魔獣っ娘と王様

yahimoti

文字の大きさ
上 下
39 / 50

第39話●地底湖

しおりを挟む


バッシャーン、バッシャーンとセイレーンがイルカの曲芸みたいに温泉の中を飛び回っている。

すごいので拍手すると調子に乗ってもっとすごい技を見せてくれる。

感心しているとまた猫みたいに頭を擦り付けてくる。

なんか良い感じ。

ニヤニヤしているとヒナが俺を見上げて「ヘンタイ?」って言う。

確かに。 

側から見ると裸の女の子に頭擦り付けられて喜んでるオッサンだからな。

ところでなんで温泉にクラーケンがいるんだ?

イカの耳みたいなのがぴょこぴょこと5つ程水面に並んでいる。

すっごいでかいからぴょこぴょこと言う表現はおかしいかもしれないが雰囲気がぴょこぴょこなんだ。

インベントリからエリミリア金貨をだしてクラーケン達に掲げる。

ひかりながらみるみる小さくなって人化する。

相変わらず質量保存の法則は無視なんだね。

クラーケンっ娘もセイレーン達とあんまり変わらない。

クラーケンっ娘が水面を滑空して集まってくる。

セイレーン達にとっては温泉が浅すぎたようだ。

みんなで温泉の底を掘り返していたら地底湖につながったそうで、その地底湖が海にもつながっているらしい。

ふーん。

いろいろと遊びを考えるんだね。

湖や海だといろんな魔獣がいっぱいいるんだろうな。

この温泉は洞窟の奥にあるのだけれどとても広い。
野球場が4つ分ぐらいかな?

例によって何にでも興味を持つアイゼイヤがバシャバシャと水を掻き分けて走ってくる。

「王様ー。王様ー。ちていこって何?見に行こうよー。」

「水の中だよ。溺れちゃうよ。」

セイレーンが集まってくる。

「大丈夫だよー。一緒に行こうよ。」

と言って口を尖らせてぷーっと泡を膨らませる。

泡はアイゼイヤやヒナ達の頭を包み込む。

これで水の中でも息が出来るらしい。

セイレーン達に手を引かれて水の中を進む温泉の真ん中あたりの底に穴が空いている。
水温が下がったのがわかるが冷たさに耐えられない程ではない。

真っ暗という訳でも無くて穴から光がさし込んでいるのと、遠くで水面が光っている。

セイレーン達は光っている水面の方に俺達を引っ張っていく。

急にガクンと水中に引き込まれて流される。

アレインはセイレーンから離れてぐるぐると回転しながら流される。

セイレーンやクラーケンは突然のハプニングに大喜びしている。

ジェットコースターにでも乗っている気分なんだろう。

水中で「きゃーははは。」はないだろうが。

ヒナが半分人化を解いて翼で泳いでくる。

ペンギンが泳いでいるみたいだ。

ヒナはアレインやアイゼイヤ達を掴んで水面を目指す。

沢山の魚が泳いでいる。

ぽっかりと水面に出る。

地底湖に散在する島に上陸した。

巨大な洞窟の天井に穴が開いている。
大きな穴を取り囲む様に無数の小さな穴が開いていてそこから星の光の様に陽が差し込んでいる。

もっと先に行くと海に繋がる川があるらしい。

魔獣っ娘達は洞窟の天井を見上げている。

「王様ー。きれいだね。不思議だね。」

俺にはお前たちも不思議な存在だけどな。

ヒナが大きな天井の穴を指さして言う。

「あれは火口だった所、ここには昔溶岩が流れていたんだよ。今は地面が冷たくなって水が溜まっているけど。」

「遠い遠い昔、ヒナは熱い溶岩から生まれた。」

ロック鳥ってそんな鳥だったっけ?フェニックスとごちゃ混ぜになってないか?

セイレーン達がわんこの様にはしゃいでばっちゃんばっちゃん水面を跳ね回っている。

クラーケン達はジェット機の様に水面を滑空して遊んでいる。

イカが飛ぶって本当だった。

今は女の子が両手を広げて飛んでいるからいいけど人化を解いたリアルクラーケンサイズで飛んでいるところに遭遇したら大変だ。
商船や軍船でもひとたまりもないだろう。

魔獣達はどこでも、いつでも無邪気に遊ぶ。

人間はその姿を見て怖がっているが魔獣っ娘にして見るととても可愛い。

集めた魚介類でバーベキューをする。

どこでもバーベキューだね。


しおりを挟む

処理中です...