アイテムボックスで異世界蹂躙~ただし、それ以外のチートはない~

PENGUIN

文字の大きさ
上 下
61 / 62
第4章

破壊者ハルアン~壊れ~

しおりを挟む
 昨日、入学式の時に会った先生じゃない。昔、魔法の訓練で母さんが使って僕が受けた催眠魔法の感覚と同じだったから気付けたけど、異常だ。
 僕が入学二日目で気が抜けていたとはいえ、僕がすぐに気付けないなんて何者なんだ? そんな疑問にすぐ答えが返ってきた。

「ハルアン君、やっと気付きましたか。思ったより遅かったですねぇ。いや、これは私のが上手く作用したということでしょうか。……あ! ハルアン君、先に言っておきますけど恨むなら私ではなく王国を恨んで下さいね」

 今頃僕は気づいたけど、みんなが凍り付いたかのように動いていない。それに先生(?)の恨むなら王国を恨めって……。

「あと、私はここの先生であることは間違いないんですよ。ただ先生は仕事をしていて……あー、いわゆる副業ってやつですね。をしていてその仕事上、私の立場が一番適任だということでハルアン君には申し訳ないんだけど、諦めてね?」

「え? な、何を言って……」

「先生は先生だからちゃんときみの面倒を見てあげられるよ。だから、頼って良いんだからね」

 本当に何を言っているんだ? そのセリフはまるでもう父さんと母さんがみたいじゃないか。

「そう。君の両親はもう死にましたよ。その連絡が入ったから催眠魔法の効果を徐々に弱めたんですよ」

 僕は立ち上がり父さんと母さんがため勢いよく家に向かって飛び出した。……あれ? なんで僕は家に向かってるだ? 父さんと母さんが心配なのは間違いないんだけどその前に『父さんと母さんに何をした?』と、くってかかるところじゃないのか?
 そんな疑問を抱くがもう学園の外にいる。学園に引き返すよりこのまま家に帰った方がいいと判断した。











 家に着くとまず庭で見つけたのはベヒモスとフェンリルだった。もう死んでいた。互いに噛みつき合い、引っ掻き合っていたような傷痕があった。
 そして家に入りリビングで見たのは母さんが父さんの首を絞め殺したまま死んでいた。母さんの死因は父さんの能力で生成された剣が背中から胸の中心を貫いていたからだ。

「え?」

 僕は頭が真っ白になった。僕が思わず口にした言葉に返答する声が僕の後ろから聞こえた。

「いやー、こうも上手くいくとただの子犬を触媒に一日掛かりで催眠魔法を掛けたかいがあるってもんですねぇ~」

 誰かが分かっているから僕は振り返らない。それに僕は母さん父さん、フェンリル、ベヒモスを失った喪失感しか僕の心になかった。

「元勇者様と元お姫様がこうも呆気なく死ぬとはね。王国からそう離れてない魔界の入口といわれるこの魔獣の山にまさか一軒家を建てて暮らしているとは思いもしませんでしたよ」

 大きなショック、大きな喪失感を味わった瞬間は涙も出ないものなのか……。いや、これはただ単に僕が現実を受け入れられていないだけなのかもしれない。僕はただ立ち尽くし、茫然と後ろから聞こえてくる言葉を聞くだけだった。

「悪いのは王国です。さぁ、王国を滅ぼしましょう。国王を殺しましょう。王国民を蹂躙しましょう。……私がその手助けをしてあげます。だから、どうか、私を受け入れて下さい」

 何故だろう? 真っ白だった頭の中に王国への憎悪が湧いてきた。何故だろう? この人が言うのは嘘かもしれないのに信じられる。 何故だろう? この人が僕の両親を殺した犯人だと言うのに僕の心は王国を滅ぼすことしか考えていない。

「ハルアン君。きみは今から破壊者になるんだ。王国を滅ぼす破壊者に」

 僕は元勇者の正義の力と元姫の聖なる魔法の力の血を受け継いだ破壊者ハルアンになった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友人Aの俺は女主人公を助けたらハーレムを築いていた

山田空
ファンタジー
友人Aに転生した俺は筋肉で全てを凌駕し鬱ゲー世界をぶち壊す 絶対に報われない鬱ゲーというキャッチコピーで売り出されていたゲームを買った俺はそのゲームの主人公に惚れてしまう。 ゲームの女主人公が報われてほしいそう思う。 だがもちろん報われることはなく友人は死ぬし助けてくれて恋人になったやつに裏切られていじめを受ける。 そしてようやく努力が報われたかと思ったら最後は主人公が車にひかれて死ぬ。 ……1ミリも報われてねえどころかゲームをする前の方が報われてたんじゃ。 そう考えてしまうほど報われない鬱ゲーの友人キャラに俺は転生してしまった。 俺が転生した山田啓介は第1章のラストで殺される不幸の始まりとされるキャラクターだ。 最初はまだ楽しそうな雰囲気があったが山田啓介が死んだことで雰囲気が変わり鬱ゲーらしくなる。 そんな友人Aに転生した俺は半年を筋トレに費やす。 俺は女主人公を影で助ける。 そしたらいつのまにか俺の周りにはハーレムが築かれていて

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

治癒術師の非日常―辺境の治癒術師と異世界から来た魔術師による成長物語―

物部妖狐
ファンタジー
小さな村にある小さな丘の上に住む治癒術師 そんな彼が出会った一人の女性 日々を平穏に暮らしていたい彼の生活に起こる変化の物語。 小説家になろう様、カクヨム様、ノベルピア様へも投稿しています。 表紙画像はAIで作成した主人公です。 キャラクターイラストも、執筆用のイメージを作る為にAIで作成しています。 更新頻度:月、水、金更新予定、投稿までの間に『箱庭幻想譚』と『氷翼の天使』及び、【魔王様のやり直し】を読んで頂けると嬉しいです。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

処理中です...