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知らないうちに最高難易度のダンジョンをクリアしていた
しおりを挟む一方その頃。王国の勇者アルフレッドと聖女のアンジュはと言うと・・・。
「どどど・・・どうするのアル!?」
「撤退だ!!ここの魔物は強すぎる!!」
2階層の入口から颯爽と逃走中。
1階層の敵は、前回カタリーを犠牲に全て討伐していた為敵はいない。
ならばと2階層のまで来たのは良かったのだが、1階層より敵が弱い訳もなく・・・敵対した魔物が咆哮を上げた段階で1階層へと逃げ帰った。
勇者達がこのダンジョンに閉じ込められてから既に10日。
1日1回飯やポーションなどを持ってくる補給係がいるため、餓えなどで死ぬことは無いが・・・。
「ねぇアル・・・私たちいつまでここにいるの・・・」
「知らねぇよ!俺だってこんなとこから早く出てぇよ!でも無理だろ!」
いつもなら上手い飯を食って、ふかふかのベットに入り、アンジュとエリーを抱く。そんな毎日だった。
それなのに今は、魔物の咆哮に脅え、夜もまともに寝れない。そもそもいつが夜なのかも分からない。
「おつかれっす~進捗はどうっすか?ここ何階層です?」
定期的にくる補給係。どんどん言葉が雑になり、彼女が現れた途端勇者の顔がしかめっ面になる。
勇者にこんな態度は失礼で、今すぐ聖剣の錆にしたいところだが、彼女を殺すのは自分たちを殺すのと同じ。
だから勇者は耐えていたのだが・・・。
「おい。食糧はどうした?忘れたのか?」
彼女はいつものカバンを持っていないどころか手ぶらだった。
「私が質問してるんっすけど・・・まぁ聞かなくても分かりますけどね~ここまだ1階層っすよね?何サボってるんっすか?」
「うるせぇ!俺の質問に答えやがれ!飯はどうした?勇者の俺にこんな事しやがって・・・ここからでたら覚えとけよ!!」
「はぁ・・・まぁお前たちにもう用事はなくなったんで、どうでもいいっす。ダンジョンの入口はもう開いてるのでお好きにどうぞ」
「はぁ?」
補給係の少女は目にも止まらぬ早さで勇者を蹴っ飛ばし・・・。
「ぐあッ!?てめぇ何しやが・・・」
「ふーん。これが聖剣っすか」
いつの間にか彼女の手に聖剣がある。マジマジと剣の刃を見つめ手考えるような仕草をする。
「それは俺の剣だ!!返せ!」
「宝の持ち腐れっすよ。これは没収しま~す・・・あっ!そう言えばそろそろ1階層の魔物が湧き始める頃ですよ?逃げなくていいんですかね?」
「「は?」」
「当たり前っすよね?普通のダンジョンに比べると遅いですけど・・・確かこのクラスのダンジョンはそろそろ・・・」
「グルルルル・・・」
「あっ!湧き始めたみたいっすね~それじゃあ私はこれで」
「ちょっと待てよ!!」
勇者の声は虚しく洞窟内に響き、補給係の少女は転移して消えていった。
「アル・・・逃げるしか・・・」
「分かってる!!いちいち言うな!!行くぞ!!」
魔物に見つからないように細心の注意を図り、ダンジョンの出口に向かう二人。
出口手前で狼に見つかるが、一目散に走り抜け・・・。
「アル!出口!!」
「やっと外に出られ・・・なんだこれ?」
ダンジョンを出るとそこには・・・王国騎士たちの死体があった。
1人や2人ではなく、10数名の死体が・・・。
「一体何が起こって・・・」
呆然とする2人の前に、慌ただしく馬車が止まり・・・。
1人の騎士がその馬車から降りてくる。
「ご無事でしたか、勇者様、聖女様」
「あ・・・あぁ」
「王がお呼びです。すぐ馬車に乗ってください」
「え?ちょっと・・・」
わけも分からぬまま馬車に詰め込まれる2人。
そしてその馬車は、真っ直ぐに王都に向かって走って行くのだった。
「せせせ・・・聖剣を奪われただとおぉぉぉぉ!?!?」
謁見の間にて国王の声が響き渡る。
「お・・・俺は悪くねぇからな!そもそもお前のところの騎士に取られたんだし」
「そんなわけないじゃろ!?共にダンジョンに入り勇者を助けろと指示を出したんじゃ!」
「知らねぇよ!」
「聖鎧を手に入れるどころか、聖剣を失うとは・・・」
怒りで身体中が震え出す国王。
「そもそも聖剣のあるダンジョンはこの国で一番踏破が難しいダンジョンじゃ!聖鎧のあるダンジョンは聖剣のあるダンジョンに比べて数段劣る!それなのに・・・何故踏破出来ん!?」
「嘘つくな!あんな強い魔物がいるダンジョンが、数段劣る訳ねぇだろ!」
「劣るんじゃよ!何せ聖鎧を取ってきた勇者はいくらでもいるが、聖剣を手にした勇者なんぞ歴史上片手で数える程しかおらん!」
「嘘だ・・・」
「嘘でないわ!!この無礼者め!!どうやって聖剣をダンジョンから掠めとってきたかは知らんが・・・お前たちには役職にふさわしい実力をつけてもらう!!」
「何言ってんだ!?俺は既に最強だし、アンジュも回復魔法で右に出るものはいねぇ!」
「問答無用!既に最強ならすぐに終わるだろう」
国王がスっと片手をあげる。すると後ろに控えていた筋骨隆々の男が歩みでる。
「こやつこそ王国最強と名高い、儂の側近の騎士団長である。あの勇者を鍛えてやれ」
「はっ!100日以内には物にしてみましょう」
騎士たちに囲まれ、ガシッと両腕を捕まれ引き摺られていく勇者。
「ふざけんな!?俺は勇者だぞ!こんな扱いしてまいいと・・・」
「黙らせろ」
ガツンッ!と剣の柄で勇者の頭を殴る騎士。
殴られた勇者は気を失ってぐったりとしたまま連れ去られて行った。
「して聖女よ」
「は・・・はい・・・」
「お主には教会に戻ってもらう」
「は?」
「おい!教会まで連れていけ」
「嫌っ!ヤダヤダヤダヤダヤダ!あんなところに戻りたくないッ!何でもするからそれだけは・・・」
「やかましいやつだ、口に布でも噛ませろ」
「はっ!」
アンジュは口を塞がれ、それでも叫ぶ。
「ひやあぁぁぁぁ!!」
謁見の間に叫び声がひびき、アンジュは2人の騎士に引き摺られながら王城を後にした。
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