18 / 35
椿芽エーデルワイス
18話 放課後の約束
しおりを挟むぼんやりと先生の話を聞いていると、ふとスマホが震えた。画面をちらっと見ると、神野響からのメッセージだった。
(響からか……)
誰かに見られないように、こっそりと内容を確認する。どうやら放課後に遊びに行く話のようだ。
俺はすぐに二つ返事で了承し、どこで遊ぶかの返信を打つ。「この前のゲームセンター!」と返信が来る。
「おい、佐藤、スマホ閉まえ」
先生の声が響く。
「さーせん」
俺は軽く謝りながらスマホをしまった。
残す授業はロングホームルームとなると、担任の先生が黒板に「校外学習」と書きつけた。
「んじゃ、お前らー、今回は1年最初のイベント、校外学習の班決めなどするぞー」
先生が言うと教室内がざわつき始め、期待と不安が交錯する雰囲気が漂う。
「よし、じゃちゃちゃっとくじ行くか」
先生が言いかけたその瞬間、クラスメイトの男子が立ち上がる。
「いや、今回は自由に決めさせてくれー」
するとそれに影響されるように周りのクラスメイトたちも賛同の声を上げ始めた。
「仕方ないなー、んじゃ自分達で決めろー。1班5人だからなー、溢れたやつは容赦なくくじだからな」
担任は仕方なく了承しクラスの中に緊張感と興奮が広がり、班をどう決めるか話し合いが始まる。
周りを見渡すと、友達同士が集まって話し込んでいる姿が見える。
「悟、班組もうぜー」
響が笑顔でやってくる。
「いいぞ、あと3人どうする?」
「椿芽が若狭誘うみたい」
響は少し嫌そうな顔をしながら教えてくれた。
「そうか……ならあと1人、心当たりがある」
「いるのか?」
俺は少し後ろの席にいた鈴木に声をかけた。
「鈴木、もし良かったら班組まない?」
「お、いいのかい?佐藤くん」
鈴木は嬉しそうに答える。
「むしろこのクラスで数少ない親しい人はお前しかいない」
「そうか、それなら」
「なんだ、鈴木か。鈴木なら安心だ」
響がやってくる。
「ふっ……神野くんか」
2人はグータッチして、なんだか楽しそうだ。
「お前ら、なんか仲良いな……」
「「同じ性癖の同士さ」」
2人は口を揃えて返す。
「お、おう……」
なんかちょっとだけ関わりたくない気持ちになった。
その時、椿芽がやってきて、
「ひーくん、連れてきたよ―」
若狭さんを連れてくる。
「佐藤はギリマシとして、神野に鈴木か……」
「朱音ちゃん、何か問題ありげ?」
椿芽はちょっと困惑したように聞く。
「変態三人衆じゃないか」
「俺を巻き込まないでくれ……」
俺は思わず呟いてしまった。
教室がざわめき、先生の一声でようやく落ち着く。
「お前らーちゃんと班組めたか?」先生が声を張り上げて確認する。すぐに教室のあちこちから「出来たー!」と元気な返事が返ってきた。
「よしよし、全員組めたみたいだね。それじゃ、班のままで集まって席座れー。校外学習の説明すっぞー」
それぞれの班が少しずつ移動しながら、まとまって席に座る。班が決まってほっとした空気が漂い、俺たちの班も自然と輪になった。響と椿芽が隣に座り、若狭さんは少しだけ距離を置くように隣に座る。鈴木も座る。
先生は黒板に大まかなスケジュールを書きながら、校外学習で訪れる場所や班ごとの役割分担について説明していく。次々と決まる行程に、みんな小さく「おお」とか「まじか」とか反応しながら、少しずつ気分が盛り上がってきているのがわかる。
「よし、それじゃ校外学習は来週だから、楽しみにしとけ!」
先生は話を終え、黒板に最後の大きな丸印をつけた。
「そんじゃ、今日のロングホームルーム終わりー」
その言葉とともに、教室はまたざわつき始める。みんなの顔には次週の校外学習への期待が表れている。
授業が終わり、帰り支度をしていると、響が声をかけてきた。
「悟、ゲーセン行こうぜ」
「おっけ行きますか」
気軽に返事をすると、近くで聞いていた椿芽が少し恨めしそうな顔をする。
「えー、2人でまた遊びに行くの?」
その顔に少し笑ってしまいそうになっていると、椿芽が急に元気よく言った。
「私も行く!朱音ちゃんも鈴木くんもどう?」
「すまない、僕は部活があるから」
鈴木は少し申し訳なさそうに謝った。
「わ、私はいい……」
朱音はためらいがちに断るけれど、椿芽は食い下がる。
「む、朱音ちゃん予定はあるのかい?」
「い、いや、そういう訳では……」
「よし、行こう!親睦を深めるのも大事だぜ」
「……あ、あう……」
俺がそれを見て響に小声で話しかける。
「勝手に話進めてんなー」
「そうだな……」
響は少し諦めたように肩をすくめる。
「よーし!では4人で行きますぞ!」
椿芽は元気いっぱいに手を上げる。
「鈴木くん、またねー!」
俺たちは4人で教室を出た。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
まずはお嫁さんからお願いします。
桜庭かなめ
恋愛
高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。
4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。
総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。
いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。
デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!
※特別編3が完結しました!(2024.8.29)
※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録、感想をお待ちしております。
冴えない俺と美少女な彼女たちとの関係、複雑につき――― ~助けた小学生の姉たちはどうやらシスコンで、いつの間にかハーレム形成してました~
メディカルト
恋愛
「え……あの小学生のお姉さん……たち?」
俺、九十九恋は特筆して何か言えることもない普通の男子高校生だ。
学校からの帰り道、俺はスーパーの近くで泣く小学生の女の子を見つける。
その女の子は転んでしまったのか、怪我していた様子だったのですぐに応急処置を施したが、実は学校で有名な初風姉妹の末っ子とは知らずに―――。
少女への親切心がきっかけで始まる、コメディ系ハーレムストーリー。
……どうやら彼は鈍感なようです。
――――――――――――――――――――――――――――――
【作者より】
九十九恋の『恋』が、恋愛の『恋』と間違える可能性があるので、彼のことを指すときは『レン』と表記しています。
また、R15は保険です。
毎朝20時投稿!
【3月14日 更新再開 詳細は近況ボードで】
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
覚えたての催眠術で幼馴染(悔しいが美少女)の弱味を握ろうとしたら俺のことを好きだとカミングアウトされたのだが、この後どうしたらいい?
みずがめ
恋愛
覚えたての催眠術を幼馴染で試してみた。結果は大成功。催眠術にかかった幼馴染は俺の言うことをなんでも聞くようになった。
普段からわがままな幼馴染の従順な姿に、ある考えが思いつく。
「そうだ、弱味を聞き出そう」
弱点を知れば俺の前で好き勝手なことをされずに済む。催眠術の力で口を割らせようとしたのだが。
「あたしの好きな人は、マーくん……」
幼馴染がカミングアウトしたのは俺の名前だった。
よく見れば美少女となっていた幼馴染からの告白。俺は一体どうすればいいんだ?
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる