヒロインの夢がどうなったか、のところまでです。
ヒロインが誰を選んだのか?は読者の皆様に想像していただく終わり方となっております。
今後、番外編として別視点から見た物語など数話ののち、
ヒロインが誰と、どうしているかまでを書いたエピローグを公開する予定です。
よろしくお願いします。
※9/27 番外編を公開させていただきました。
※10/3 お話の一部(暴言部分1話、4話、6話)を訂正させていただきました。
※10/23 お話の一部(14話、番外編11ー1話)を訂正させていただきました。
※10/25 完結しました。
ここまでお読みくださった皆様。導いてくださった皆様にお礼申し上げます。
たくさんの方から感想をいただきました。
ありがとうございます。
様々なご意見、真摯に受け止めさせていただきたいと思います。
ただ、皆様に楽しんでいただける場であって欲しいと思いますので、
今後はいただいた感想をを非承認とさせていただく場合がございます。
申し訳ありませんが、どうかご了承くださいませ。
もちろん、私は全て読ませていただきます。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【完結】え、別れましょう?
須木 水夏
恋愛
「実は他に好きな人が出来て」
「は?え?別れましょう?」
何言ってんだこいつ、とアリエットは目を瞬かせながらも。まあこちらも好きな訳では無いし都合がいいわ、と長年の婚約者(腐れ縁)だったディオルにお別れを申し出た。
ところがその出来事の裏側にはある双子が絡んでいて…?
だる絡みをしてくる美しい双子の兄妹(?)と、のんびりかつ冷静なアリエットのお話。
※毎度ですが空想であり、架空のお話です。史実に全く関係ありません。
ヨーロッパの雰囲気出してますが、別物です。
運命の番?棄てたのは貴方です
ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。
番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。
※自己設定満載ですので気を付けてください。
※性描写はないですが、一線を越える個所もあります
※多少の残酷表現あります。
以上2点からセルフレイティング
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる