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ごめんなさいそしてありがとう
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マリーはパンパンと手を叩く。
「お呼びっすか?マリー様」
シュタっとマリーの背後に現れるドロシー。
「うむ!私とレンの普段着を見繕うです。私たちはこういうのは疎いから頼むです」
「いや・・・私もそう言うのは苦手っすけど・・・」
「・・・レンやっぱり私たちに従者なんて必要な――」
「お任せくださいっす!貴族から一般平民まですべての服装を網羅している私ならそんなの余裕っすよ!!さぁさぁこちらに!!」
「うむ!苦しゅうないです」
見るからに図に乗っているマリー。しかしその様子をどこか微笑ましく見ているレン。
デートを再開してから、事あるごとにドロシーを呼び出すマリー。
「いやいや。甘いもの苦手って言ったっすよね!?」
「そんなに甘くないです。騙されたと思って食べるです・・・レン~」
「あむっ!・・・あ・・・割といけるっすね!」
「ですよね!なかなかわかるやつです」
「ん~そろそろ短剣を買い換えたいと思ってたんですけど・・・ドロシー?」
「はいっす」
「こっちの短剣とそっちの短剣どっちがいいと思います?」
「んー・・・ちょっと値は張りますが、この短剣がいいと思いますよ?かの名工が打ったものですし」
「そうなのです?でも・・・うぅ・・・高いです・・・」
「プレゼントするっすよマリー様」
「ほんとですか!?」
そして日が暮れ、ニコニコと満足そうな笑顔を浮かべて歩くマリーと、その後ろを歩くドロシーとレン。
まさにお姫様とその従者という立ち位置に見えた。
「ん?レン様この剣が気になるっすか?」
レンはドロシーの腰にある剣を凝視していた。明らかに彼女には使いにくいであろうその武器を、腰に差している意味が分からなかった。
「この剣は私なんっす。レン様が下賜して下さったこの錆びていた剣は、目も曇り、使命だと言い訳して、淡々と人を殺す、そんな馬鹿な私そのものでした」
「だから磨いた。一心に・・・これを機に自分の腐った心を打ち直す様に・・・そして私の人となりを知らずに殺そうとした罪を、一生をかけてでも償おう・・・ですか」
いつの間にかドロシーの方に向き直っっていたマリー。
「マリー様・・・」
「様とかいらねぇんですけどね。私は生きてますし、別に恨んでもねぇです。心が読めるなんて気持ち悪い人に好意なんて持てるもんじゃねぇです。だから・・・そこまで自分を責めることはないです」
ドロシーは俯く。二人の様子をレンは静かに見守っている。
「ただ・・・レンに抱くその気持ちの悪い想いはやめろです」
「っ!?」
「ん?レンも気になるですか?こいつはレンに痛めつけら―――」
「これにてご免!!」
わざわざ煙玉を使いその場から消えるドロシー。
「けほっけほっ・・・もう!!町中でこんなもん使うんじゃねぇです!!」
町中に突如発生した煙に、周りにいた人々が集まる。
「大丈夫ですか!!」
煙幕の外から声がかかる。
「大丈夫です。仲間がちょっとやんちゃしただけなので・・・」
少し経つと煙が消えていき・・・。
「レ・・・ン・・・?」
そこには目を見開く僧侶・・・否、聖女アンジュが立っていた。
「誰です・・・なるほど。彼女がレンの幼馴染の聖女さんですか・・・」
「貴女は・・・そうですか、貴女がマリー」
「ふーん。そっちの賢者に聞いてた話よりマシになってるみたいですね」
レンは少し歩き、マリーの横に立つ。
「レン・・・その・・・」
しどろもどろに喋り出すアンジュ。
「『アンジュ、あの時言えなかった事を・・・俺の命を救ってくれてありがとう。そして・・・おかげで俺も大切な人が出来たよ』だそうです」
「ッ!?ーーーそれは・・・良かったわ」
「『勇者様とお幸せに!』え?もう良いんです?」
コクリっと頷き、踵を返すレン。
「レン!ごめんなさい!あなたの気持ちを蔑ろにして・・・そしてありがとう。ずっと私を守ってくれて・・・」
レンは手を挙げ答える。
アンジュの目には一雫の涙が零れる。
レンとマリーは手を繋いで歩いていく。
(あぁ・・・何を間違えたんだろうな・・・本当ならあそこに居るのは・・・)
アンジュはその光景を見て、幼き日の自分とレンを重ねて見る。
「聖女様?」
「大丈夫です。これで私は・・・」
アンジュも振り返り、行くべき場所に向かおうとした。
その時・・・。
ドサッっとマリーが突然倒れ、それをレンが抱き留める様子を見た。
「え?」
アンジュは即座にマリーとレンに駆け寄る。
何が起きたかわからず、狼狽えているレン。
「落ち着いてレン!サーチ!」
アンジュは即座に病気の有無を確認する魔法をマリーにかける。
「え・・・嘘・・・」
レンはアンジュをじっと見つめ・・・。
「怪我も病気もないのレン・・。これは・・・」
レンは訳が分からず、マリーの手をぎゅっと握りしめる。
「回復魔法とか治療では治らない・・・寿命で命が尽きる前と同じ症状なの・・・」
「お呼びっすか?マリー様」
シュタっとマリーの背後に現れるドロシー。
「うむ!私とレンの普段着を見繕うです。私たちはこういうのは疎いから頼むです」
「いや・・・私もそう言うのは苦手っすけど・・・」
「・・・レンやっぱり私たちに従者なんて必要な――」
「お任せくださいっす!貴族から一般平民まですべての服装を網羅している私ならそんなの余裕っすよ!!さぁさぁこちらに!!」
「うむ!苦しゅうないです」
見るからに図に乗っているマリー。しかしその様子をどこか微笑ましく見ているレン。
デートを再開してから、事あるごとにドロシーを呼び出すマリー。
「いやいや。甘いもの苦手って言ったっすよね!?」
「そんなに甘くないです。騙されたと思って食べるです・・・レン~」
「あむっ!・・・あ・・・割といけるっすね!」
「ですよね!なかなかわかるやつです」
「ん~そろそろ短剣を買い換えたいと思ってたんですけど・・・ドロシー?」
「はいっす」
「こっちの短剣とそっちの短剣どっちがいいと思います?」
「んー・・・ちょっと値は張りますが、この短剣がいいと思いますよ?かの名工が打ったものですし」
「そうなのです?でも・・・うぅ・・・高いです・・・」
「プレゼントするっすよマリー様」
「ほんとですか!?」
そして日が暮れ、ニコニコと満足そうな笑顔を浮かべて歩くマリーと、その後ろを歩くドロシーとレン。
まさにお姫様とその従者という立ち位置に見えた。
「ん?レン様この剣が気になるっすか?」
レンはドロシーの腰にある剣を凝視していた。明らかに彼女には使いにくいであろうその武器を、腰に差している意味が分からなかった。
「この剣は私なんっす。レン様が下賜して下さったこの錆びていた剣は、目も曇り、使命だと言い訳して、淡々と人を殺す、そんな馬鹿な私そのものでした」
「だから磨いた。一心に・・・これを機に自分の腐った心を打ち直す様に・・・そして私の人となりを知らずに殺そうとした罪を、一生をかけてでも償おう・・・ですか」
いつの間にかドロシーの方に向き直っっていたマリー。
「マリー様・・・」
「様とかいらねぇんですけどね。私は生きてますし、別に恨んでもねぇです。心が読めるなんて気持ち悪い人に好意なんて持てるもんじゃねぇです。だから・・・そこまで自分を責めることはないです」
ドロシーは俯く。二人の様子をレンは静かに見守っている。
「ただ・・・レンに抱くその気持ちの悪い想いはやめろです」
「っ!?」
「ん?レンも気になるですか?こいつはレンに痛めつけら―――」
「これにてご免!!」
わざわざ煙玉を使いその場から消えるドロシー。
「けほっけほっ・・・もう!!町中でこんなもん使うんじゃねぇです!!」
町中に突如発生した煙に、周りにいた人々が集まる。
「大丈夫ですか!!」
煙幕の外から声がかかる。
「大丈夫です。仲間がちょっとやんちゃしただけなので・・・」
少し経つと煙が消えていき・・・。
「レ・・・ン・・・?」
そこには目を見開く僧侶・・・否、聖女アンジュが立っていた。
「誰です・・・なるほど。彼女がレンの幼馴染の聖女さんですか・・・」
「貴女は・・・そうですか、貴女がマリー」
「ふーん。そっちの賢者に聞いてた話よりマシになってるみたいですね」
レンは少し歩き、マリーの横に立つ。
「レン・・・その・・・」
しどろもどろに喋り出すアンジュ。
「『アンジュ、あの時言えなかった事を・・・俺の命を救ってくれてありがとう。そして・・・おかげで俺も大切な人が出来たよ』だそうです」
「ッ!?ーーーそれは・・・良かったわ」
「『勇者様とお幸せに!』え?もう良いんです?」
コクリっと頷き、踵を返すレン。
「レン!ごめんなさい!あなたの気持ちを蔑ろにして・・・そしてありがとう。ずっと私を守ってくれて・・・」
レンは手を挙げ答える。
アンジュの目には一雫の涙が零れる。
レンとマリーは手を繋いで歩いていく。
(あぁ・・・何を間違えたんだろうな・・・本当ならあそこに居るのは・・・)
アンジュはその光景を見て、幼き日の自分とレンを重ねて見る。
「聖女様?」
「大丈夫です。これで私は・・・」
アンジュも振り返り、行くべき場所に向かおうとした。
その時・・・。
ドサッっとマリーが突然倒れ、それをレンが抱き留める様子を見た。
「え?」
アンジュは即座にマリーとレンに駆け寄る。
何が起きたかわからず、狼狽えているレン。
「落ち着いてレン!サーチ!」
アンジュは即座に病気の有無を確認する魔法をマリーにかける。
「え・・・嘘・・・」
レンはアンジュをじっと見つめ・・・。
「怪我も病気もないのレン・・。これは・・・」
レンは訳が分からず、マリーの手をぎゅっと握りしめる。
「回復魔法とか治療では治らない・・・寿命で命が尽きる前と同じ症状なの・・・」
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