上 下
1 / 30

1話 キモイ神様からのお願い!

しおりを挟む

高校受験も終え、すべてから解放された俺は、人生で一番の時を過ごしていた。新しいラノベを手に入れたワクワク感が心を満たし、何よりも自由な時間が待っているのだ。

(今日買ったラノベ、早く家に帰って読みてえ……)

俺はママチャリのカゴに入ったラノベたちを見て、ニヤつきながら青信号になった歩道を走り抜けようとした。その瞬間、視界の端に大型トラックが迫っていることに気づいた。

(え……?)

よそ見でもしてたのか、居眠りでもしてたのか、俺はトラックに吹き飛ばされた。大きな衝撃が体を貫き、意識が徐々に薄れていく。最後に思ったのは、まだ新刊を読んでいないということだった。

(まだ……新刊読んでないのに……)

意識が朦朧とする中、俺は読めていない買ったばかりのラノベたちを悔いながら、意識を手放した。

――――――――――――――――――――――――

なんだろう……心地いい……何かに包まれてるような暖かさ。ここがいわゆる死後の世界なのかな?まるでふわふわとした雲の上にいるみたいだ。

「――――――」

誰かから声を掛けられてる気がする……随分前に亡くなったおばあちゃんかな?それとも、綺麗な天使さんかな?俺は優しく語りかけられる声に反応するかのように、閉じた瞼をゆっくりと開いた。

「グッドモーニング!!!ボーイ!!!!」

「うわああああああああ」

目の前に、古代ギリシャの神みたいな服を着たゴリゴリのマッチョメンが、キラッと歯を見せながら俺の視界にドアップで現れた。夢か幻かと思ったが、どうやら現実のようだ。

「なんだいボーイ!僕と添い寝していてその反応はナッシングだよ!」

(添い寝!!?)

俺はすぐに状況を確認しようと、横に寝転んでいる男を見た。

「うぉりゃ!!!」

「グフゥ」

思い切りその男の腹に向けて蹴りを入れ、距離を取った。さすがにこの状況を受け入れられない。

「oh……oh……このGODである私に向かって蹴りを入れるとは、なんてボーイだ……」

GOD……?神様ってやつか?

「そうさ!私は神だ!!!」

(心読むなよ)

「読めるさ!神だから!」

(ウザいし、なんだコイツ)

「sorry……sorry……ボーイ、そんな顔しなくてもいいじゃないか!」

俺は自称神から距離を置くと、彼はニコッと輝く歯を見せつけるように俺に話しかけてきた。

「君は佐藤悟さとうさとる、死んだのさ……交通事故で」

やっぱり死んでしまったのか。俺は自分の最期のあっけなさ、読めなかったラノベたち、そして親に何もしてやれなかった申し訳なさに顔をやるせなさに駆られた。

「ボーイ……そんな顔をしないでおくれ……君にお願いがあって私はここに呼んだんだ。」

(神が?俺に?なんの用で……)

「ボーイにはとあるお願いがあるんだ……そのお願いを聞いてくれるなら、現世に甦らせてやろう……」

死者蘇生!?そんなこと許されるの!?

「ああ……私はGODだからね。許されるさ!」

なんと寛大な!

「それで、どんなお願いなんですか?」

俺は神のお願いがなんなのか質問した。すぐにでも戻ってラノベを読みたいし。

「お願いは単純さ!このボーイ神野響かみのひびきの恋愛を成就させるお手伝いをして欲しいのデース!」

神はパチンと指を鳴らすと、何もないところにスクリーンが現れ、1人の少年が映し出された。

「こいつの恋愛をサポートするため?」

俺は問い返すと、

「この子の周りにいっぱいのガールズが集まりマース!その中から一番相応しい子とゴールインできるように、響くんの友人となってサポートして欲しいのデース!」

ハーレム形成するやつの友達になって、しかも恋愛を成就?なんと罰ゲームか?妬みで響ってやつを殺したくなるぞ……

「oh……ボーイ、そう殺意を出さないで……気持ちはわかるデース。でもサポートして欲しいのデース!」

「なんでさ?」

俺は嫌そうに返すと、

「このボーイが正しくないガールとゴールインしちゃうと、人類滅亡しちゃいマース……」

「何でさ!!」

意味わからん。他の奴とくっついたら人類滅亡って、どんな過酷な恋愛だよ。どうなったらそうなるんだよ……

「この響ボーイは聖力というとってもとってもスピリチュアルなパワーを秘めていて、そのパワーを狙った悪魔と天使が彼の周りに集まってしまいマース。」

つまり響ってやつの周りに天使と悪魔の女の子のハーレムが形成されると……羨ましい……

「羨ましいとか考えないでボーイ、人類の存亡かかってマース!」

「悪魔はともかく、天使はあんたらの部下みたいなもんだろ?せめて天使は止めろよ。」

神は少し申し訳なさそうな顔をし、俺に向かって問い返す。

「sorryボーイ……天使たちの中の大天使であるミカエラと夫婦なのですが、むかし私が人間と浮気して以降、天使からの反感が凄まじく、何言っても聞くどころか私を神から堕とそうとしてくるので……」

そりゃそうでしょ……

「天使は偉大なるミカエラを悲しませた哀れな人間共を滅ぼすために……悪魔は人間と天使、神である私を殺して魔族の世界を作るため、世界を滅ぼそうとしてマース……」

「でも私は人間を愛してマース……だからボーイ、君を殺し、この事を伝え、響ボーイのことらヒロインの中にいるただ1人の人間の女の子こと、そしてゴールインできるようにフォローし、ハッピーエンドになるようにして欲しいのデース!」

ちょっと待て……今、俺を殺したって言った?

「oh……」

神はしまったという顔をする。俺はゆらゆらと神に近づき、

「貴様が諸悪の根源かあああああ!」

「NOOOOOOOO!!」

そのまま神を持ち上げて、スクリュードライバーを決めた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

大好きな彼女を学校一のイケメンに寝取られた。そしたら陰キャの僕が突然モテ始めた件について

ねんごろ
恋愛
僕の大好きな彼女が寝取られた。学校一のイケメンに…… しかし、それはまだ始まりに過ぎなかったのだ。 NTRは始まりでしか、なかったのだ……

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

クラスで一人だけ男子な僕のズボンが盗まれたので仕方無くチ○ポ丸出しで居たら何故か女子がたくさん集まって来た

pelonsan
恋愛
 ここは私立嵐爛学校(しりつらんらんがっこう)、略して乱交、もとい嵐校(らんこう) ━━。  僕の名前は 竿乃 玉之介(さおの たまのすけ)。  昨日この嵐校に転校してきた至極普通の二年生。  去年まで女子校だったらしくクラスメイトが女子ばかりで不安だったんだけど、皆優しく迎えてくれて ほっとしていた矢先の翌日…… ※表紙画像は自由使用可能なAI画像生成サイトで制作したものを加工しました。

貞操観念が逆転した世界に転生した俺が全部活の共有マネージャーになるようです

卯ノ花
恋愛
少子化により男女比が変わって貞操概念が逆転した世界で俺「佐川幸太郎」は通っている高校、東昴女子高等学校で部活共有のマネージャーをする話

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

貴重な男の中で一番優しいのは俺らしい

クローバー
恋愛
男女比率の違っているお話。 だが、その要素は多すぎず、普通の恋愛話が多目である。 主人公、心優しい25歳、松本修史は訳あって流れ星にお願い事をする。 願いは叶ったが、自分の想像とは斜め上を行った願いの叶い方だった。 かっこよくなって高校生に戻ったかと思いきや、妹がいたり世界の男女比がおかしくなっていた。 修史は時にあざとく、時に鈍感に楽しく学園生活を生きる。 時々下ネタぶっこみますが、許してください。 性的描写がいつしか出てきたとしても許してください。 少しシリアスからのハッピーエンドがあります。 一夫多妻の世界なので、恋人は7人ほど出来る予定です。 もしかしたら14人になるかもしれません。 作者の我慢の限界が来たら…R18的な行為もしてしまうかもしれません。←冗談です。 作者の休日は月曜日なので、月曜日更新が多くなります。 作者は貧乳とロリが好物なため、多少キャラに偏りがありますがご了承ください。 ひんぬー教、万歳! Twitterで更新するとき言うので、フォローお願いいたします。 @clober0412 クローバー うたっこ 恋する乙女と守護の楯という神ゲーの穂村有里がトプ画です。

処理中です...