アイテムボックスで異世界蹂躙~ただし、それ以外のチートはない~

PENGUIN

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第4章

魔王城の中~罠~

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 俺の後ろのぶち壊した扉から毒ガスが漏れ出て来ている。前にはアンデッドがわんさかといて、辺りは広い墓地に見えた。魔王城の中のはずなのに星や月が空にあり、肌に感じるくらいの風も吹いている。そのせいか外の空気感を感じ、魔王城の中……つまり建物内にもかかわらず外にいるという奇妙な感覚にとらわれた。

(そう見える空間か? それともあの扉が転移の扉だったか? いや、まずは目の前のアンデッドどもを始末して後ろの煙が届かないとこに行かないとな)

 俺はいつも通りに収納しようと手をアンデッドにかざし、いつも通りにアイテムボックスを使用した。



「ただのゾンビじゃなさそうだな」



 そう、収納しようとしたが全て入らずしまった。見た目は俺がこの世界に来た時にやっていた戦争時に見たアンデッドと同じだし、俺のアイテムボックスの中にあるアンデッドとそう違いはない。が、同じであればに収納されるはず……。そうならずに弾け飛んだ。


 つまりこれは、こいつらは--。










「!? め、目眩めまいが!!」

 俺は足もふらつき思わず膝をつく。後ろの紫色の煙を見たが俺の所まで十数メートル程離れている。意識が朦朧もうろうとしてきた俺は考えるのを止め、アイテムボックスで『魔王城』を収納した。

「ハァ、ハァ、ハァ……。外には、出れたようだな。ハァ、ここは、魔王城に、入る、前のとこ……か」

 俺は周囲を確認したのち、その場で仰向けに寝転がり呼吸を整える。しばらく深呼吸しながら魔王城の中を思い出す。

(位置が変わってないからあそこが魔王城の中で間違いないようだけど、にしてもトラップ多すぎだろ。中の空間は異常過ぎ。敵をどんだけ入れたくないだよ! あれじゃあ、も毒耐性なきゃ入れないだろうに。…………ん? 何か引っ掛かる)

 俺は上半身を起こして目の前に再び魔王城を取り出し、魔王城の扉や壁を観察する。--呼吸が落ち着いてきたあたりで立ち上がり、扉や壁を触りながら外周を一周まわってみた。

(ん~、わからん。ただ、正規の入口があってそこが仲間が入る入口。で、俺が入った方が敵を招き入れる入口って感じかな?)

 入った扉の前で考えてもよくわからなかった俺はしれっとレヴを取り出し、レヴを収納する直前のまんまのマヌケ顔をさらしてるレヴに聞いてみる。

「な!? ……は? え? え、魔王城……。…………え? は? 今なんて!?」
「なあ、レヴ。さっき普通にそこの扉から中に入ったんだけど、なんかトラップだらけじゃない? 入るとこ合ってんの?」

「入ったって?」

 レヴとセリフがどっかぶりで最後しか聞き取れてなかったようだ。

「ああ、魔王城の中にな」

「……言いたいことは色々あるけど、とりあえず、マスターの疑問に答えると、そこの扉をから開けて入ると4番隊のテリトリー空間に入るわ。で、普通に中に入りたいなら内側から開けてもらうか空から入るか、はたまた転移で中に入ればいいわ」

「転移か空からか……」

「そ。中から開けてもらうには中に誰かいてもらわないと開けられないのよね。今、誰もいないみたいだし」

「ん? さっき入った時、俺が戦ったあいつらは?」

「4番隊ね。さっきも言ったように『空間』が違うの。たとえ魔王城が物理的に壊れて、扉も何もかも壊れても4番隊の空間は壊れずにるわ。転移してるわけじゃなくて魔王城の入り方で空間がその時だけ変わるらしいわよ。まぁ、と言っても作った魔王様じゃないと詳しいとこまではわかんないけどね」

「ふーん、そうか。じゃ、空から中に入るか。レヴ、案内してくれ。あ、そうだ。まずは風呂に入りたいから浴室があればそこまで連れてってくれ。できれば大浴場みたいな大人数が入れるとこにして欲しい。……服ごと入りたくてね」

 俺は肩をすくめ、両手を広げて全身にこびりついた返り血をアピールする。

「そ、わかったわ。闘技場の隣に大浴場があるからそこに連れてくわ。ただし、もういい加減にマスターのこと教えてくれる? 能力とか私に何させたいとか私にこの首輪つけた経緯とか含めて全部ね」

「ん? ああ、まぁ、いいだろう。……じゃ、入るか」























「え? 今なんて?」




 こうして俺はレヴと風呂に入ることになった。


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