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第49話●チン皇帝
しおりを挟む「皇帝がネーヴェサム魔獣国に人質になりに行った?」
皇帝は魔獣国の者たちが帰る時について行ってしまったらしい。
「自分で後始末せい。朕は知らぬ。」
猫の絵が書いてある。
へたっぴだ。うさぎみたいでもある。
間違いない皇帝直筆の書き置きだ。
皇国軍大将イェンゼン公爵は言う。
「国が大変な時に勝手な事を。いい気なもんだ。」
「それは違う、皇帝はずっと私が幽閉して来た。国がどうなっているかなど知らない。そして今回の戦いも私が一存で始めたのだ。」
摂政ユスティアノス親王は言う。
「幸い魔獣国は補償を放棄して去った。勇者の介入もない。皇帝を迎えに行けるように皇国を再建しよう。」
コスタドガル帝国の例もある。
我々にも何か国を豊かにして行く方法はあるだろう。
ユスティアノスは私欲の為にあの様な行動をしたわけではない。
停滞し腐敗する国を刺激し、さらに気前が良いと評判の魔獣国を属国化して、あわよくば国庫の足しにしたかった。
だが、相手が悪かった。
それと上官の命令は絶対と言う組織が部下の思考停止を招いた。
悪い情報は何も届かず都合の良い献策ばっかりになった。
無理な命令にも無理と言えない為に部下は形だけ仕事をしたふりをする。
結果、役に立たないキメラもどきの様な切り札を作ったフリをした。
残念だがユスティアノスは無欲ではあったが無能な指揮官だった。
今回の件で気付きがあれば皇国も変わっていくだろう。
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カルナガリア王国 フエツの街。
カール伯爵邸のダイニング。
何故かはわからないけど大聖女エリミリアが朝食の目玉焼きをフォークでつつきながらレティシアの膝の上にいるユウトをじーっと見る。
「あんたなんで介入しなかったのよ。勇者の働きどころだったんじゃないの?」
「それよりもなんで大聖女がそこにいてわしの目玉焼きを食べているんじゃ。」
「あんたと違って私は忙しいのよ。」
「暇すぎて、退屈だから芸人や芸術家の発掘をして遊んでいるんじゃなかったのか?」
エリミリアはふふんと鼻を鳴らして
「暇なのはあんたも同じでしょ。」
と言う。
「あいにくわしは暇が大好物なんじゃ。」
「わしはおまえ達の知っているいけいけのエロエロの勇者とは違うんじゃ。今は子供じゃしの。」
「魔獣国にはアレインがいるし、マヨネを連れたコージも出入りしているんじゃからわしが手出しする事もなかろ。」
なんでもかんでも手出しをしたら、みんな自分で考えることをやめてしまうじゃろう。
停滞して、少しずつ腐ってしまう。
自分で出来る事は自分でしてもらわんとのう。
エリミリアはレティシアの膝からわしを抱き上げる。
「ちっちゃいのにじじぃくさいのね。興味があるんなら首突っ込んでかき混ぜてあげれば面白いのに。」
エリミリアの言う通りじゃ。
わしに遠慮する理由はない。
ネーヴェサム魔獣国なんて「ロストヒストリーワールド」にはなかったしのう。
今日はこれと言って何も用事がないのでヒナとリビングでゴロゴロする。
ペレペルキナがチンの頭にリボンをつけている。
「王様ー。王様ー。なんか来た。」
アイゼイヤが城の前の広場からバルコニーに向かって叫んでいる。
子供が家の外から母親に呼びかけるのと同じだ。
やって来たのは露店商集団「大祭組」いわゆるテキ屋さんだ。
豊穣の神に仕えて神事や芸事、裏では諜報活動をしていると言われている。
「この国で祭りなんてあったっけ?」
「無ければ作ればいいやんか。」
事も無さげに組合長は言う。
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